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第一章 2人の約束
34、記憶と過去
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*ナオクル・チロメドゥル総帥目線
俺は拐われたカズミを探していた。
カズミ、アカイケ…カズミ、ニホン。
ホイクシ、センセイ……。
どこにいる?カズミ。
意識、精神体というものを飛ばして
カズミを探そうとした。
カズミが居ない事で、安定したと思っていた
私の心と魔力の制御を間違えてしまった。
パァ~ンと何かがはじけるような
音がしたと思ったら、私は記憶にない所にいた。
…ここは、なんだ?
ピンク色の花びらがヒラヒラと散っていた。
幾重にも重なる様で重ならない花びらたちは、
風と遊びながらどこかに飛んでいった。
微かに見上げるとそこには花の木がそびえたっていた。
儚げな花なのに、その木には
たくさんのピンク色の花が咲き乱れている。
思わず掴みかけたが、ここは
違う世界だと思いなおした。
触れてはいけない。だがこの香りは
カズミの香りに似ていた。
周りを見渡すと前方に不思議な乗り物があった。
2つの車輪の乗り物に、人が乗り
足を動かすたび前を進んでいた。
その不思議な乗り物が通り過ぎた。
しかも、あれは女性なのか?
遥か昔に滅んだと思われる女性?
明らかに男性とは違う体格。
小さい、しかも、双黒ばかり。
黒髪に黒い瞳。これがニホン?
……カズミがいた場所なのか?
カズミはどこだ?
カチャ
『おかーさん、あさごはんたべたら、ねむい~。』
『ごめんね。カズミ、おかーさんお仕事
行かなきゃ、だから保育園で、
カズミも頑張ってね。』
『うん、ねむいけど、ボクがんばる。』
『かしこいわね。』
『えへへ。あたまなでなでして。』
『カズミ、いい子いい子。ごめんね。』
「……。」
カ、カズミなのか?
家と表札らしきものをみた。
カズミが書いていた文字の羅列に似ている。
カズミと女性の母親だろうか?
顔が似ている。2人は先ほどの2つの
車輪の乗り物に乗り、カズミは後ろに
乗っていて小さな持ち手を、可愛いが
儚げな小さな手で持っていた。
……愛くるしい。抱きしめたい。
振り落とされないか心配で走り出した
不思議な乗り物の後について行った。
建物に入り、母親に手を振るカズミ。
…んっ?視線を感じたが気のせいか?
小さなカズミは、センセイと呼ばれる者たちと
楽しげに何かを書いたり、歌を歌い、
おもちゃで遊んでいた。
夢中になり見ていたら、母親が迎えに来ていた。
息苦しさに気づけば、流し見したつもりが
ずいぶん長い間見ていた。
触るつもりはなかったが、
『おはようございます。あたらしー、
せんせーおなまえは?ボクのなまえは
アカイケ カズミです。』
「……み、見えてるのか?」
なぜだ?
『うぅ?おとこのせんせー、はじめてだぁ。
おなまえおしえてください。』
「…ナ、ナオ、いや、ハルトだ。」
あっ、つい神子の名前を言ってしまった。
自分の名前をためらってしまった。
なぜだ?
『はるとせんせー?だっこして。』
「……あぁ。」
なぜカズミが私を見れたのかは、
わからない。
今の私は精神体のはずなのに、思いが…
魔力を強くしすぎたのか?
ダメだと思いながらも、小さなカズミを
抱っこし、遊んだのだった。
可愛い。可愛すぎる
こんな事してはダメだ。
これは、カズミの過去。
関わったらダメだ。
また、息苦しくなった。
意識は、現在に飛びそうだ。
可愛い、小さなカズミと別れなければ……。
小さなカズミ、さよならだ。
私が見えるようになっていたカズミに
自分の姿が特定出来ないように
認識阻害を施した。
また、逢おう。
私は小さなカズミに別れを告げた。
『ぼくもハルトせんせーみたいな、
やさしくて、ちからがつよくて、
あとねー、すごいせんせーになるぅー。』
『ありがとう、カズミくん。せんせい
…うれしいよ。』
カズミは泣きながら私に笑顔を向けた。
意識を戻したら、数時間経っていた。
カズミの居所を探すつもりが、
力加減を間違えた為、過去視してしまった。
ため息をし、再度、この世界での
カズミの居所を掴もうとした。
その時、ほとんど訪ねて来るものはいない
静かな執務室にノックの音が鳴り響いた。
「総帥、南の騎士団から急ぎの報告書を
持って参りました。」
「入れ。」
「はっ!!」
丁寧に書かれた文字。
日付を見た。数十分前の時刻。
内容は、ソリトル伯爵領で不審な馬車が
ぬかるみにハマっていたとの事だ。
一瞬、よくある事だと思ったが、
なぜか胸騒ぎがした。
身分がありそうな、ふくよかな2人、
痩せ細った御者に罵声を浴びせていたらしい。
湖に向かうらしい、との報告が、騎士団から
私の元に届いた。
報告者の名前は、現国王の元近衛騎士
プーエル・ベアラ・リストン。
プーエルからの報告には、事細かく
箇条書きに書かれており、見やすかった。
馬車に乗っていた人物の特徴、
御者や馬車、馬の特徴まで書かれていた。
さすがだな。
今の国王の元を離れ、好きな相手を
追いかけたらしいが、恋は実らなかったらしい。
そこまで、熱中になれるプーエルはすごい。
相手は違う者と婚姻してるのに
すごい執着心だ。
だが、今ならわかる気もする。
私のカズミが、万が一…ありえない。
そんな事ありえないが、他の者と
一緒になるという未来はない。
もしもの時は…相手をただでは……。
楽には殺してやらない。
手間隙かけてじっくりと痛ぶってやる。
カズミがいるだけで心は落ち着くのに。
そばにいないなんて、なんと虚しくもあり、
心が寒いんだ?
今では何かが煮えたぎるようにざわついてる。
俺は拐われたカズミを探していた。
カズミ、アカイケ…カズミ、ニホン。
ホイクシ、センセイ……。
どこにいる?カズミ。
意識、精神体というものを飛ばして
カズミを探そうとした。
カズミが居ない事で、安定したと思っていた
私の心と魔力の制御を間違えてしまった。
パァ~ンと何かがはじけるような
音がしたと思ったら、私は記憶にない所にいた。
…ここは、なんだ?
ピンク色の花びらがヒラヒラと散っていた。
幾重にも重なる様で重ならない花びらたちは、
風と遊びながらどこかに飛んでいった。
微かに見上げるとそこには花の木がそびえたっていた。
儚げな花なのに、その木には
たくさんのピンク色の花が咲き乱れている。
思わず掴みかけたが、ここは
違う世界だと思いなおした。
触れてはいけない。だがこの香りは
カズミの香りに似ていた。
周りを見渡すと前方に不思議な乗り物があった。
2つの車輪の乗り物に、人が乗り
足を動かすたび前を進んでいた。
その不思議な乗り物が通り過ぎた。
しかも、あれは女性なのか?
遥か昔に滅んだと思われる女性?
明らかに男性とは違う体格。
小さい、しかも、双黒ばかり。
黒髪に黒い瞳。これがニホン?
……カズミがいた場所なのか?
カズミはどこだ?
カチャ
『おかーさん、あさごはんたべたら、ねむい~。』
『ごめんね。カズミ、おかーさんお仕事
行かなきゃ、だから保育園で、
カズミも頑張ってね。』
『うん、ねむいけど、ボクがんばる。』
『かしこいわね。』
『えへへ。あたまなでなでして。』
『カズミ、いい子いい子。ごめんね。』
「……。」
カ、カズミなのか?
家と表札らしきものをみた。
カズミが書いていた文字の羅列に似ている。
カズミと女性の母親だろうか?
顔が似ている。2人は先ほどの2つの
車輪の乗り物に乗り、カズミは後ろに
乗っていて小さな持ち手を、可愛いが
儚げな小さな手で持っていた。
……愛くるしい。抱きしめたい。
振り落とされないか心配で走り出した
不思議な乗り物の後について行った。
建物に入り、母親に手を振るカズミ。
…んっ?視線を感じたが気のせいか?
小さなカズミは、センセイと呼ばれる者たちと
楽しげに何かを書いたり、歌を歌い、
おもちゃで遊んでいた。
夢中になり見ていたら、母親が迎えに来ていた。
息苦しさに気づけば、流し見したつもりが
ずいぶん長い間見ていた。
触るつもりはなかったが、
『おはようございます。あたらしー、
せんせーおなまえは?ボクのなまえは
アカイケ カズミです。』
「……み、見えてるのか?」
なぜだ?
『うぅ?おとこのせんせー、はじめてだぁ。
おなまえおしえてください。』
「…ナ、ナオ、いや、ハルトだ。」
あっ、つい神子の名前を言ってしまった。
自分の名前をためらってしまった。
なぜだ?
『はるとせんせー?だっこして。』
「……あぁ。」
なぜカズミが私を見れたのかは、
わからない。
今の私は精神体のはずなのに、思いが…
魔力を強くしすぎたのか?
ダメだと思いながらも、小さなカズミを
抱っこし、遊んだのだった。
可愛い。可愛すぎる
こんな事してはダメだ。
これは、カズミの過去。
関わったらダメだ。
また、息苦しくなった。
意識は、現在に飛びそうだ。
可愛い、小さなカズミと別れなければ……。
小さなカズミ、さよならだ。
私が見えるようになっていたカズミに
自分の姿が特定出来ないように
認識阻害を施した。
また、逢おう。
私は小さなカズミに別れを告げた。
『ぼくもハルトせんせーみたいな、
やさしくて、ちからがつよくて、
あとねー、すごいせんせーになるぅー。』
『ありがとう、カズミくん。せんせい
…うれしいよ。』
カズミは泣きながら私に笑顔を向けた。
意識を戻したら、数時間経っていた。
カズミの居所を探すつもりが、
力加減を間違えた為、過去視してしまった。
ため息をし、再度、この世界での
カズミの居所を掴もうとした。
その時、ほとんど訪ねて来るものはいない
静かな執務室にノックの音が鳴り響いた。
「総帥、南の騎士団から急ぎの報告書を
持って参りました。」
「入れ。」
「はっ!!」
丁寧に書かれた文字。
日付を見た。数十分前の時刻。
内容は、ソリトル伯爵領で不審な馬車が
ぬかるみにハマっていたとの事だ。
一瞬、よくある事だと思ったが、
なぜか胸騒ぎがした。
身分がありそうな、ふくよかな2人、
痩せ細った御者に罵声を浴びせていたらしい。
湖に向かうらしい、との報告が、騎士団から
私の元に届いた。
報告者の名前は、現国王の元近衛騎士
プーエル・ベアラ・リストン。
プーエルからの報告には、事細かく
箇条書きに書かれており、見やすかった。
馬車に乗っていた人物の特徴、
御者や馬車、馬の特徴まで書かれていた。
さすがだな。
今の国王の元を離れ、好きな相手を
追いかけたらしいが、恋は実らなかったらしい。
そこまで、熱中になれるプーエルはすごい。
相手は違う者と婚姻してるのに
すごい執着心だ。
だが、今ならわかる気もする。
私のカズミが、万が一…ありえない。
そんな事ありえないが、他の者と
一緒になるという未来はない。
もしもの時は…相手をただでは……。
楽には殺してやらない。
手間隙かけてじっくりと痛ぶってやる。
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そばにいないなんて、なんと虚しくもあり、
心が寒いんだ?
今では何かが煮えたぎるようにざわついてる。
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