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蒼空なんて、、、
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僕はシャワーだけ浴びるのをやめ、湯を沸かした。湯船に浸かるのは久しぶりな気がする。普段はいつもシャワーで済ませる。だが今日のような日はたまに風呂を沸かしてゆっくりと浸かりたくなる。湯の中の小さな気泡が、僕に触れてはぱちぱちと弾ける…
祖母がなくなった時もこうしたものだ。中学生一年の時だ。僕はかなりのおばあちゃん子だった。よく遊んでもらったりもしたし、誕生日にバースデイパーティーを開いたりもした。
だが別れの時は、ある日突然訪れたあ。僕が祖母の家に行った時、何度インターホンを鳴らしても扉が開かなかった。不思議に思って、窓から家の中を見ると祖母は床にぱったりと倒れていた。急いで救急車を呼んだが、甲斐はなかった。祖母は亡くなってもう二日は経っていたらしい。
あの時はなかなか祖母を失った悲しみから立ち直れず、一週間近く部屋に引きこもってしまった。
そんな僕を見捨てず、部屋から出るように説得してくれたのは教師でもなく、親でもなく、彼女だった。
そう、蒼空だ。
「ふぅ...」
僕は溜息をつく。あんなヤツに、赤人なんかに、蒼空がついて行く訳ないって、信じて疑わなかった。でも、現実はそうじゃなかった。蒼空はアイツについて行った。どうしてなんだ、顔か、性格か、それとも只々僕に嫌気が差しただけなのか。どれなんだ、一体どれだって言うんだよ。僕は全力で風呂場の壁を殴った。壁には傷一つないが手がジンジンと痛い。
それから僕は浴槽の中のお湯を掬い、顔に浴びせ、立ち上がる。そして浴室から出ていった...
~Next day~
僕は学校に来た。確かに少し悩んだ、今日は休もうかどうか。でも一昨日誓ったばかりだ、僕はもう何者からも逃げない。全て受け止めてやるって。
それにもう蒼空なんて要らない。今までもただ僕を哀れんで一緒に居てくれてた訳だし、今の僕には不要な存在だ。
僕が教室に入ると、目の前には赤人がたっていた。そして僕の顔を見るや否や、小声で
「ふっ、選ばれたのは俺なんだよ!」
なんて言ってくる。こんなことして、一体何が面白いのだろうか。僕が要らなくなった物を手に入れただけじゃないか。捨てる紙あれば拾う神あり、とはよく言った物だ。そう思いながら、僕は赤人を押し退け、自分の席に向かう。その途中で、蒼空に、
「おはよう!サクくん!」
そう声をかけてくるが、僕は無視する。仕方ないことだ。だって、必要無い人間と話すなんて、、、。
少し悲しそうな表情を浮かべる蒼空を背後に、僕は席に着き、カバンを漁る。取り出したのは、昨日も読んでいた本。僕は、栞の挟まったページを開き、本を読み始める...
しかし普段は楽しい読書だが、今日は読んでいて何故かつまらない。それに内容が頭に入って来ない。まるで文字の羅列を見ている様な気分だ。
僕は諦めて本を閉じる。ふと時計を見る。一限目までまだ十分はある。暇つぶし程度に、周りを見渡すと、クラスメイトはみんな僕が見ると急いで目を逸らしやがる。
だが目を逸らさない奴が一人いる。
赤人だ。
彼は、最早人間なのかどうか疑いたくなるような、気味の悪いニヤけ顔を晒してくる。勿論今の僕は、そんなのに一々腹を立てたりなんて無駄な事しない。なんせ、そんな事したって一銭の得にもならないんだから。
次は、蒼空と目が合う。なにか彼女は申し訳なさそうにしているが、僕にはそんなこと関係ない。そのまま、僕の机に目を落とした...
~A little time later~
昼食の時間が来た。
何故か、赤人が僕のところに近づいてくる。そして、赤人は言う。
「本っ当にお前!デカいんだよ!態度が!昨日も言ったろ?なんで治してこねぇんだよ!」
ハァ~、どうしてこうも同じ事ばかり言えるんだ。昨日は笑えたが、二日連続となると流石に飽きる。僕は静かに返事をする。
「昨日も言ったけど、食べないの?昼飯、時間無くなるよ。
後どうせなら言う内容少しは変えたら?」
こんなやつにいちいち反応してても時間の無駄だ。もう適当にあしらって、極力関わらない様にしたい。だがそうはなってくれないのが現実だ。
「んだと、お前...」
赤人はそう言うと右手を振り上げる。
またか、ワンパターン過ぎだろ。昨日と同じ事を言ったと思ったら行動まで同じ。全く、全く、全く面白くない。この馬鹿の脳はどこまで簡略化されてるんだよ。僕は衝撃を覚悟して目を瞑る。
目を瞑って数秒が経った。しかし全く衝撃が来ない。僕は疑問に思いうっすらと目を開ける。
赤人は相も変わらず、右手を振り上げたままだ、だがその手を掴む手があった。蒼空だ。
「やめて。」
蒼空が赤人に言う。そしてついに赤人は蒼空の手を乱暴に振り払いながら、右手を下ろし、自分の席へと帰って行った。蒼空もそれに付いて行く。それからその日一日、赤人は僕に何もして来なかった。
~One week later~
あれから一週間が経った。結局あの日以降赤人や他のクラスメイトは僕に一度も近づきすらしない。こんな静かな一週間はいつぶりだろうか。その間も蒼空はアイツに尻尾を振っている。僕はと言うと最近、校内散歩が趣味になってきた。校内中を一人でぶらぶらと何も考えず歩き続けるのだ。内心、楽しくは無い。
でも、あの日以降ずっと、読書が手につかないから。
祖母がなくなった時もこうしたものだ。中学生一年の時だ。僕はかなりのおばあちゃん子だった。よく遊んでもらったりもしたし、誕生日にバースデイパーティーを開いたりもした。
だが別れの時は、ある日突然訪れたあ。僕が祖母の家に行った時、何度インターホンを鳴らしても扉が開かなかった。不思議に思って、窓から家の中を見ると祖母は床にぱったりと倒れていた。急いで救急車を呼んだが、甲斐はなかった。祖母は亡くなってもう二日は経っていたらしい。
あの時はなかなか祖母を失った悲しみから立ち直れず、一週間近く部屋に引きこもってしまった。
そんな僕を見捨てず、部屋から出るように説得してくれたのは教師でもなく、親でもなく、彼女だった。
そう、蒼空だ。
「ふぅ...」
僕は溜息をつく。あんなヤツに、赤人なんかに、蒼空がついて行く訳ないって、信じて疑わなかった。でも、現実はそうじゃなかった。蒼空はアイツについて行った。どうしてなんだ、顔か、性格か、それとも只々僕に嫌気が差しただけなのか。どれなんだ、一体どれだって言うんだよ。僕は全力で風呂場の壁を殴った。壁には傷一つないが手がジンジンと痛い。
それから僕は浴槽の中のお湯を掬い、顔に浴びせ、立ち上がる。そして浴室から出ていった...
~Next day~
僕は学校に来た。確かに少し悩んだ、今日は休もうかどうか。でも一昨日誓ったばかりだ、僕はもう何者からも逃げない。全て受け止めてやるって。
それにもう蒼空なんて要らない。今までもただ僕を哀れんで一緒に居てくれてた訳だし、今の僕には不要な存在だ。
僕が教室に入ると、目の前には赤人がたっていた。そして僕の顔を見るや否や、小声で
「ふっ、選ばれたのは俺なんだよ!」
なんて言ってくる。こんなことして、一体何が面白いのだろうか。僕が要らなくなった物を手に入れただけじゃないか。捨てる紙あれば拾う神あり、とはよく言った物だ。そう思いながら、僕は赤人を押し退け、自分の席に向かう。その途中で、蒼空に、
「おはよう!サクくん!」
そう声をかけてくるが、僕は無視する。仕方ないことだ。だって、必要無い人間と話すなんて、、、。
少し悲しそうな表情を浮かべる蒼空を背後に、僕は席に着き、カバンを漁る。取り出したのは、昨日も読んでいた本。僕は、栞の挟まったページを開き、本を読み始める...
しかし普段は楽しい読書だが、今日は読んでいて何故かつまらない。それに内容が頭に入って来ない。まるで文字の羅列を見ている様な気分だ。
僕は諦めて本を閉じる。ふと時計を見る。一限目までまだ十分はある。暇つぶし程度に、周りを見渡すと、クラスメイトはみんな僕が見ると急いで目を逸らしやがる。
だが目を逸らさない奴が一人いる。
赤人だ。
彼は、最早人間なのかどうか疑いたくなるような、気味の悪いニヤけ顔を晒してくる。勿論今の僕は、そんなのに一々腹を立てたりなんて無駄な事しない。なんせ、そんな事したって一銭の得にもならないんだから。
次は、蒼空と目が合う。なにか彼女は申し訳なさそうにしているが、僕にはそんなこと関係ない。そのまま、僕の机に目を落とした...
~A little time later~
昼食の時間が来た。
何故か、赤人が僕のところに近づいてくる。そして、赤人は言う。
「本っ当にお前!デカいんだよ!態度が!昨日も言ったろ?なんで治してこねぇんだよ!」
ハァ~、どうしてこうも同じ事ばかり言えるんだ。昨日は笑えたが、二日連続となると流石に飽きる。僕は静かに返事をする。
「昨日も言ったけど、食べないの?昼飯、時間無くなるよ。
後どうせなら言う内容少しは変えたら?」
こんなやつにいちいち反応してても時間の無駄だ。もう適当にあしらって、極力関わらない様にしたい。だがそうはなってくれないのが現実だ。
「んだと、お前...」
赤人はそう言うと右手を振り上げる。
またか、ワンパターン過ぎだろ。昨日と同じ事を言ったと思ったら行動まで同じ。全く、全く、全く面白くない。この馬鹿の脳はどこまで簡略化されてるんだよ。僕は衝撃を覚悟して目を瞑る。
目を瞑って数秒が経った。しかし全く衝撃が来ない。僕は疑問に思いうっすらと目を開ける。
赤人は相も変わらず、右手を振り上げたままだ、だがその手を掴む手があった。蒼空だ。
「やめて。」
蒼空が赤人に言う。そしてついに赤人は蒼空の手を乱暴に振り払いながら、右手を下ろし、自分の席へと帰って行った。蒼空もそれに付いて行く。それからその日一日、赤人は僕に何もして来なかった。
~One week later~
あれから一週間が経った。結局あの日以降赤人や他のクラスメイトは僕に一度も近づきすらしない。こんな静かな一週間はいつぶりだろうか。その間も蒼空はアイツに尻尾を振っている。僕はと言うと最近、校内散歩が趣味になってきた。校内中を一人でぶらぶらと何も考えず歩き続けるのだ。内心、楽しくは無い。
でも、あの日以降ずっと、読書が手につかないから。
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