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トーイ兄に借りた焦茶の馬。
毎日のように山間を走らせてるから、乗りやすいと言われて、迷わず借りた。
一人じゃ心配だからと、リファを同行させるあたり、俺よりもリファの方がしっかり者だと判断されている。
それに関しては納得いかないけど、さっさと許可が欲しかったから、俺は何も言わないでおいた。
「ジェハ、ちゃんと息してる?」
「してる。」
「・・・どうだか。」
俺の方が体が小さいから前。
背後からはリファのため息が聞こえた。
早く。
もっと、早く。
あと少しで帝国だ。
『・・・ジェハ、怖くないか?』
ぎゅうっと前輪を握る俺の手に、あのゴツゴツした大きな手が重なった時のことを思い出す。
「怖くねぇわ。」
「?突然何言ってんの。ジェハの顔が怖いんだけど。」
「・・・・・・ごめん。」
「ほら。私に謝るところも怖い。落ち着きなよ。」
「・・・おう。」
心臓がバクバクとうるさい。
でもこれは、嬉しかったり、恥ずかしかったり。最近感じていたものとまた違った種類だ。
森から抜けると、少し先に帝国の街の入り口が見える。
「騎士団の詰め所ね。」
「うん。」
リファの問いかけに、またぎゅっと前輪を握る。
この目で、あいつの状態を確認しないと。
事の発端は、一時間前に遡る。
----------------
「傷薬を騎士に渡したのね。」
サフィーが帝国に戻って一週間。
庭の草むしりをしていると、足に筒をくくりつけられた大きな鳥が飛んできた。
前に見たことがある。
あれは帝国からの連絡用伝書鳥だ。
鳥の姿を確認してすぐ母上に呼ばれ、第一声がそれだった。
「別にいいじゃん。色々・・・世話になったからお礼に渡したんだ。あ、許可はもらって外に出たよ?俺の力も混ぜてるけどあれの原料は薬草だし。」
「まだ手元にあるの?」
「?うん。」
「今から届けてきなさい。」
「・・・ん?今から?俺が直接持っていくの?外に出て?」
母上がそんなこと言うの初めてだから、びっくりして近くにいたリファを見る。
リファも俺と同じような顔をしていて、持っているコップが傾き、ぼたぼたお茶がこぼれていた。
「傷薬を全て使い切る事態が起きたみたいだからね。」
とても落ち着いた、静かな声だった。
さっきまでカンカン照りの空の下、草をむしっていた。暑くて、暑くて、汗がだらだら垂れてきて、死ぬほど暑かったのに、手足からすっと熱が消えていく。
「誰が、怪我したの・・・?」
「騎士団よ。」
「・・・・・・行く。」
「そういえば、新月は明後日ね。」
「・・・いってきます。」
急いでカバンに薬瓶を詰めて、父上から許可の札を貰う。
婆様の力が込められた札はいつ見てもちょっと不気味な気配がする。
『気をつけてね』と微笑む母上が、一体どういう心境だったのか分からない。
でも俺の頭の中はあいつのことでいっぱいで、飛び出すように家を出た。
毎日のように山間を走らせてるから、乗りやすいと言われて、迷わず借りた。
一人じゃ心配だからと、リファを同行させるあたり、俺よりもリファの方がしっかり者だと判断されている。
それに関しては納得いかないけど、さっさと許可が欲しかったから、俺は何も言わないでおいた。
「ジェハ、ちゃんと息してる?」
「してる。」
「・・・どうだか。」
俺の方が体が小さいから前。
背後からはリファのため息が聞こえた。
早く。
もっと、早く。
あと少しで帝国だ。
『・・・ジェハ、怖くないか?』
ぎゅうっと前輪を握る俺の手に、あのゴツゴツした大きな手が重なった時のことを思い出す。
「怖くねぇわ。」
「?突然何言ってんの。ジェハの顔が怖いんだけど。」
「・・・・・・ごめん。」
「ほら。私に謝るところも怖い。落ち着きなよ。」
「・・・おう。」
心臓がバクバクとうるさい。
でもこれは、嬉しかったり、恥ずかしかったり。最近感じていたものとまた違った種類だ。
森から抜けると、少し先に帝国の街の入り口が見える。
「騎士団の詰め所ね。」
「うん。」
リファの問いかけに、またぎゅっと前輪を握る。
この目で、あいつの状態を確認しないと。
事の発端は、一時間前に遡る。
----------------
「傷薬を騎士に渡したのね。」
サフィーが帝国に戻って一週間。
庭の草むしりをしていると、足に筒をくくりつけられた大きな鳥が飛んできた。
前に見たことがある。
あれは帝国からの連絡用伝書鳥だ。
鳥の姿を確認してすぐ母上に呼ばれ、第一声がそれだった。
「別にいいじゃん。色々・・・世話になったからお礼に渡したんだ。あ、許可はもらって外に出たよ?俺の力も混ぜてるけどあれの原料は薬草だし。」
「まだ手元にあるの?」
「?うん。」
「今から届けてきなさい。」
「・・・ん?今から?俺が直接持っていくの?外に出て?」
母上がそんなこと言うの初めてだから、びっくりして近くにいたリファを見る。
リファも俺と同じような顔をしていて、持っているコップが傾き、ぼたぼたお茶がこぼれていた。
「傷薬を全て使い切る事態が起きたみたいだからね。」
とても落ち着いた、静かな声だった。
さっきまでカンカン照りの空の下、草をむしっていた。暑くて、暑くて、汗がだらだら垂れてきて、死ぬほど暑かったのに、手足からすっと熱が消えていく。
「誰が、怪我したの・・・?」
「騎士団よ。」
「・・・・・・行く。」
「そういえば、新月は明後日ね。」
「・・・いってきます。」
急いでカバンに薬瓶を詰めて、父上から許可の札を貰う。
婆様の力が込められた札はいつ見てもちょっと不気味な気配がする。
『気をつけてね』と微笑む母上が、一体どういう心境だったのか分からない。
でも俺の頭の中はあいつのことでいっぱいで、飛び出すように家を出た。
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