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2 状況把握
しおりを挟むザワザワと周りがどよめいている
アンネローゼの願いを叶えた直後で、大会の授与式真っ只中。
一悶着起きてるのに、会場を後にした人がいない。たくさんの人々がこちらに注目している。
面白いもの観たさ?いや、表情を見るに今起きている出来事はよくある事ぽいな。少なくとも「こんなこと初めて~」感はない。
大衆から目を離し現状況を最もよく知るであろう人物(?)へ体の向きを直す。
目の前にいるのは、半透明な鷲みたいな大きくぶさ…独特な鳥。ギョロリとした目が印象的で悪夢に出てきそうなその鳥が私に語りかけてきた。
「状況は大ざっぱにで構わん。把握できたじゃろ?後ろのヤツらのために適当に挨拶してやれ、よく分かっとらんヤツが今にも向かってきそうじゃ。
わしは能力のない下賎なヤツに近づかれとぉない。早くしてやれ。但し宿主の名前だけ名乗れ、おまえさんの本名は言わぬように…な」
「えーと、はじめまして。ラ・ヴァルス家の……えっとねー………アンネローゼだったものです。」
とりあえずアンネローゼの記憶が完全には受け継がれていないので、自分の名前を伏せつつも別人であることを主張するために大きく手を振りながら会場にいる人達に話しかける。
「アンネローゼではないのか?」
アンネローゼの想い人が話しかけてきた。
灰髪灰緑目の全体的にパーツが小さくお世辞にも顔が整っているとは言えない男性。その隣には赤髪深緑目の少女が、寄り添い合っている。
確かこの女の子がアンネローゼの異母妹の……キャサリンだったかな?
記憶にある綺麗系美人さんであるアンネローゼとは似ていない。
あ~知らない記憶を呼び覚ますのきっつ!
頭をフルに使って疲れたので、首をぐるぐると回すと二人は機嫌な顔をした。
じーーーーーー
「あの...あんまり見つめないで欲しいです。」
そんなにじっと見られていると恥ずかしいし身動きひとつ取るのにも余計な力が入っちゃう。
私は恥ずかしさで顔を赤くする。
「まるで別人だ」
「お…お義姉さま」
「それはまぁ
容姿はまんまだけど、別人格なので。彼女の記憶は若干あるよ。でもあなたのお姉様はもういないみたい。」
両手をまた大きく振ったり身体を揺らしたりして以前との違いをアピールする。記憶を辿るとこのような言動や行動は、貴族間で下品とみなされるっぽい。
以前の世界で生きていた私としてもこの行動は恥ずかしいから止めたい!止めたいんだけど、突然知り合いを無くした哀しみは分からんでもない。私も両親を事故で亡くしているから。
先程の発言や行動は、突然姉を亡くして辛いだろう妹ちゃんに酷だっただろうか?泣いちゃわないかな?
ん?あ~そういうことね。了解!
妹ちゃんのことを考えているとアンネローゼの妹ちゃん関連の記憶が頭に入ってきた。記憶の通りならこの子は義姉の死を悼む子供じゃない。
「本当にお姉様は消えてしまったの?…私のせい?」
妹ちゃんに腕をガシッと掴まれた。髪の毛も肌ツヤも綺麗に整えられているが、不細工な子だ。彼女には悪いが心中で少しだけ同情する。
「ねえっ、本当にお姉様は消えてしまったの?…ねぇ!ねぇってば!」
妹ちゃんは悲壮さを体全体で表現しながら涙をポロポロと流す。
さも『私、傷ついてます』とアピールしながら泣いているが、彼女は我儘放題の我儘娘で、姉を慕っている光景はプライベート時の記憶にないようだ。
無能なおバカではあったけど、無垢な女の子の演技が上手な子だった。特に泣きの演技は女優にだって劣らないだろう。でも私はアンネローゼの記憶があるから騙されない。面倒なのでスパッと言い切ってしまおう。
「そうですよ。あなたが意図的に姉であるアンネローゼから婚約者を奪い。目の前でちちくりあったりするから彼女は感情を捨て最後には人生さえ投げ捨てたの。
どうせちゃんと理解できているんでしょう?
自分の…あっ!私のね状況把握をしたいから少し黙っていてくれる?」
家族を死に至らしめ、挙句の果てには家族の死を悼みもしない子に時間を割いてはあげない。
こんなことを言われると思っていなかった風な驚き顔を晒している妹ちゃんはもちろん、元婚約者も口を開けて惚けている。
マジで気を配る必要ないの?人が一人消えたってのに…勘弁してくれ
「精霊王様、アンネローゼの願いを聞いてくださりありがとうございました。彼女に代わってお礼申し上げます。私の状況についてお聞きしたいため、少々お時間をいただけますでしょうか?」
「もちろん構わない。人間との会話は久しぶりじゃからな。ほほっ、わしもこの大会の優勝者との会話を毎度楽しみにしているんじゃ。」
「私とアンネローゼを異なる人間とみなし、アンネローゼの義務は私に引き継がれないという認識でよろしいでしょうか?」
「ああ、その通りだ。そなたは彼女、アンネローゼとは異なる。ついでにそなたの願いも叶えたぞ。」
「?」
「アンネローゼは自身の醜さを受け入れられず、また愛する人に見向きもされない悲しさによりこの世を捨てたが、そなたの願いも叶えなければ不公平というものだろう。」
「フィリップさんとの婚約解消をしてくれたってこと?」
「そこにいる男との婚約はそなたの魂が表に出た時点で無効である。そんなことではない。そなたは前世で願ったであろう?
愛する者と共に生きたいと」
「えっ……」
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