キャンバスメモリアル

Daddy

文字の大きさ
9 / 32
出会い

第9話 3日間のできごと

しおりを挟む

――説明を受けた日の夜

シキは自分なりに話をまとめていた。
まとめながらわかったことは、いかに自分が無知であったか。また、イロの特別さ、そして自分が無力だと言うことだった。
一通り考えをめぐらせたシキは、イロの様子を見に行った。

「すまない。イロに会わせてくれ…」
「話は伺っています。同郷のシキさんですね。お入りください。」

部屋の前の警備は、ルフラから話を聞いていたようで、すんなりと部屋へと入れてくれた。

「……イロ、お前ってすごいんだな。3色持ちは世界に1人だってよ。すげー力があるかもしれないんだってさ。だから、王国騎士団が来たんだってよ。」
「――イロにとっては、目を覚まさない方がいいのかもな。……けど、俺はお前に目を覚ましてほしい。」
「大丈夫。嫌なことがあったら俺が守るから……」
「お前から色を奪ったキャンバス、必ず見つけ出してきてやる。」

シキはイロに話をしながら、自分の意思を固めた。
――イロを目覚めさせること
――キャンバスを探し出すこと。
――イロを守れるよう強くなること。

「じゃあ、行ってくる。」

シキは、イロに挨拶をして部屋から出て行った。

船に乗って2日目。
シキはルフラの前に立っていた。

「何ですか?シキ。」
「……俺を鍛えてくれ。」
「何のために?君は騎士団に入るわけじゃないでしょう?」
「お前に負けた。それじゃあ、俺はイロを守れない。」
「守る?君は何からイロを守るのですか?」
「全部だ。イロが目覚めた時、好きに生きていけるように。」
「好きに生きていいですよ。彼女に危険がないとわかったら。」
「危険がないとわかるのはいつだ?」
「さぁ…年寄りになって動けなくなってからとか?」
「イロの人生だぞ。」
「そうですね。でも、1人の人生で大勢の人生を狂わせるわけにはいきません。」

シキはルフラに殴りかかったが、またルフラの足元から空を見上げていた。
ルフラが静かに口を開いた。

「シキ、君はまず怒りを抑えることを覚えなさい。――この先、1人で行くのでしょう?心配でしたし、もともと指導をするつもりでしたよ。」
「ブル。君も一緒に行います。ついておいで。」

シキとブルはルフラについて、練習場へと向かった。

「では、ブル。手始めに私と手合わせをしましょう。色を使っても良いですよ。」

ルフラはブルの攻撃を、軽やかに避け、要所要所で軽い打撃を加えた。
もどかしくなったブルは両手を広げ、周りの海を持ち上げた――

「そこまでです。」

ルフラが、ブルに声をかけた。
そして静かに2人へと語りかけた。

「ブル、君の力は素晴らしい。だが、速さと技術が足りません。私の手が刃物だったら、貴方は既に細切れです。そして、色の使い方も大雑把ですね。海を持ち上げたことは感心ですが、繊細なコントロールを身につけなさい。貴方は港に着くまで、コップの中の水を思いのままに動かせるよう練習です。」

「シキ、君は冷静さを心がけなさい。そして、技術を身につけましょう。力と速さだけでは、技術あるものには勝てません。この2日間、私と組み手を行いましょう。」

その日、シキは数えきれないほどルフラに投げられた。
ブルはコップの水を球から立方体へと時間をかけて変えていた。

3日目、シキは、前日より投げられる回数が減った。ルフラをよく見て、組み手を行うことで次の動きを考えるようになっていた。
ブルは、コップの水を球から立方体へと変える時間が少しだけ短くなった。

3日目の夜――
シキとルフラは甲板に立っていた。

「明日の朝には、港に到着します。シキ、君は確かに強い。しかし、色がないからこそより強くならなくてはいけません。港に着いたら、セキという人物を尋ねるといい。私の名前を出したら技術を教えてくれるでしょう。」
「……わかった。ありがとう。」
「――ところで、君はこれからキャンパスを探すのでしょう?」
「何でっ…」
「そのくらいわかります。君の夢の話を聞いていましたから。残念ながら、そのような話は聞いたことはありませんが……」
「……」
「それと、イロのことは任せなさい。先日は君を焚きつけるために、あのように言いましたが、私たちは彼女の意思を尊重するつもりです。」
「わかってる。今は、俺がそばにいてもどうしようもないしな。キャンバスを見つけたら、迎えにいく。」
「わかりました。――無理はしないように。」

ルフラと別れ、シキは眠りについた。
翌日の朝、船は港に到着した――
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~

存在証明
ファンタジー
不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?! はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?! 火・金・日、投稿予定 投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

処理中です...