Paradox world

一章 出会いと約束

これは夢なのだろうか

　「...くん...誠哉くん...」

　
　意識が落ちてからどれくらいたっただろうか。僕は誰かに揺らされる感覚を覚え、目が覚めた。

「うぅ...?え...僕、生きてるのか...?」

目を開けた僕の前には瑞稀がいた。

「生きてるよ。でも、一個だけ...」

「なんだ?」

僕は体を起こし、彼女に聞く。

「いや、周りに誰もいないの。ちょうどお昼なのに」

はっと、周りを見渡す。本当に、瑞稀以外に誰もいなかった。

「...え?」

思わず僕は素っ頓狂な声を上げてしまう。
これから、誰もいない世界で、どうすればいいんだよと。


「瑞稀。とりあえず、人を探そう。こういう時はだいたい人がいるからな」

「うん。わかった」

僕は彼女の手を引いて、中心街へと、走っていった。



～中心街～

　数分走って、僕らは大通りにたどり着いた。

「え...なにこれ...」

そう瑞稀が言うので、彼女の指さす方向を見る。そこには10両ないし20両ほどの車やトラックがぶつかり合い、ぐしゃぐしゃになっていた。あたりはガソリン臭く、かなり危険そうだった。

「瑞稀!ここから離れるぞ!」

また僕は彼女の手を引っ張って、走り出した....



　転がり込んだ場所は、デパートだった。店内は、何事もないように明るく、化粧品売り場では商品を並べた台が回転していた。だが、圧倒的に奇妙な点があった。そう。人が誰もいないのだ。
　僕らは奥に進む。エスカレーターがうぃんうぃんと動いている。それに乗って、二階に上がってみた。二階は女性服売場だった。客も店員も、誰も居なかった。「女性服売場か...」と考えてから、

「瑞稀。一回着替えて来な。どうせ誰もいないんだからさ、適当にもらてちゃっても良いでしょ服も破れてるし...」

そう僕は彼女に問うてみる。

「あ...うん。そうだね...着替えてくる。誠哉くんは...」

「あ、僕はそこに座ってるから。」

「OK,じゃあ、ちょっと行ってくるね。」

走り出した彼女の顔は、少し寂しそうな顔をしていた...



～Just a second...～



　彼女が走りながら戻ってきたのは彼女が着替えに行ってから20分ほどたった頃だった。綺麗な服に着替えるだけならいいが、両手には少し小さめではあるが、紙袋を持っていた。

「どう...?これで...いいよね...?」

瑞稀が顔を少し赤く染めて聞いてくる。

「うん。かわいい。」

少し棒読みだったかもしれないが、実際、とても可愛かった。心做しか、普段よりも幼く見えた。


　「誠哉くん...どうしたらいいんだろうね...」

そうエスカレータに向かって歩く中、彼女が一言、零す。

「さあ、僕にも分からない。なるようになるしかないんだろう。」

「そうだよね...」

そしてそのまま僕らはエスカレータに乗って、上の階へと上がって行った。