鈍色(にびいろ)

カヨワイさつき

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虚空(こくう)

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虚空(こくう)何も存在しない空間。
何も存在しない…何になりたかったのか
思い出せないほど、気持ちを押し込めた。 
また、私は……。

以前の恋もめちゃくちゃ好きな人だった。
友達の紹介で、知り合った人。
相手はバツイチだったからか
結婚する気もなかったみたい。
私はただの遊び相手くらいにしか
思ってもらえなかった……。
ずっと思い悩んでいた。
私は結婚したいけど
相手はその気がないなら、
このままじゃダメだと思って
大好きだった人に
私から別れを告げた……。
なんというか、なぜこうなったのかも
わからない。
もっと自分がイイ女だったらよかったの?
あの人も離したくないとか
思ってくれたのかなーとか。
色々後悔したり…した。

始まりもしなかった恋心に
別れは思ったよりあっけなかった。
このままではいけないと思ってた。
だけど動き出せないまま、私は
彼に、私の事が好きなの?って
言葉を含みながら、彼自身の
誰に対しての"好き"をわからないまま、
励まし続けていた。
もしも、私の事"好き"なら
告白する様に仕向けたのが昨日。
その結果が、あのメールのやりとりだった。
お酒はどのくらい飲んだか
わからない。

昔から歌うのが好きだったともは
自分の気持ちを入れ込んだ
(以前に作った)歌が
頭の中をぐるぐるしていた。
"鈍色"にびいろ
見上げた空はまた、鈍色だった。

あの時も学んだはずなのに
期待してしまった。
友達としての一歩を踏み出せなかった自分。
私は、向こうから言うてくれるのを
期待していた。
今回はやたらと、真剣な目をしたから
"もしかして?""やっぱり"と思ってしまった。
ドキドキした私がバカみたい。
なぜ?なぜ携帯のメールなの?
記録が残ってしまうじゃない。
未練タラタラだから、消せない私。
顔で笑って、心で泣く私。
こうなるなら苦手な携帯の通話が
…よかった。
通話なら、私の気持ちもバレるかな?
声が震えるかもしれない。
でも、文面だと消せないじゃない……。
消せない、消したくない?
どうするのよ。この文。
終わりがくることくらい
薄々わかってたハズ……。
あの2人はいつも隣同士だったり
距離感、趣味も同じだった……。

ほぼ寝れないまま空が明るくなり
化粧という仮面をつけた。
いつもより早すぎる時間。
会社近くのファーストフードにでも
寄って時間つぶししようかなぁ……。
家にいたら、くよくよしてしまうわ。
ともは、制服がわりのスーツを着て
いつもの鞄、いつもの靴…ではなく
なんとなく買った新しい靴で
仕事場に向かう事にした。

通勤ラッシュの渦。
人の波に押されながら駅に吸い込まれ
入り口付近、窓際の位置をキープした。
早いスピードで流れる景色。
季節外れの紫陽花(あじさい)が
なぜか花盛りを迎えていた。
狂い咲きなの?
そのブルー系の紫陽花の花言葉は、
『冷淡』『無情』『辛抱強い愛情』。
雨に耐えて咲く姿から、
そんなイメージが連想されたのかな?
青い紫陽花は、私にびっくりするほど
しっくりきた。
辛抱強い愛情?

同年代にオカンみたいと
言われたことがある私。
世話好きではないけれど、
知らないうちに誰かのフォローに
まわっている気がする。
仕事も、率先してやった。
誰かに認めて欲しい、
誰かに私はこんなにも頑張ってるんだって
褒めて欲しかった?
自分で自分を褒める事しか
出来なかった。

ピンクの紫陽花の花言葉は、
『元気な女性』『強い愛情』なのに。
気持ちまでブルー。
咲いている間にも色が変わることから、
『移り気』『浮気』『変節』
という花言葉と『和気あいあい』
『家族』『団欒』など、ポジティブな
花言葉もある紫陽花。
今日の紫陽花はキライだ。
ぐずつく天気。
変わりやすい空模様。
変わりやすい紫陽花。
一縷(いちる)の望みだけ
すがりついていた……。
私はここにいる。
同じ場所、同じ空間にいたのに
あの人が選んだのは別の人。
髪型も私と似た別の人。
梅雨空どころか夏も過ぎた秋なのに……。
狂い咲きの紫陽花なの?

涙がにじみでそうな朝、
突然声をかけられた。
「大丈夫?気づくの遅れてごめん、
今、助けるよ。」
「……エッ?」
見知らぬ男性。
「痛てて……。」
「アンタ、彼女のお尻触ってただろ?
汚い手で触んなよ!オッサン!!」
ざわざわする電車の車内とともに
次の駅名がいつもの調子で
アナウンスされていた。
暴れながらも暴言を吐く男性と
着崩したスーツから見える
筋肉質な腕や胸板。
仮面ライダーのヒーローのように
短めの髪型で清潔そうな男性。
スーパーイケメン。超イケメン。
「ごめんね。一緒に降りて事情説明
になるけど……。仕事だよね?」
「……。」
何が起きたかわからない私は
黙ったまま、見知らぬ彼と
その彼に手を掴まれたままの
オッサンとともに、駅の事務所に
入っていった。
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