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第二話 幼馴染にバラまけない復興支援
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オルタンシア王国の最東端に位置するシュバルツハイム辺境伯領は領地内にて復活した古代龍との壮絶な戦いで荒れた領内の復興作業を行なっていた。
壊された建物が少しずつ修復されていく様を領主であるバルトロメイ・フォン・シュバルツハイムはホッとした表情で見つめている。
「領主殿! 言われた通りあのクソ新聞配ってた香具師にゲンコツかましてやったぞ!」
威勢のいい声を上げる鎧姿の彼女は領内最強の冒険者ディナリス。
まだ二十二歳という若さながら千を超えるモンスターを討伐している。
此度の古代龍討伐も彼女無しでは成し遂げられなかっただろう。
騎士どころか正規の兵士ですらない冒険者という立場ながらバルトは彼女に多大なる信頼を寄せており、破格の待遇を以って専属契約を結んでいた。
そんな彼女に、民心を惑わす新聞をばら撒く香具師を捕まえろ、などというくだらない任務を与えなきゃいけないことにバルトは少なからず苛立っている。
「ご苦労。民の様子は?」
「王都ならともかく、この領地で領主殿のことを悪く言う奴はいないさ。
戦場では陣頭に立ち、飢饉の時には自分の食事の量を減らして民と苦しみを分かち合っているのを誰もが知っているんだから。
それに王様の支援は正直ありがたい。
希望の光が見えた、ってみんな大喜びしてるよ。
正規の手続きとやらで支援を進められても、王都から離れたこの領地に届くまで何ヶ月かかるか分かったもんじゃないからな。
王族なんて椅子を尻で拭くくらいしかできない連中だと思っていたが、なかなかどうして気が利くじゃないか」
ディナリスは無教養であるが地頭は良い。
その上、諸国を放浪していた故、世情にも詳しい。
求めていた回答を返してくれたことにバルトは相好を崩す。
「マスコミのせいでジルは史上最悪の無能のように書きたくられているが、決してそうじゃない。
15歳の若さで即位しながらこの3年間、失政らしき手はほとんど打っていない。
他国からの侵攻を許さず、国力を拡充し国内の諸問題への対策も着実に進めていらっしゃる」
そう言うバルトも今年ようやく20歳になる。
シュバルツハイム辺境伯家は隣国ヴィルシュタイン王国との国境線の警備や領内に巣食う竜系のモンスター討伐などの荒事を引き受ける武闘派の貴族家。
王国における東の守護者と称せられる家の使命を果たすことは容易でないが、彼は見事にこなしている。
「私にとってジルは主君であると同時に親友であり、人生の恩人なのだよ。
遊学とは名ばかりの人質暮らしを強いられていた私のねじ曲がった心を救って下さった。
将来、王となるべく研鑽を積む王子のひたむきさを見て私もかくありたいと思うようになったのだ。
あの方に出会わなければ、今の私はない」
「へえ。だから友達ということでこの領地のことも気に掛けてくれてるわけで」
「いや、そのようなことは断じてない。
ジルは公明正大で合理主義だ。
王国のために必要だったから支援して下さった。
そもそも我々の交友は即位された後は向こうから断られている。
統治者が個人的な友誼を重んじれば示しがつかないからな」
「なるほど……偉い人らも大変だな。
友達ひとつまともに作れないなんてさ」
ディナリスの呟きにバルトは苦笑しつつ王都ある西の空を見つめる。
(それにしてもマスコミの陛下に対する風当たりは強くなる一方だな……
あのジルですら御し切れないとなると、もはや奴らはモンスター以上に手がつけられない脅威なのではないか?)
奇しくもマスコミの過剰なジルベールへのバッシングがバルトに危機感を抱かせた。
以降、バルトは王都における情報収集を強化する。
この事は後に「アマデウルの恥辱」と呼ばれる王国史上に残る政変時に大きな影響を与えるのだが、それはまだ先の話である。
壊された建物が少しずつ修復されていく様を領主であるバルトロメイ・フォン・シュバルツハイムはホッとした表情で見つめている。
「領主殿! 言われた通りあのクソ新聞配ってた香具師にゲンコツかましてやったぞ!」
威勢のいい声を上げる鎧姿の彼女は領内最強の冒険者ディナリス。
まだ二十二歳という若さながら千を超えるモンスターを討伐している。
此度の古代龍討伐も彼女無しでは成し遂げられなかっただろう。
騎士どころか正規の兵士ですらない冒険者という立場ながらバルトは彼女に多大なる信頼を寄せており、破格の待遇を以って専属契約を結んでいた。
そんな彼女に、民心を惑わす新聞をばら撒く香具師を捕まえろ、などというくだらない任務を与えなきゃいけないことにバルトは少なからず苛立っている。
「ご苦労。民の様子は?」
「王都ならともかく、この領地で領主殿のことを悪く言う奴はいないさ。
戦場では陣頭に立ち、飢饉の時には自分の食事の量を減らして民と苦しみを分かち合っているのを誰もが知っているんだから。
それに王様の支援は正直ありがたい。
希望の光が見えた、ってみんな大喜びしてるよ。
正規の手続きとやらで支援を進められても、王都から離れたこの領地に届くまで何ヶ月かかるか分かったもんじゃないからな。
王族なんて椅子を尻で拭くくらいしかできない連中だと思っていたが、なかなかどうして気が利くじゃないか」
ディナリスは無教養であるが地頭は良い。
その上、諸国を放浪していた故、世情にも詳しい。
求めていた回答を返してくれたことにバルトは相好を崩す。
「マスコミのせいでジルは史上最悪の無能のように書きたくられているが、決してそうじゃない。
15歳の若さで即位しながらこの3年間、失政らしき手はほとんど打っていない。
他国からの侵攻を許さず、国力を拡充し国内の諸問題への対策も着実に進めていらっしゃる」
そう言うバルトも今年ようやく20歳になる。
シュバルツハイム辺境伯家は隣国ヴィルシュタイン王国との国境線の警備や領内に巣食う竜系のモンスター討伐などの荒事を引き受ける武闘派の貴族家。
王国における東の守護者と称せられる家の使命を果たすことは容易でないが、彼は見事にこなしている。
「私にとってジルは主君であると同時に親友であり、人生の恩人なのだよ。
遊学とは名ばかりの人質暮らしを強いられていた私のねじ曲がった心を救って下さった。
将来、王となるべく研鑽を積む王子のひたむきさを見て私もかくありたいと思うようになったのだ。
あの方に出会わなければ、今の私はない」
「へえ。だから友達ということでこの領地のことも気に掛けてくれてるわけで」
「いや、そのようなことは断じてない。
ジルは公明正大で合理主義だ。
王国のために必要だったから支援して下さった。
そもそも我々の交友は即位された後は向こうから断られている。
統治者が個人的な友誼を重んじれば示しがつかないからな」
「なるほど……偉い人らも大変だな。
友達ひとつまともに作れないなんてさ」
ディナリスの呟きにバルトは苦笑しつつ王都ある西の空を見つめる。
(それにしてもマスコミの陛下に対する風当たりは強くなる一方だな……
あのジルですら御し切れないとなると、もはや奴らはモンスター以上に手がつけられない脅威なのではないか?)
奇しくもマスコミの過剰なジルベールへのバッシングがバルトに危機感を抱かせた。
以降、バルトは王都における情報収集を強化する。
この事は後に「アマデウルの恥辱」と呼ばれる王国史上に残る政変時に大きな影響を与えるのだが、それはまだ先の話である。
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