【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜

N2O

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グレイス編

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僕を縦抱きにしたまま、ロシュさんは何も言わず、ずんずん歩いていった。

途中、騎士団のヒトと何人かすれ違ったけど、みなさんロシュさんに気付くとさささっと傍に避けて「団長!お疲れ様です!」と敬礼していた。

ロシュさんは表情を変えずに「おう」とか「ああ」とか素っ気ない返事ばっかりだったけど・・・いつもそんな感じなのかな?



しばらく歩いて到着したのは、とあるテントの前。

テント、と言っても、ここに設置してある物は割とどれも大きくて、支柱となる柱が何本かあって、ソレイユの紋章?みたいなものが印字されていた。


基本的には同じサイズ、同じ色のテントばかりなんだけど・・・このテントだけ、他のテントとは違って鮮やかな赤色の天蓋。

「とっても・・・華やかな・・・テント、ですね。」

「・・・気を使わなくていい。悪趣味だろう。昔からこういう趣味の奴なんだ。」

「・・・?昔からって、」「ロシュっ!聞こえてんのよっ!」

「!!!?」


バサッと豪快に出入り口が開く。
見覚えのある、綺麗な銀髪が風に靡いた。


すらりとした体格に、輝くような銀髪が肩の位置で切り揃えられている。
そして、同じ銀色のふさっとした耳と、ロシュさんとはまたタイプの違うボリューム感のある尻尾が生えていた。

切長な目で、睫毛・・・めちゃくちゃ長い・・・!
そして、かなり印象的な燃えるような真っ赤な瞳。


着替え途中だったのか、なぜか上半身、裸。
美しすぎるから、高身長の女性かと、思ってたけど・・・男性?!
腹筋がそりゃあ、もう見事なまでにバッキバキに割れている。

見てはいけないものを見た気がして、心の中で「ひゃ~~」と叫んでいたら、クィ、と口角が上に上がる。唇の形まで綺麗だぁ・・・!


「私の可愛い、可愛い天使ちゃん。そんな奴ほっといて中にお入りなさい。」

「まず服を着ろ、ディーナ。目の毒だ。」

「んまあ~~!この私を捕まえといて失礼しちゃう!大体ねぇ、私はそこの天使ちゃんにだけ用があんのよ!あんたは自分のテントに帰ればいいじゃない!シッシッ!」

「・・・捕まえてねぇよ・・・キャンキャン騒ぐな、五月蝿ぇ・・・」


ロシュさんは、またもや心底嫌そうな顔をして、空いている方の手で僕の耳をガバッと塞ぐ。
片方の耳はそのままだし、全く聞こえなくなった訳じゃないから「ちょっとっ!おしゃべりの邪魔しないでちょうだいっ!」とロシュさんに噛みつきそうな勢いの、ディーナさんの声はバッチリ聞こえた。

ディーナさんは持っていたシャツをバサッと羽織って、渋々ボタンを閉めていた。

見た感じ、傷もないし、魔素の残りもなさそうだけど・・・

「あ、あの、身体の具合は、もう大丈夫で、すか?」

「はぁぁぁあ~~っ、何て可愛いのかしら・・・!」

「へっ?!ぼ、僕?」

「当たり前じゃないのっ!お名前はシンちゃん、だったわね?」

「は、はい、シン、です。ロシュさんとフォルさんに、助けて、いただきました。」

「もぉ、私が助けたかったわっ。・・・ロシュ、いい加減シンちゃん下ろしてちょうだい。ちゃんとお礼がしたいの。」

「・・・?」


ロシュさんはしばらく考えた後、ハァァァ、と長いため息を吐きながら、そっと僕を地面に下ろしてくれた。

すぐさまディーナさんが近寄ってきて、僕の前で華麗に片膝をつく。

・・・わあ、さっきも見た、この光景・・・!



そして、先程までの雰囲気とは全然違ったディーナさんがそこにいた。



「シン様、この度は命を救っていただき心より感謝申し上げます。」

「へ、ええっ、そ、そんな・・・」

「この御恩、決して忘れません。この命尽きるまで、貴方様への忠誠を誓います。」

そう言い終えたディーナさんは、ふふ、と僕に微笑んだ。

う、美しすぎない・・・?
女神様みたいだ・・・!


そしてディーナさんはおもむろに、自分の右耳に手を伸ばした後、その手をそのまま僕の右耳に伸ばしてきた。
ふわっと花の香りがして「匂いまで綺麗なんだなぁ」と感心していたら、僕の耳元で、パチン、と何かがはまる音がした。

「へっ?」

「私にもチャンスがあるかしら?ふふ。」

「ちゃ、んす・・・?」

そう嬉しそうに僕の右耳を触るディーナさん。気になって恐る恐る僕も自分の耳を触ってみたら、耳たぶに何かがついている。
軽く引っ張ってみたけど、全然取れない。


「・・・耳飾り・・・?」

「ええ、そうよ。燃えるような赤い石が付いた、ね。」


何とも妖艶な笑みで、嬉しそうに僕の右耳を触り続けるディーナさん。

するとそのディーナさんの手を思いっきり、バッチーーーン、とロシュさんが叩き落としたのである。

僕の背後からパキ、パキ、と不穏な音が響いてきた。


「お゛い・・・ディーナ。何をしてんだ、てめぇ・・・」

「ロ、ロシュさん!?・・・ええっ!床が凍ってる?!」

「何すんのよ!いったいわねぇ・・・!」


今度こそ、本当にロシュさんの周りに雪吹雪が舞った。

突然吹き荒れる風と、ロシュさんの怒りを体現したかのように、ものすごい勢いで舞い上がる雪。
そして床がパキパキ、と放射線状に凍りついていった。僕の周りだけ、まーるく取り残して。


近くのテントの中にいた(どうやら覗き見していた)団員さん達が大慌てだ。



「・・・俺の番に手ぇ出したな・・・!殺す・・・!」

「なぁに言ってんの。まだ正式な番じゃないでしょう?フォルからちゃーんと聞いてるんだから。チャンスは平等にあるべきよぉ?」

「つ、つがい、って・・・ええっ!?」










騒ぎを聞きつけ、やってきたフォルさんが「あれでもうちの団長と副団長なんすよ・・・」と遠い目で僕に説明してくれたのは、その辺のテントが見事なまでに吹き飛んだあとで。


僕はひたすら、近くにいた団員さん達に平謝りするしかなかった。
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