【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O

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グレイス編

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「・・・っ、・・・く!早く!誰か魔道具をかき集めてきてくれ!」



バタバタ、と何人もの慌ただしい大きな足音で目が覚めた。



「・・・こ、こは・・・」


僕がいつも寝ていた場所の白い天井じゃない。
深緑色のテントの天蓋が目に入った。

簡易ベッドのようなところに何枚も何枚も布を重ねた形跡がある。
その上に僕一人だけが寝かされていたみたい。


「・・・ロシュさん達、ど、こ・・・?」


僕をあそこから助けてくれた二人がいなくなっていて、急に不安に襲われた。
勝手にカタカタ身体まで震え出す。
自分の身体を抱きしめるように両腕で小さくなろうとした時、首に違和感を覚えた。



「・・・首輪・・・ちゃんと、ある・・・」


これがどういう意味なのか、さっき詳しくは聞けなかったけど、とても大事な意味があるものなのだろうということは僕でも分かった。
その丈夫な革でできた首輪をゆっくりと、指でなぞる。
ザラザラしたところや、少し亀裂が入っているところ。

そして首の中央には、ロシュさんの瞳の色と同じ、黄金の石が輝いていた。



「・・・なんか安心、する。」


さっきまで勝手に震えていた身体も、首輪を触っているうちにいつの間にか止まっていた。


ロシュさんと、フォルさんは、きっと信じてもいいヒト達だ。

・・・でも、どこに行ったんだろう。

テーブルの上には、まだほのかに湯気の立つコップが置かれてあるから、居なくなってそう時間は経っていないはずだし・・・。


「・・・ここで待ってたって何も変わらない、よね。」


僕は裸足のまま立ち上がり(神殿の中ではいつも裸足だったから慣れっこ)、テントの出入り口からひょこっと顔を出した。



「・・・・・・嫌な気配・・・」



魔素を感じる時、それが目で見える人、匂いでわかる人、それぞれだけど、僕の場合は目でも見えるし、匂いもする。


そして何より、肌で感じるんだ。


だから、あそこに閉じ込められちゃったわけだけど。


でも、こんなに強い気配は久しぶりだな。
誰か直接魔物に襲われた可能性が高い。


「さっきの足音は確かこっちから・・・」



嫌な気配と、先ほどの足音がした方向に向かって、僕はパタパタ走った。

不思議なことに、途中誰にもすれ違わなかった。


でも、そこに着いてその理由がすぐにわかった。




「おいっ!魔道具を・・・くそっ、もう無いのか?!」

「こっちは血を流しすぎている・・・・・・っ、誰か止血剤をくれ!治癒魔法が使える者は・・・、フォルさんっ、早くこちらへ!」

「俺は一人しかいねぇすよっ!重症者が先っす!」




何人ものヒトが血塗れで、布の上に寝かされている。
苦しそうに呻き声をあげるヒト、もう意識がないヒト。

そしてみんな魔物に襲われた時特有の、黒い血を流していた。


魔素を大量に体内に取り込むと、ああなって、最終的には・・・・・・・・・っ、





「・・・っ!シンっ!何故ここに!?今すぐテントに戻れ!!」



僕の背後から、探していたヒトの叫ぶ声が聞こえた。

そちらの方を振り向くと、あの黄金の瞳と目が合う。
悲しそうに、いや、悔しそうに、瞳が揺れているように見えた。


そしてその腕の中には、綺麗な銀髪のヒトが口から黒い血を流して倒れて・・・・・・、


・・・アレは、まずい。




ロシュさんの叫び声で、周りにいた多くのヒトの視線が僕に集まったことも気づかないぐらい、僕はその銀髪のヒトの元へ走り出していた。



それくらい、あのヒトはもう、危ない。




走りながら僕は急いで、出せる限りの魔力を、両手に集めた。

「シン!?一体なにを・・・っ、」


《 元に、戻って 》


ロシュさんの抱えたヒトに向かって、僕が、小さくそう呟くと、集めておいた魔力が、一気に霧状に拡散する。

あそこにいた時は、毎日この浄化の光景を一人で見るのが、どこか苦しくて、辛かった。


でも今は、不思議とそうは思わなかった。


間接的じゃなく、直接的に魔素を浄化するのは久しぶりだったけど、毎日毎日あそこから浄化してたから。


これできっと、このヒトも、周りのヒトも、大丈夫。


そう思ったら、何だか気が抜けて。
ふにゃ、っとだらしない顔になっちゃった。

周りのヒトの状態も見て回らなきゃ。
よいしょ、と、立ち上がる。


「あ、」


いきなり走ったのと、急に膨大な魔力を使った反動が来たみたい。

立った瞬間、ぐらり、と視界が反転する。
そしてそのまま、僕の目の前は真っ暗になっていった。



「シンっ!!!!」


倒れていく時、何故か全てがスローモーションに見えた。

ロシュさんの驚いた顔が目に入って、僕はまた「勝手なことしてごめんなさい」と、心の中で、謝ることしかできなかった。



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