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「楽しそうな町だなぁ。お前もそう思うだろ?サリュー。」
「・・・今、私の頭の中は、国王への言い訳と謝罪を考えるので手一杯ですが。」
「ハッ、父上になら俺が適当言っとくって。手紙も置いてきたしよぉ。一週間早く来るぐらい別にいいだろ~?」
「・・・・・・はあ・・・ハザック殿下、くれぐれも羽目を外さないでくださいね。変装も忘れずに。いつもの剣は大きすぎますから、護身用の小刀は常にお持ちください。宿は私が選びますよ。」
「はいはいはいはい、分かったって。おっ、見ろよ!美味そうな屋台だな!ガロ!買いに行こうぜ!」
「わっ!本当ですね!見たことのない料理です!あー、お腹すいた。ハザック様、早く行きましょう!!」
「・・・・・・貴方達、私の話聞いてました?」
煌びやか、という訳ではないものの、シックで落ち着いた色味の気品ある馬車がトレードの城下町を走る。
その馬車が止まり、扉がばんっ、と勢いよく開いたと思えば、その中から黄金色の短髪の美丈夫が飛び出してきた。
マダラ模様の獣の耳、同様の模様が入った細い尻尾も印象的な豹の獣人、ハザックである。
「お忍び観光も外交ってことで!じゃ、サリュー!また後でな~!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
豹の獣人ハザックは、腹ペコの護衛騎士のガロを連れ、満面の笑みでサリューに手を振る。
御者台に座っていたもう一人の護衛騎士ルーイは、その一連の流れを見て大体の状況を把握した後、「そういう方だって分かってんだろ。諦めろって」とサリューに慰めの声を掛ける。
サリューは思わず頭を抱えた。
自由奔放とは、ハザックのためにある言葉だと、サリューは常日頃思っている。
権力を振りかざし、威張り散らす王族よりはよっぽどいいが、ここまで自由だとまた別の意味で悩ましい。
魔力も高く、剣技の才もあるハザック。
市政への関心も強く市民とも交流が多い彼は、アグリアの民から慕われている。
本来、トレードへ到着するのはあと一週間後。
「暇になったから早く出ようぜ」の一言でもうここまで着いた。
ハザックはそれまでに自分に任されていた執務を全て終わらせているので、側近のサリューはまた小言も言いづらい。
「何事もなく、国王達と合流出来るといいのですが・・・」
はあ、とため息をつき、馬車の窓から見上げた空は美しい青色。
サリューは気持ちを切り替えようと先程、ルーイが手渡してくれた小さな飴を口の中に放り込んだ。
「甘すぎますね・・・」と独り言を漏らしたが、これからの一週間のことを考えるためには必要な甘さなのかもしれない。
「ルーイ、とりあえず先に騎士団の詰所へ。お忍びとはいえ、騎士団上層部くらいには知らせておかないと。」
「了解。」
端的なルーイの返事が心地いい。
ルーイが手綱を揺らすとゆっくりと馬が歩き出す。
蹄の音が軽快なリズムに変わる頃、すでにハザックは二軒目の屋台の前に居たことをサリュー達は知る由もなかった。
「・・・今、私の頭の中は、国王への言い訳と謝罪を考えるので手一杯ですが。」
「ハッ、父上になら俺が適当言っとくって。手紙も置いてきたしよぉ。一週間早く来るぐらい別にいいだろ~?」
「・・・・・・はあ・・・ハザック殿下、くれぐれも羽目を外さないでくださいね。変装も忘れずに。いつもの剣は大きすぎますから、護身用の小刀は常にお持ちください。宿は私が選びますよ。」
「はいはいはいはい、分かったって。おっ、見ろよ!美味そうな屋台だな!ガロ!買いに行こうぜ!」
「わっ!本当ですね!見たことのない料理です!あー、お腹すいた。ハザック様、早く行きましょう!!」
「・・・・・・貴方達、私の話聞いてました?」
煌びやか、という訳ではないものの、シックで落ち着いた色味の気品ある馬車がトレードの城下町を走る。
その馬車が止まり、扉がばんっ、と勢いよく開いたと思えば、その中から黄金色の短髪の美丈夫が飛び出してきた。
マダラ模様の獣の耳、同様の模様が入った細い尻尾も印象的な豹の獣人、ハザックである。
「お忍び観光も外交ってことで!じゃ、サリュー!また後でな~!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
豹の獣人ハザックは、腹ペコの護衛騎士のガロを連れ、満面の笑みでサリューに手を振る。
御者台に座っていたもう一人の護衛騎士ルーイは、その一連の流れを見て大体の状況を把握した後、「そういう方だって分かってんだろ。諦めろって」とサリューに慰めの声を掛ける。
サリューは思わず頭を抱えた。
自由奔放とは、ハザックのためにある言葉だと、サリューは常日頃思っている。
権力を振りかざし、威張り散らす王族よりはよっぽどいいが、ここまで自由だとまた別の意味で悩ましい。
魔力も高く、剣技の才もあるハザック。
市政への関心も強く市民とも交流が多い彼は、アグリアの民から慕われている。
本来、トレードへ到着するのはあと一週間後。
「暇になったから早く出ようぜ」の一言でもうここまで着いた。
ハザックはそれまでに自分に任されていた執務を全て終わらせているので、側近のサリューはまた小言も言いづらい。
「何事もなく、国王達と合流出来るといいのですが・・・」
はあ、とため息をつき、馬車の窓から見上げた空は美しい青色。
サリューは気持ちを切り替えようと先程、ルーイが手渡してくれた小さな飴を口の中に放り込んだ。
「甘すぎますね・・・」と独り言を漏らしたが、これからの一週間のことを考えるためには必要な甘さなのかもしれない。
「ルーイ、とりあえず先に騎士団の詰所へ。お忍びとはいえ、騎士団上層部くらいには知らせておかないと。」
「了解。」
端的なルーイの返事が心地いい。
ルーイが手綱を揺らすとゆっくりと馬が歩き出す。
蹄の音が軽快なリズムに変わる頃、すでにハザックは二軒目の屋台の前に居たことをサリュー達は知る由もなかった。
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