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「お、お待ちください!ラファド様!とりあえずはこちらの応接間をお使いください・・・って、全っ然聞いてませんね?!」
ラズワルドの叫び声が背後から聞こえる。
王家の紋章入りの馬車が到着した直後、ラファドは馬車からではなく、自分の愛馬から華麗に降りると、カツカツと足音を鳴らし、リーシュの前まで歩いてきた。
そして無造作にリーシュの手を取ると、そのまま屋敷の中へ自ら入っていったのである。
ガーディナーとラズワルドが止めようとしたが、第3王子とは言え王族だ。
凄まじい威圧感で圧倒し「ついてくるな。」と言い放つと、リーシュ本人に部屋まで案内させたのである。
リーシュはラファドから手を引かれ、心臓がばくばくと激しく鳴っていた。
部屋に入るや否やラファドはリーシュと向かい合い、そのまま力の限り抱きしめた。
戸惑いを隠せないリーシュだったが、ラファドが力を緩める事はなかった。
「会いたかった、リーシュ。」
消え入りそうな声でラファドはそう呟いた。
リーシュからはラファドの顔は見えない。
リーシュの首元に顔を埋め、彼は震えているようだった。
これまでラファドから抱きしめられたことなんて一度もなかった。
頭をたまに撫でられるだけ。
それだけでも嬉しかったのに。
リーシュはもう我慢できなかった。
「・・・ぐすっ、うっ、ラファ、ド様、ごめ・・・ごめ、んなさい・・・」
リーシュの瞳から涙が次から次へと溢れてくる。
でも"あの時"の涙とは違うことを彼はよく分かっていた。
安心したような、ホッとしたような。温かい涙だった。
泣き続けるリーシュの背中をとん、とん、と子どもをあやすような手つきで撫でるのはラファド。その手つきはリーシュの心の澱みを洗い流すようだった。
「君に誤解を与えるような行動をした。ちゃんと説明をする。だが、一つだけ聞かせてくれ。」
「・・・?は、はい。」
「俺の側にいるのは・・・嫌か?」
真剣な顔だった。
それでいて、とても悲しそうだった。
そんな顔しないでほしい。
微笑んでほしい。
「ぼ、僕は、あのっ・・・」
「ああ。」
「自分の中で・・・葛藤があって、ラファド様に合わせる顔がなくて・・・情けないことに、逃げてしまったのです。」
「それで?」
「・・・僕は、ラファド様の側に居たい、です。」
リーシュは涙を袖でゴシゴシと拭う。
ラファドを見る黒い瞳は、真っ直ぐだった。
ラファドはポケットからハンカチを取り出すと、リーシュの目元にそっと当て、泣きそうな顔で笑った。
「・・・ありがとう、リーシュ。」
「何でも聞いてくれ」とラファドは言った。
リーシュは勇気を振り絞ると、あの耳飾りのことやハンナのことを尋ねた。
リーシュは緊張で話が途切れ途切れになってしまったが、ラファドはそんなリーシュの話を最後まで静かに聞いていた。
リーシュの話が終わり、ラファドがそれに答えようとしたまさにその時。
部屋の扉が無遠慮に、バーーンと開いた。
扉の向こうには、あの時ガゼボで見た黒くて美しい長い髪、そして金色の瞳を持ったハンナが立っていた。
さすがにこれにはリーシュもラファドも驚き、固まった。
仮にも貴族のご令嬢がノックもせずに部屋に乗り込んできたのだから当然である。
3人が何も言わない中、そのハンナの後ろから第二王子であるジョシュアがひょこっと顔を出したもんだから、リーシュの喉から「ひゅ」っと変な音が鳴る。
「じゃ、お邪魔しまぁす。ハンナもそんなところに突っ立ってないで一緒に座ろう?ほら、こっち。」
ジョシュアが動かないハンナの手を引き、リーシュとラファドが座るソファの方へ移動する。
そしてちょっとした席替えが行われた。
リーシュとラファドの向かいには、ジョシュアとハンナが座った。
突然の四者面談が始まったのである。
ラズワルドの叫び声が背後から聞こえる。
王家の紋章入りの馬車が到着した直後、ラファドは馬車からではなく、自分の愛馬から華麗に降りると、カツカツと足音を鳴らし、リーシュの前まで歩いてきた。
そして無造作にリーシュの手を取ると、そのまま屋敷の中へ自ら入っていったのである。
ガーディナーとラズワルドが止めようとしたが、第3王子とは言え王族だ。
凄まじい威圧感で圧倒し「ついてくるな。」と言い放つと、リーシュ本人に部屋まで案内させたのである。
リーシュはラファドから手を引かれ、心臓がばくばくと激しく鳴っていた。
部屋に入るや否やラファドはリーシュと向かい合い、そのまま力の限り抱きしめた。
戸惑いを隠せないリーシュだったが、ラファドが力を緩める事はなかった。
「会いたかった、リーシュ。」
消え入りそうな声でラファドはそう呟いた。
リーシュからはラファドの顔は見えない。
リーシュの首元に顔を埋め、彼は震えているようだった。
これまでラファドから抱きしめられたことなんて一度もなかった。
頭をたまに撫でられるだけ。
それだけでも嬉しかったのに。
リーシュはもう我慢できなかった。
「・・・ぐすっ、うっ、ラファ、ド様、ごめ・・・ごめ、んなさい・・・」
リーシュの瞳から涙が次から次へと溢れてくる。
でも"あの時"の涙とは違うことを彼はよく分かっていた。
安心したような、ホッとしたような。温かい涙だった。
泣き続けるリーシュの背中をとん、とん、と子どもをあやすような手つきで撫でるのはラファド。その手つきはリーシュの心の澱みを洗い流すようだった。
「君に誤解を与えるような行動をした。ちゃんと説明をする。だが、一つだけ聞かせてくれ。」
「・・・?は、はい。」
「俺の側にいるのは・・・嫌か?」
真剣な顔だった。
それでいて、とても悲しそうだった。
そんな顔しないでほしい。
微笑んでほしい。
「ぼ、僕は、あのっ・・・」
「ああ。」
「自分の中で・・・葛藤があって、ラファド様に合わせる顔がなくて・・・情けないことに、逃げてしまったのです。」
「それで?」
「・・・僕は、ラファド様の側に居たい、です。」
リーシュは涙を袖でゴシゴシと拭う。
ラファドを見る黒い瞳は、真っ直ぐだった。
ラファドはポケットからハンカチを取り出すと、リーシュの目元にそっと当て、泣きそうな顔で笑った。
「・・・ありがとう、リーシュ。」
「何でも聞いてくれ」とラファドは言った。
リーシュは勇気を振り絞ると、あの耳飾りのことやハンナのことを尋ねた。
リーシュは緊張で話が途切れ途切れになってしまったが、ラファドはそんなリーシュの話を最後まで静かに聞いていた。
リーシュの話が終わり、ラファドがそれに答えようとしたまさにその時。
部屋の扉が無遠慮に、バーーンと開いた。
扉の向こうには、あの時ガゼボで見た黒くて美しい長い髪、そして金色の瞳を持ったハンナが立っていた。
さすがにこれにはリーシュもラファドも驚き、固まった。
仮にも貴族のご令嬢がノックもせずに部屋に乗り込んできたのだから当然である。
3人が何も言わない中、そのハンナの後ろから第二王子であるジョシュアがひょこっと顔を出したもんだから、リーシュの喉から「ひゅ」っと変な音が鳴る。
「じゃ、お邪魔しまぁす。ハンナもそんなところに突っ立ってないで一緒に座ろう?ほら、こっち。」
ジョシュアが動かないハンナの手を引き、リーシュとラファドが座るソファの方へ移動する。
そしてちょっとした席替えが行われた。
リーシュとラファドの向かいには、ジョシュアとハンナが座った。
突然の四者面談が始まったのである。
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