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第4章
(65)旅立ちに祝福あれ!
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『ソフィア、出発するのね』
──天使ミーヒャが持ってきた書類を片付ける始まりの神、プリニティーバ。
『それにしてもプリニティーバ様、どうしてソフィアにあの本を託すようにしたのですか?』
『本当はソフィアにこの世界で、本当の“幸せ”を知ってほしかったの。でも、今の私達だけではあの問題をどうすることも出来ないわ……』
『“あの問題”って何ですか?』
『それは──』
プリニティーバ達の前に万能の神、ヘラムントと魔法の神、アビラスが突然現れた。
『プリニティーバ様』
『あらヘラムント、アビラスも。どうしたの?』
『今日の集会の結果を届けに来たよ』
と言うと、アビラスはプリニティーバに書類を渡した。
『アビラスがこんなに働き者になってくれたのも、ソフィアのお陰ね』
『ええ全く。あの子の持つ不思議な力には敵いません』
アビラスはいたたまれない様子。
『それで?』
『地上神たちの集会で新たに1名、地上神として神格化させる計画が立てられました』
『あら、またなの?ここ100年単位で1柱ずつ増えているのよね……』
『やっぱり、フィニスがいなくなったから?』
『そう、ね……』
するとミーヒャが下界を見て、
『皆さん、式が始まりそうですよ』
3柱がミーヒャの周りに集まったとき、
『始まる前に間に合ったわ!』
今度はベネディクタがやって来た。
『もう、私の方が仕事量多かったんだから少しくらい待ったっていいでしょう』
『『早くソフィアが見たかった』』
『んもう、そこは一緒なのね!』
『本当に、ソフィアはすごいわね』
そして、4柱は下界を見下ろす。
『私達も、ソフィアの門出を祝いしましょう』
『『『はい!』』』
王都の門にはソフィアの門出を見送ろう と、たくさんの人が集まっていた。エリックは出立するまでソフィアの護衛に付くため、フィリップ率いる1・2番隊が国王の護衛、3番隊と5番隊の合同部隊が国民と王都門周辺の警備をすることになった。
正門前には煌びやかさは何一つない一般的な馬車が用意されていた。そして、門前広場に設置された白い高台には国王御一家が椅子に座っている。国王と王妃はいつも通り、国民の呼びかけに対応している。ハンネス王子も同様、特に女性からの黄色い声が絶えない。しかし、レオン王子は浮かない表情をしていた。
「……」
「レオン。ソフィアがもうすぐ着くよ」
「はい……」
「……(レオン)」
レオン王子不安気な様子に気づいたハンネス王子とそれを横目で見る国王と王妃。すると、王妃は視線を国王に移す。国王は視線を感じ、咳払いをした。
「ゴホンッ!そ、そう言えば……あ~、言い忘れておったが……」
「……あなた、ちゃんとレオンにお伝えになったら?」
「……うむ。ちょうど昨日、隣国のから手紙が届いてな。これじゃ、レオン」
「はい……」
レオン王子は国王から手紙を貰う。
「中を見てみなさい」
国王に促され、その場で中身を開けた。
───────────────────
拝見 ベイフロー公国、
国王 サエモンドロ・ベイフロー 様
先日の件、誠に感謝のしようも御座いません。お陰を持ちまして、本国におきます債務を貴国に全額返金できますことを御報告申し上げます。
尚、貴国第2王子で在られますレオン・ベイフロー様の本国、ウドヴァ国立学園への編入届けにつきまして、受理致しますことを御報告申し上げます。
敬具 ウドヴァ国、
国王 アルトリート・ブルダリッチ
ウドヴァ国立学園長 ルーカス・トンプソン
───────────────────
「父上、これは……!」
国王は深く頷いた。王妃も優しい笑みを浮かべる。
「まだ学園に入れると決まった訳ではないぞ?それ相応の試験があるからのう」
「はい……!頑張ります!」
「良かったね。レオン」
「はい、兄上!」
すると、ファンファーレと共に民衆による拍手喝采が聞こえてきた。
「……ついに、来たな」
だんだん近くなるソフィア達の姿にレオン王子はもう悲しさはなくなっていた。ソフィア達が国王の前に揃うと、国王は少し高めの台の上に立った。
「これより、ソフィア一行の出立の儀を初める!」
「長いようで短い間ではありましたが、ベイフロー公国におられる皆様と共に、とても充実した生活を送ることが出来ました」
ソフィアは国王と向かいにたっていたが、民衆の方に向き直した。
「私は今日、この国から離れますが、ここで過ごした時間は忘れません。そして……」
ソフィアは騎士、商人、冒険者、平民全員を見て、
「……また、ここに帰ります」
そしてソフィアは両手を組む。
「私はフェアリーデイとして……いえ、この国の1人として、皆様に神の御加護があらんことを──」
刹那、暖かく心地いい光がどこからともなく降り注いだ。
「──祈ります」
ソフィアを中心に光は広まり、この王都全体を包んだ。ソフィアは気づいていないが、彼女の神々しさに頭を下げる者や涙を流す者、拝み出す者が現れ、その場にいた全員がソフィアの門出を祝い、安全を願った。
「皆!時は来た。只今より、ソフィアは王都を出立する!」
国王の言葉によって、王都門が重く錆びた音をたてながら開いた。これをかわきりに、民衆は拍手喝采。ソフィアとグライを残し、他の皆は馬車の荷台に乗った。
「ソフィアよ」
国王はソフィアに小声で話しかける。
「はい」
「先の選別の儀でソフィアが決めた騎士を呼ぶのじゃ」
「はい!」
ソフィアは騎士団の方に体を向ける。
「ベイフロー公国騎士団第2番隊、マイル・モザゲンスキー様」
「はっ!」
「ベイフロー公国騎士団第1番隊、ジェイコブ・ウィルソン様」
「……はっ」
2人はソフィアの前に片膝をついて礼をする。ソフィアの隣に国王が立つ。
「これより、2名にソフィア護衛の任を申し付ける」
と言うと、それぞれに巻物を手渡した。騎士団達は拍手で餞別を贈った。
「ソフィアちゃん」
「王妃様!」
王妃の後ろにはハンネス王子とレオン王子が。
「もう行ってしまうのね……」
「長いようで短かったような気がするよ」
「はい……寂しさはつきませんが、頑張って巡礼を成し遂げてきます」
「体には気をつけてね。ほら、レオンも」
ハンネス王子がレオン王子をソフィアの前に押し出す。
「ソフィア……お、俺!頑張って勉強して、強くなるから!だから……これ!」
レオン王子はソフィアに手作り感のある青い石の付いたペンダントを手渡した。
「ソフィアの……目の色と似ていたから……お、お守り代わりに!」
ソフィアはペンダントを受け取ると首にかけた。
「ありがとうございます!これで頑張れそうです」
ソフィアの笑顔にレオン王子は顔を真っ赤にした。その様子を国王一家は温かく見守っていた。
「では……行ってきます!」
「「「「行ってらっしゃい」」」」
ソフィアはマイルとジェイコブを連れて馬車に向かった。
「ソフィア様ぁ!」
「行ってらっしゃい!」
「また戻ってきて下さいねぇ!」
民衆の歓声を聞きながら、馬車の周りを囲むように“インクレメントム”一同が立っていた。
「すごいな……」
アーノルドは呆気に取られていた。レジーヌとネイリスは誇らしげ。
「さすが、ソフィアね」
「人望が厚くて可愛いし、賢くて可愛いし!」
「可愛い子って2回言う必要あるか?」
「「あるわよ!!」」
「お、おお……そうか……」
2人の圧に引き気味のアーノルド。それを見ていたミシェルとナギト。
「本当にあいつらここが公式の場だって忘れてねぇか?」
「(それは僕らも同じだと思うけど……)まあ、いいんじゃない?いつものことだし」
「ま、そうだな」
そこにグライ達が馬車に乗り込む。
『本当、いつも通りね』
『ええ。こんな人間達、初めてだわ』
エルブとアズルは可笑しそうに話しながら乗り込んだ。
《これから、出立すると思うと年甲斐なく心踊ってしまうわい》
〈俺たちは、森でお前達の安全を願うしか出来ないがな……〉
『寂しさもあるが、今はアレがある。もしものときは、助太刀くらい出来るかもしれぬな』
《それは頼もしいのう!》
そこにベラとフォルンがソフィア達の荷物を持ってきた。
「皆様、今日からよろしくお願い致します。ソフィア様が到着次第、出発致します」
『『は~い!』』
グライとオーヴィとスピーレは、その言葉を聞いてソフィアのいる方を見ると……レオン王子が顔を真っ赤にしながら、ソフィアにペンダントを渡しているところだった。
『《〈(あの小僧……)〉》』
グライ達がレオン王子をきつい目で見ている様子を目にした“インクレメントム”は彼らを敵に回してはいけないと悟った。
「みんな~!お待たせ!」
ソフィアが騎士達2人を連れてやって来た。
「お、そいつらがソフィアの騎士達か?」
「そうです!マイルさんとジェイコブさん」
アーノルドはソフィアの騎士をまじまじと見る。一方、その騎士がマイルとウィルソンだとわかった途端、ナギトとネイリスの表情が変わった。
「マ、マイル様……!」
「隠密部隊の……!」
2人は目を輝かせた。
「2人とも、自分の仕事。忘れてない?」
「「あ……」」
ミシェルに言われて、やっと我に帰った。
「(マイルさんもジェイコブさんも人気だね!)」
「ソフィアちゃん」
聞き覚えのある声がして振り向くと、ダグラスさんにリーリエさん、それからカズマさんがお見送りに来てくれたよ!
「皆さん!」
「本当に行ってしまうのね……」
「これから寂しくなるが……頑張ってこいよ」
「はい!ダグラスさん、リーリエさん、ギルドではお世話になりました」
寂しそうに微笑むダグラスさんとリーリエさん。
「ソフィア様」
「はい」
「短い間でしたが、俺を起こしてくれてありがとうございました。ソフィア様に会えて本当に良かった」
カズマさんはそっと私の手を取る。
「カズマさん……」
私もカズマさんに会えてよかった。なんだかカズマさんと私が似ている気がしていたの。カズマさんの家にいた精霊さん達も言ってたけど、私の能力も関係あるかもしれない……なんていうか、“魂”がこの世界以外から来た感じ……かな?
「私こそ、ありがとうございました!」
すると、隣りにフォルンがやって来て私の服の裾を引っ張る。
「ベラが……時間だって」
「うん、分かった!」
ソフィアはダグラス達に一礼して馬車に乗り込んだ。フォルンも後から乗ろうとした時、
「フォルン!」
カズマがフォルンを呼び止めた。
「……」
「ソフィアのこと、頼むよ」
カズマの言葉にフォルンは頷き、そのまま馬車に乗り込んだ。その背を見て何かに気づいたカズマは、誰にも聞こえない声で呟いた。
「行ってらっしゃい。“カリバスの子”」
「開門!」
重く錆びた扉がゆっくりと開く。ソフィア一行は心踊る気持ちを抑えながら、ゆっくり進ませるベラが先導役の馬車に身を委ねた。
「(これから何があるのか分からないけど、
楽しみ……!)」
とある森の奥──精霊達と会話している獣人が1人。
『やっと、進みだしたみたい……』
『フィリーデイ?』
『来ルノ?』
『来ルノ?』
『うん』
獣人の言葉に、精霊達は嬉しそうに飛び回る。
『楽シミ!』
『フィリーデイ楽シミ!』
『……そうだね』
強い風が吹き抜けた。獣人は風の吹き抜けた方を見て、呟く。
『早くここまでおいで……ソフィア』
──天使ミーヒャが持ってきた書類を片付ける始まりの神、プリニティーバ。
『それにしてもプリニティーバ様、どうしてソフィアにあの本を託すようにしたのですか?』
『本当はソフィアにこの世界で、本当の“幸せ”を知ってほしかったの。でも、今の私達だけではあの問題をどうすることも出来ないわ……』
『“あの問題”って何ですか?』
『それは──』
プリニティーバ達の前に万能の神、ヘラムントと魔法の神、アビラスが突然現れた。
『プリニティーバ様』
『あらヘラムント、アビラスも。どうしたの?』
『今日の集会の結果を届けに来たよ』
と言うと、アビラスはプリニティーバに書類を渡した。
『アビラスがこんなに働き者になってくれたのも、ソフィアのお陰ね』
『ええ全く。あの子の持つ不思議な力には敵いません』
アビラスはいたたまれない様子。
『それで?』
『地上神たちの集会で新たに1名、地上神として神格化させる計画が立てられました』
『あら、またなの?ここ100年単位で1柱ずつ増えているのよね……』
『やっぱり、フィニスがいなくなったから?』
『そう、ね……』
するとミーヒャが下界を見て、
『皆さん、式が始まりそうですよ』
3柱がミーヒャの周りに集まったとき、
『始まる前に間に合ったわ!』
今度はベネディクタがやって来た。
『もう、私の方が仕事量多かったんだから少しくらい待ったっていいでしょう』
『『早くソフィアが見たかった』』
『んもう、そこは一緒なのね!』
『本当に、ソフィアはすごいわね』
そして、4柱は下界を見下ろす。
『私達も、ソフィアの門出を祝いしましょう』
『『『はい!』』』
王都の門にはソフィアの門出を見送ろう と、たくさんの人が集まっていた。エリックは出立するまでソフィアの護衛に付くため、フィリップ率いる1・2番隊が国王の護衛、3番隊と5番隊の合同部隊が国民と王都門周辺の警備をすることになった。
正門前には煌びやかさは何一つない一般的な馬車が用意されていた。そして、門前広場に設置された白い高台には国王御一家が椅子に座っている。国王と王妃はいつも通り、国民の呼びかけに対応している。ハンネス王子も同様、特に女性からの黄色い声が絶えない。しかし、レオン王子は浮かない表情をしていた。
「……」
「レオン。ソフィアがもうすぐ着くよ」
「はい……」
「……(レオン)」
レオン王子不安気な様子に気づいたハンネス王子とそれを横目で見る国王と王妃。すると、王妃は視線を国王に移す。国王は視線を感じ、咳払いをした。
「ゴホンッ!そ、そう言えば……あ~、言い忘れておったが……」
「……あなた、ちゃんとレオンにお伝えになったら?」
「……うむ。ちょうど昨日、隣国のから手紙が届いてな。これじゃ、レオン」
「はい……」
レオン王子は国王から手紙を貰う。
「中を見てみなさい」
国王に促され、その場で中身を開けた。
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拝見 ベイフロー公国、
国王 サエモンドロ・ベイフロー 様
先日の件、誠に感謝のしようも御座いません。お陰を持ちまして、本国におきます債務を貴国に全額返金できますことを御報告申し上げます。
尚、貴国第2王子で在られますレオン・ベイフロー様の本国、ウドヴァ国立学園への編入届けにつきまして、受理致しますことを御報告申し上げます。
敬具 ウドヴァ国、
国王 アルトリート・ブルダリッチ
ウドヴァ国立学園長 ルーカス・トンプソン
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「父上、これは……!」
国王は深く頷いた。王妃も優しい笑みを浮かべる。
「まだ学園に入れると決まった訳ではないぞ?それ相応の試験があるからのう」
「はい……!頑張ります!」
「良かったね。レオン」
「はい、兄上!」
すると、ファンファーレと共に民衆による拍手喝采が聞こえてきた。
「……ついに、来たな」
だんだん近くなるソフィア達の姿にレオン王子はもう悲しさはなくなっていた。ソフィア達が国王の前に揃うと、国王は少し高めの台の上に立った。
「これより、ソフィア一行の出立の儀を初める!」
「長いようで短い間ではありましたが、ベイフロー公国におられる皆様と共に、とても充実した生活を送ることが出来ました」
ソフィアは国王と向かいにたっていたが、民衆の方に向き直した。
「私は今日、この国から離れますが、ここで過ごした時間は忘れません。そして……」
ソフィアは騎士、商人、冒険者、平民全員を見て、
「……また、ここに帰ります」
そしてソフィアは両手を組む。
「私はフェアリーデイとして……いえ、この国の1人として、皆様に神の御加護があらんことを──」
刹那、暖かく心地いい光がどこからともなく降り注いだ。
「──祈ります」
ソフィアを中心に光は広まり、この王都全体を包んだ。ソフィアは気づいていないが、彼女の神々しさに頭を下げる者や涙を流す者、拝み出す者が現れ、その場にいた全員がソフィアの門出を祝い、安全を願った。
「皆!時は来た。只今より、ソフィアは王都を出立する!」
国王の言葉によって、王都門が重く錆びた音をたてながら開いた。これをかわきりに、民衆は拍手喝采。ソフィアとグライを残し、他の皆は馬車の荷台に乗った。
「ソフィアよ」
国王はソフィアに小声で話しかける。
「はい」
「先の選別の儀でソフィアが決めた騎士を呼ぶのじゃ」
「はい!」
ソフィアは騎士団の方に体を向ける。
「ベイフロー公国騎士団第2番隊、マイル・モザゲンスキー様」
「はっ!」
「ベイフロー公国騎士団第1番隊、ジェイコブ・ウィルソン様」
「……はっ」
2人はソフィアの前に片膝をついて礼をする。ソフィアの隣に国王が立つ。
「これより、2名にソフィア護衛の任を申し付ける」
と言うと、それぞれに巻物を手渡した。騎士団達は拍手で餞別を贈った。
「ソフィアちゃん」
「王妃様!」
王妃の後ろにはハンネス王子とレオン王子が。
「もう行ってしまうのね……」
「長いようで短かったような気がするよ」
「はい……寂しさはつきませんが、頑張って巡礼を成し遂げてきます」
「体には気をつけてね。ほら、レオンも」
ハンネス王子がレオン王子をソフィアの前に押し出す。
「ソフィア……お、俺!頑張って勉強して、強くなるから!だから……これ!」
レオン王子はソフィアに手作り感のある青い石の付いたペンダントを手渡した。
「ソフィアの……目の色と似ていたから……お、お守り代わりに!」
ソフィアはペンダントを受け取ると首にかけた。
「ありがとうございます!これで頑張れそうです」
ソフィアの笑顔にレオン王子は顔を真っ赤にした。その様子を国王一家は温かく見守っていた。
「では……行ってきます!」
「「「「行ってらっしゃい」」」」
ソフィアはマイルとジェイコブを連れて馬車に向かった。
「ソフィア様ぁ!」
「行ってらっしゃい!」
「また戻ってきて下さいねぇ!」
民衆の歓声を聞きながら、馬車の周りを囲むように“インクレメントム”一同が立っていた。
「すごいな……」
アーノルドは呆気に取られていた。レジーヌとネイリスは誇らしげ。
「さすが、ソフィアね」
「人望が厚くて可愛いし、賢くて可愛いし!」
「可愛い子って2回言う必要あるか?」
「「あるわよ!!」」
「お、おお……そうか……」
2人の圧に引き気味のアーノルド。それを見ていたミシェルとナギト。
「本当にあいつらここが公式の場だって忘れてねぇか?」
「(それは僕らも同じだと思うけど……)まあ、いいんじゃない?いつものことだし」
「ま、そうだな」
そこにグライ達が馬車に乗り込む。
『本当、いつも通りね』
『ええ。こんな人間達、初めてだわ』
エルブとアズルは可笑しそうに話しながら乗り込んだ。
《これから、出立すると思うと年甲斐なく心踊ってしまうわい》
〈俺たちは、森でお前達の安全を願うしか出来ないがな……〉
『寂しさもあるが、今はアレがある。もしものときは、助太刀くらい出来るかもしれぬな』
《それは頼もしいのう!》
そこにベラとフォルンがソフィア達の荷物を持ってきた。
「皆様、今日からよろしくお願い致します。ソフィア様が到着次第、出発致します」
『『は~い!』』
グライとオーヴィとスピーレは、その言葉を聞いてソフィアのいる方を見ると……レオン王子が顔を真っ赤にしながら、ソフィアにペンダントを渡しているところだった。
『《〈(あの小僧……)〉》』
グライ達がレオン王子をきつい目で見ている様子を目にした“インクレメントム”は彼らを敵に回してはいけないと悟った。
「みんな~!お待たせ!」
ソフィアが騎士達2人を連れてやって来た。
「お、そいつらがソフィアの騎士達か?」
「そうです!マイルさんとジェイコブさん」
アーノルドはソフィアの騎士をまじまじと見る。一方、その騎士がマイルとウィルソンだとわかった途端、ナギトとネイリスの表情が変わった。
「マ、マイル様……!」
「隠密部隊の……!」
2人は目を輝かせた。
「2人とも、自分の仕事。忘れてない?」
「「あ……」」
ミシェルに言われて、やっと我に帰った。
「(マイルさんもジェイコブさんも人気だね!)」
「ソフィアちゃん」
聞き覚えのある声がして振り向くと、ダグラスさんにリーリエさん、それからカズマさんがお見送りに来てくれたよ!
「皆さん!」
「本当に行ってしまうのね……」
「これから寂しくなるが……頑張ってこいよ」
「はい!ダグラスさん、リーリエさん、ギルドではお世話になりました」
寂しそうに微笑むダグラスさんとリーリエさん。
「ソフィア様」
「はい」
「短い間でしたが、俺を起こしてくれてありがとうございました。ソフィア様に会えて本当に良かった」
カズマさんはそっと私の手を取る。
「カズマさん……」
私もカズマさんに会えてよかった。なんだかカズマさんと私が似ている気がしていたの。カズマさんの家にいた精霊さん達も言ってたけど、私の能力も関係あるかもしれない……なんていうか、“魂”がこの世界以外から来た感じ……かな?
「私こそ、ありがとうございました!」
すると、隣りにフォルンがやって来て私の服の裾を引っ張る。
「ベラが……時間だって」
「うん、分かった!」
ソフィアはダグラス達に一礼して馬車に乗り込んだ。フォルンも後から乗ろうとした時、
「フォルン!」
カズマがフォルンを呼び止めた。
「……」
「ソフィアのこと、頼むよ」
カズマの言葉にフォルンは頷き、そのまま馬車に乗り込んだ。その背を見て何かに気づいたカズマは、誰にも聞こえない声で呟いた。
「行ってらっしゃい。“カリバスの子”」
「開門!」
重く錆びた扉がゆっくりと開く。ソフィア一行は心踊る気持ちを抑えながら、ゆっくり進ませるベラが先導役の馬車に身を委ねた。
「(これから何があるのか分からないけど、
楽しみ……!)」
とある森の奥──精霊達と会話している獣人が1人。
『やっと、進みだしたみたい……』
『フィリーデイ?』
『来ルノ?』
『来ルノ?』
『うん』
獣人の言葉に、精霊達は嬉しそうに飛び回る。
『楽シミ!』
『フィリーデイ楽シミ!』
『……そうだね』
強い風が吹き抜けた。獣人は風の吹き抜けた方を見て、呟く。
『早くここまでおいで……ソフィア』
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