【完結・R18】28歳の俺は異世界で保育士の仕事引き受けましたが、何やらおかしな事になりそうです。

カヨワイさつき

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第二章 婚姻に向けて

57、伯爵と村巡り

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1つの村の滞在時間、感覚的には30分から
1時間程度なのかもしれない。
明確な時計がこの世界には、ないらしいので
大まかな時間しかわからないのである。
1つの村などに最低でも年に1回程度訪ね、
領地ギリギリの村々を中心に
困り事はないかなど領主自ら、
巡回をしているとの事だった。
村の数は50近くあるらしく、
半数は村とは言えないような少人数の
集落の様な場所が点在しているらしい。
一年の半分程は村巡りに費やしている
伯爵に対して、俺は尊敬しざる得なかった。

リストン王国もかなり変化したらしいが、
まだまだ獣人差別で人族主義、
古(いにしえ)の奴隷制度などが根深く
残っておりなかなか、綺麗さっぱりの
平和な王国とは言えないらしい。
一番初めのヨセ村が多種族で構成された村で
あるにも関わらず、一番安定していた気が
するのは、気のせいではなかった。
色々な種族、生活習慣も違うし、
虐げられた子が死ぬ、半妖、ハーフ、
どの種族からも、居場所を奪われた幼子の末路、
ナオクルさんは、俺の視界を遮り
見せないようにしていたけど、
少ないとはいえないほどの何かが
山道に捨て置かれていたのだ。
森の中、薄暗い山間部、捨て子?魔物に
食いあさられた生きていたはずの者たち。
マコト様もボイニー王国のオレット王弟殿下も
遺体をみて、痛ましい表情をしながら、
「まだ、良くなったほうだよ。」って
悲しげに微笑んでいた。
4件目の村の巡回を終え、
最初のヨセ村同様に、伯爵は色々な
相談事にのりアドバイスなどしていた。
医療品や食料、痛みを緩和する魔石、
魔力暴走を起こしそうな者への
魔力消費の仕方、魔石の作り方、
色々な対策、魔力循環のやり方など
村人に教えたり、新しい者の
住民登録の様な物を記録していた。
お昼頃なのかソリトル伯爵と俺のお腹が
ほぼ同時になった。
義理の親子だが腹時計はピッタリだった。
思わず俺と伯爵は同時に笑ってしまった。
昼食場所に最適な所を探し、
アイテムバックから皆の食料を出した時だった。

ポテッ。
「…うわっ…えっ?」
「……ん?」
突然、何かに驚いたマコト様は、
自分の頭部分に何かの魔法を使おうとした。
「待て、神子。」
ナオクルさんが、マコト様を止めた。
ずっとお姫様抱っこされている俺は、
頭に手をかざしたままのマコト様の
頭に乗っている何かと目があった。
「か、か……。」
「か?」
「可愛い!!何この子?」
「えっ?」
不安そうな表情のまま、マコト様は
慎重な手つきで、自分の頭の上の
何かに触ろうとした。
「きゅ~。」
か弱く消えそうな鳴き声だった。
「なぜ、こんな所に?」
ナオクルさんがつぶやきながら上を見た。
それにつられて俺も上を見ようとした。
……ナオクルさんの、大きな手で
視界を塞がれたのだった。
「……ゲッ。」
マコト様の声。
「……あれは。」
ボイニー王国のオレット王弟殿下の声。
「この辺りにはいないはず……。」
ソリトル伯爵が呟き、護衛も含め
気を引き締め直したのがわかった。
木の上に何があったのかな?
「そのままにはしておけない。
カズミ、アベリアと一緒に少し離れていろ。
結界を張る。オレット殿も結界の中にいてくれ。」
「だが…。」
「貴方はこの国の賓客だ。怪我をさせたら
悲しむ者がいる。大人しく見ていてくれ。」
「オレット様、こちらへ。」
数人の護衛に囲まれ、俺たちと合流し、
少し離れた場所に結界と俺にわざと
見えないように、高い土壁が作られた。
ちょうどナオクルさんと、木の上の
何かが見えない様に……。
音だけは聞こえる。
木を切る音、何かがドサッとドサッと落ちる音。
「木の上に、何があったのですか?」
「カズミさんは、アレを…。あっ、
ナオクルさんか…。見なくて正解だよ。」
「……ああ、そうだな。」
なんとなく、そうだろうなと思いながらも
明確な答えが欲しかった。
「ソリトル伯爵…、お義父さん、教えて下さい。」
こういう時に使うのはズルいと
思ったけど、1人だけ知らないのは
ちょっと仲間外れにされた感じで嫌だった。

「アネクラって知っているかな?」
一瞬驚いた表情を浮かべた後いつもの
穏やかな表情の伯爵になった。
「聞いた事が…確かクモの妖怪かな?」
「妖怪というものが私にはいまいちわからないが、
そう、クモの下半身に足が8本、上半身は
人族とあまり変わらない魔物だ。縄張り
意識が強くて、一度敵とみなした者は、お尻から
出す強力な糸に絡め取られエサにされるのだ。」
「…エサ。…そ、それが?」
「あぁ。エサにされた者たちが
グルグル巻きになり、衰弱死していた。」
「衰弱死……。」
「そうだ。そのまま残されていたが、おかしい。」
何がおかしいのかわからない俺は、
ナオクルさんが無事に帰ってくるのを待っていた。
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