Paradox world

プロローグ

そして誰もいなく...なった?

　翌日の昼過ぎ、僕は友人と一緒にビルの屋上へ来ていた。なんでビルの屋上か、それは飛び降りるため。僕らは人生に疲れた2人の男女。今日ここで腐り切った僕らの人生を終わらせようと、ここに来たのだ。


「誠哉せいや君...私達もこれでお別れなのね....」

そう、僕の目の前にいる瑞稀みずきがぼそっと、僕に問いかける。

「ああ。お別れだ。」

「この人生、ほんとに酷かった。来世は良い人なのを期待するしかないね。」

僕は冷ややかな目で彼女を見つめながらそう言ったが、彼女は笑顔だった。やはり、もう決心ってものがついているのだろう。僕はまだ死に対して恐怖感を持っているというのに。

　僕達は手を繋いで、フェンスを乗り越える。僕は少し足がすくんだが、彼女に肩を叩かれ、足に力を入れる。


「カウントダウン取ろうか」

瑞稀がそう言ってきたから、僕は首肯する。

「じゃ、10から行くよ?もちろん、君も言うんだからね?」

「10」

「9」

「8」

「7」

「6」

「5」

「4」

「3」

「2」

「1」

「ぜろ」

瑞稀がそう言ったのと同時に、僕らは飛ぶ。
ひゅうひゅうと、風を切る音が聞こえ、時折誰かの悲鳴が聞こえる。下を見ると地面が凄い勢いで近付いてくる。

「死んだ。」と、確信した時には、僕の体は地面に叩きつけられていた。横にはまだ手を繋いだままの瑞稀がいた。そして僕は最後の力を出して、

「瑞稀。ありがとう。」

そう言った。同時に、意識が落ち、世界が暗闇に包まれた。