Paradox world

紅 匠

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プロローグ

We decided

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 日も落ちかけた夏の夕、僕は重い足を引きずりながら、鞄を一つ肩にかけて、駅へ向かう。あいつらに蹴られた足がまだズキズキと痛む。
毎日、毎日、人を殴って蹴って、一体何が楽しいのか、そんなことを考える。でも、そんな憂鬱な日々ももう少しで終わる。そう。僕は明日、死ぬからだ。土曜日の昼。やりたい事やって、死ぬ。そんなつもりだ。

 帰宅ラッシュに巻き込まれ足止めされている僕はそんなことをぼーっと考えていた。

「やりたいこと...か...」

正直、生きる希望を失った中でやりたいことなんて全くない。でも、最後に恋人ごっこでもいいから恋愛の一つや二つしてみたかったなと、そう思った。まあ、そんなこと思ったって、絵に描いた餅だ。そんな物思いにふけていると、後ろからとんとんと肩を叩かれ、前を見ると列が進んでいた。僕は少し走り気味に、電車に乗った。

 適当な場所に座った僕は、唯一連絡が取れる友人にこうメッセージを送る。

「明日、死ぬことにした。」


直ぐに既読はついたが、それから返信が来るのには、かなり時間がかかった。

 家に着いて、スマホをつけると、

「そうか。それが君の選択なら、私は何も言わないよ」

と返ってきていた。ふと、スマホが震える。通話が来た。

「はいはい。」

自室に転がり込んだ僕は通話開始のボタンを押して、そう言う。

「誠哉くん、決めたんだね」

電話口の女性はそう、悲しそうに言う。

「ああ。もうこの世界とはおさらばするよ」

淡々と、僕は言う。

「私も...行く。誠哉くんと一緒に」

彼女は少し黙ったあと、大きな声で、そういった。

「...え?なんでだ?」

唐突の告白に、僕は素っ頓狂な声を上げた。そりゃそうだ。電話の相手がいきなり一緒に死ぬと言い出したんだ。

「だって、私ももう嫌だもん...」

声を震わせて、彼女が呟く。

「そうか。君はそれでいいのか?」

さすがに衝動で動かれるのはこっちとしても困る。だから、一応聞いておく。

「もう。決めたから。」

彼女の声に、一切の迷いはなかった。

「わかった。僕が行く場所は、明日言う。」

僕はそう言って、通話を切った。



 明日、僕はこのくそみたいな人生に、終止符を打つ。
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