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11、呆気なく

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結論、あれだけ警戒態勢だった物々しい
入学式も、省けるとこは省いたのか
それとも、もともと短かったのかは
わからないけど短時間だった。
学園長、オザーム王太子殿下の挨拶
カッツー王太子殿下も留学生としての挨拶
来賓の祝辞は名前だけの読み上げなどだった。
緊張はしたものの、呆気なく終わった
入学式に、ホッとしたのだった。

広くなった新しい学生寮の部屋割りは、
マリー(中身はキオナ)とヴィオラ
キオナ(中身はマリー)とオザーム王太子殿下
トリコロールとムーメイ・ナナッシー
カッツー王太子殿下は二人部屋を一人で使用
オスカル兄上は王妃主催のお茶会でマリー
(中身はキオナ)と同じ円卓にいたアドニス
というタカモモ商会の長男と一緒だった。
ローズ姉上は、エリカ・トレミエール
トレミエール公爵家の次女と同じになったのだ。
魔法と剣術は3学年とも一通り共通の授業があり
1学年は総合の魔法を習い、2学年に上がると
自分の主要な魔法や習いたい希望の魔法の
授業を選べる様になっていた。
あれだけ警戒し緊張した入学から早や3年が経ち、
オスカル兄上とローズ姉上は16歳の
成人の儀式を終えた。
あと半年から1年間の選択科目を2人とも
騎士コースを選んだのだった。
えっ?ローズ姉上?!
マリー(中身はキオナ)はローズ姉上が
社交・料理などのマナーコースを選ぶと
思っていたのだった。
自分も来年には成人で社交・料理などの
マナーコースを選ぼうと思っていたのだ。
ローズ姉上いわく、マナーは家でいくらでも
習えるけれども、騎士コースは学生は
もちろん本物の騎士団の者も時折
稽古を付けてくれるらしく、侯爵家で
雇い入れている家庭教師では味わえない
さまざまな腕の者と対峙出来るから
楽しみだそうだ。
「……。」

              ***

"バカマヌー"元アクヤーク伯爵に心酔?していた
と言われる正体不明、性別不明の人物。
ゾンブーク国のカッツー王太子殿下と
この国のオザーム王太子殿下たちが
入学するとの事で、バカマヌーがなんらかの
手段で、狙ってくるだろうと思っていたが、
学園の行事にも影響もなく、淡々とした
毎日が過ぎていったと思われていた。
ベルブックとベルウッドの両家は、
バカマヌーの正体を必死に突き止めたのだった。

トリコロールとムーメイ・ナナッシー
カッツー王太子殿下の乳兄弟兼侍従である
トリコロールは、常に周りをビクビクしながら
過ごすムーメイに違和感を感じていた。
勉強面は出来るが情緒不安定なムーメイ、
定期的に魔法の手紙を養子先の商人に
送っていた。
諜報を専門にしている影を使い、ムーメイからの
手紙を垣間見ると…そこには、
学生での行事や身の回りの事、食事の内容まで
書いていた。そこまでならよかったのだが、
カッツー王太子殿下や、オザーム王太子殿下の
仲の良い友人や、高位貴族の動向や
身の回りの事を書いていたのだった。
情報屋?と思ったが、最後の文に
元伯爵様に感謝するっとの内容があったのだ。
両国の王太子殿下たちは、すぐに
ムーメイ・ナナッシーに問いただしたのだった。
"バカマヌー"は、元アクヤーク伯爵に
不当な人身売買や犯罪奴隷だった子を
を数人教育し番号で呼び、その総称が
バカ間抜けという意味での、バカマヌーと
よんでいたのだった。
ムーメイの名前も無名=ムメイ、
名なし=ナナシという意味だった。
さまざまな呼び方で貶されながら
呼ばれているうちに、自分の事を
ムーメイ・ナナッシーと思い込んでしまったのだ。
元アクヤークの親族と国外追放になったが
悪事の事は何も知らされず、商人に
半ば奴隷同然で養子として売られたが
元アクヤーク伯爵家を恩人だと思っているのだった。
本人に人を傷つける意思もないので
様子見、いざとなれば消す事となったのだろう。
マリーやキオナはその事をまだ
知らされていない状態で、毎日をすごしていた。

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