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ああ・・・見覚えのある素晴らしい彫刻が施された天井。

昨日見たよ。
俺、昨日見たってば。


城の中でも担がれたまま歩かれて、めちゃくちゃ恥ずかしかった。
すれ違う騎士とか、文官、メイドさんが「はわわ」ってなってたんだよ。そうですよね、「はわわ」ってなりますよね。

おい、サフィー。
俺のこと、丸太と勘違いしてないか?
サフィーがゴツデカすぎるだけで、俺も男なんだけどなー!



で、今、これまた見覚えのある体勢。
俺の足の間には、太い筋肉質な足。
片手で軽々と固定された両手。



顔と顔の距離、ココの実、約三つ分!!!




「お前さ!この部屋に入ると押し倒さなきゃ死ぬ病気かなんかか!?どけ!!無駄にでかい!!」

「ジェハに危機感がないから怒ってるんだ。」

「押し倒してる本人がそれ言う?!!」

「俺はいいの。」

「よくねぇぇぇぇえーーー!!!!」



リファが世話になった騎士さんが怪我してたから、つい力を使ってしまった。それがサフィーの怒り(不貞腐れ)スイッチを押してしまったらしい。
別に良くないか?ちょっと使っただけだし(リファのこと言えない)。


「ち、力使ったのは、そのー・・・」
「違う。そこじゃない。」

「・・・・・・???」

「そういうかわいい顔をすぐするのがダメだ。」

「はっ、はああ?!そんな顔してない!!」

「ジェハ。よく聞け。」

「イデッ???!!!」


ぐん、っと顔が近づいて、おでこに"ゴツン"とサフィーのおでこがくっついた。
おお・・・、その目で睨まれると、コ、コワイ・・・!!


「な、なっ、んだよ!?」

「ジェハはこの世で一番かわいいし、綺麗だ。」

「・・・・・・は?・・・はああああ?」

「それを自覚して、控えろ。」

「ば、ば、馬鹿なの!??お前、皇子なんだから、今までいっっっぱい綺麗な女も男も見てきただろうが!!!?」

「ジェハ以外の人間をそういう目で見てないから分からない。」

「そういう目って何ぃぃい!!!?」



こいつ、何。
超・超・超真剣な顔で、何言い始めたの?




顔に熱が集まるのが早い!!
あああああ!!チョロすぎるぞ、俺ぇぇえ~~~!




帽子もない。(部屋入って早々に投げ捨てられた)
手で覆えない。(力強すぎ)
顔動かせない。(片手で顎ホールド)



つまり、逃げられない!!!




「涙目もかわいい。」

「~~っ、お、れは!恥ずかしいんだよぉ・・・っ、」

「うん。かわいい。好きだ、ジェハ。」

「ううう~・・・、何で、お前は、そんな・・・嬉しそうなんだ・・・」

「ジェハが近くにいるだけで、嬉しい。」



なんでそんなに強く、真っ直ぐ、言い切れるんだろう。
俺たち、昨日会ったばっかりだぞ。
結婚だって、皇様が勝手に決めたんじゃないのかよ。


昨日の帰り道、リファに聞いたんだぞ。
お前、他の国の王族から、めちゃくちゃ求婚されてきたらしいじゃん。
断っていいのかよ。なんで俺なんだよ。


ぐるぐる、ぐるぐる、考えたけど、さっぱりわからない。




顔を固定するために顎をホールドしていたサフィーの手が、ゆっくりと上に移動していき、頭を撫でる。

小さな子どもをあやすみたいに。
ふわりふわりと頭を撫でるサフィーの顔は、とても幸せそうに見える。







何で。
何でだろう。
分からない。
昨日会ったばかりなのに。



何で。
どうして。



こんなに俺まで嬉しくて、胸がいっぱいになるんだろう。



「お前、マジで何者だよ。」

「ジェハを愛してやまない男だが。」

「・・・俺、今、絶対変な顔してる。」

「いつもの顔だけど。」

「急に馬鹿にされた!!!」

「・・・ふ、ふはっ、はははっ、」

「~~っ、わ、らうなってぇ・・・」



恥ずかしさで溜まった涙が、目尻を伝う。


サフィーはそれに気づくと、指で俺の涙を拭ってくれた。
「舐めたらまた目開けたまま寝るもんな」と意地悪な顔で呟く姿が、俺の心臓を刺激する。



それがたまらなくむず痒くて、ぎゅっと歯を食いしばっていると、いきなり起き上がったサフィー。

呆気に取られている間に、胡座をかいた膝の上に乗せられ、ぎゅうっと抱きしめられた。

これは、これで、恥ずかしい。
身じろぎをして逃げようとすると「じっとしろ」と耳元で囁かれ、俺は更にカァっと顔が熱くなる。


サフィーは黙ったまま、俺の少し長い前髪をかきあげる。
髪の付け根あたりを、ジィーっと眺めた後、手を離し、また俺を強く抱きしめた。



「・・・サフィー・・・?」

「俺は絶対・・・ジェハを守る。誰にも負けない。だから俺を選べ。じゃないと、許さん。」


顔は見えない。
でもなんとなく、わかる。

サフィー、お前。



また、泣きそうな顔してんだろ。


「泣くな、筋肉馬鹿。」

「泣いてない。」

「お前に敵う奴なかなかいないと思うけど。」

「訂正しろ。"一人もいない"だ。」

「・・・すげぇ自信。」

「本当のことだ。」

「・・・ふふっ、ふふ、」

「笑うな。」

「サフィーだって、いつも笑うじゃん。」

「俺はいいんだ。」



何だよ、その理屈。
でもそれがサフィーらしいな。



リファと合流する夕暮れまで、後少し。
サフィーはまた俺を抱きしめたまま寝転んで、何も言わずにただ俺の背中を撫でていた。
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