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グレイス編
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しおりを挟む「あ、目が覚めたっすか?」
「・・・?は、い・・・・・・?」
目を開けると、あのテントの天蓋と、優しいグレーの瞳が見えた。
よしよし、と僕の頭を撫でる手は、ロシュさんの手より小さい。
なんか頭がぼーっ、とする。
そもそも何で僕こんな外が明るい時間に寝て・・・・・・・・・
「ああっ!!!?」
「うぉっ!!何すか?!」
「あ、の!さっきのヒト達はぶ」「はいはいはいはい、起きたね。いきなり興奮しないっすよ。シン君がまた倒れたら俺が団長に怒られるっす。」
「・・・!?フォル、さんが怒ら、れちゃう・・・・・・?!し、静かにします・・・」
「・・・ふふふ。そうっすよ、静かにしてください。」
こくこく、と首を縦に振ると、フォルさんは優しい顔で満足そうに笑った。
ここはさっきまで、僕が寝ていたテントの中だ。背中の下にはさっきよりも敷かれた布が増えている気がする。ふかふかだもん。
「あ、あの、さっき倒れてたヒト達は・・・」
「ふふ、小声になってる。ほっんと、可愛すぎるっすね・・・」
「えっ?」「何でもないっすよ。」
「ええっと、さっきの奴らのことだったすか?みんな元気すぎるくらい元気になったっすよ。」
「・・・・・・っ、よかった、」
「よくないぞ。シン。」
「へあ?」
何やら不機嫌そうな低ーーーい声がした方へゆっくり視線を向ける。
テントの出入り口のところに仁王立ちのロシュさん登場。
魔力は感じないけど、何か背後に雪吹雪が見える気がする。
間違いなく怒ってる。
めちゃくちゃに怒ってる。
な、なんで?なんで、怒ってるの?
フォルさんの「おぉ・・・怖。」って声まで聞こえて、僕は被ってた布を少しだけ引き上げて顔を半分隠した。
「ロ、シュさん・・・・・・おは、ようござい・・・ます・・・・・・?」
「・・・ああ、おはよう。まだ夕飯前だがな。」
「あ、あの、勝手に浄化した、の、怒って・・・ますか?」
「・・・怒ってない。」
「僕・・・もしかして、余計なこと、しま、したか?」
「・・・・・・シン、少し起き上がれるか?」
「は、はいっ、」
僕は慌てて身体を起こす。
頭もクラクラしないし、痛いところもない。
きっと、フォルさんが回復魔法でもかけてくれたんだろうな。
あとでちゃんとお礼言わないと。
自分の身体を確認していたら、いつの間にか自分の上に影ができていた。
顔を上げると、そこには大変ご立派な体格のロシュさんが僕のことを見下ろしている。背後の雪吹雪(見えない)に怖くなって「ひゃあ・・・」と思わず声が漏れた。
「シン、まずは君に礼を言わなければ。・・・大切な仲間を助けてくれてありがとう。」
「・・・え?」
見上げていたはずのロシュさんは、いつの間にかベッドに座っている僕の前に片膝をついていた。
まるで本に出てくる王子様みたい。
そして、ぽかん、と固まっている僕の左手をとると、手の甲に触れるだけのキスをする。
まさに流れるような、その一連の出来事に、僕は頭の中が大混乱だった。
「しかし、だ。シン、倒れるほどの魔力を使うなんてことは今後するな。」
「えっ、へ?き、す?え、?ええ?!」
「・・・分かったか?」
「は、は、はいっ、もうしません!」
「分かればよろしい。・・・シンが無事で本当に良かった。」
そう言うとロシュさんは立ち上がり、ひょいっと僕を軽々と抱き上げた。
立ったまま抱っこされると視線が急に高くなってちょっと怖い。ぎゅ、とロシュさんの腕の隊服を掴む。
「さて、シン。心底面倒だが、どーーーしてもお前に会いたいと騒ぎ出す奴がいる。一緒に来てくれ。」
「?は、はいっ。分かりました。」
「シン君、食べられないようにね。」
「????!」
「そんなことさせるか。フォル。お前夕飯抜きにするぞ。」
「ええええーー??!今日俺すんげぇ働いたっすよ!?そりゃないっす!!」
「あ、あのっ、フォルさん!回復魔法、あ、ありがとうござい、むぐっ」
「さ、シン行くぞ。」
「・・・男の嫉妬怖ぁ。いってらっしゃいっす、シン君、団長。」
僕の口は、大きくてゴツゴツしたロシュさんの手で覆われていて、お礼を最後まで言えなかった。
僕を抱っこしたまま、ロシュさんはテントを出ると「あいつに会わせるの面倒くせぇな・・・」と、綺麗な金髪をぐしゃぐしゃにしながら頭を掻いていた。
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