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「リーシュくん、突然ごめんねぇ。」
「い、いえ!遠路遥々お越しいただいて・・・」
「ハンナも行きたいって言うもんだから、馬車で同行させてもらったんだ。ラファドったら着いた途端、闘牛みたいに突っ込んで行っちゃったでしょ。あはは、びっくりしたよ。」
「・・・・・・っ?!」
王子にしてはえらくふわふわした話し方。
しかしこのジョシュア、薬学と魔法具開発と治癒魔法の天才なのだ。実はかなりの切れ者。
そしてジョシュアの言葉に、リーシュの顔はみるみるうちに青ざめていく。
「も、も、申し訳ございません!わ、私が勝手な行動をしたばっかりに!」
「ううん。ぜーんぜん気にしなくていいんだよぉ?」
「ジョシュア様とそれにハンナ様まで・・・っ、とんでもないことを・・・!申し訳ございません!どのようなお詫びをすれば・・・」
リーシュの全身から汗が噴き出る。そんな大事になっているとは、思いもしなかったからだ。
気絶しそうな勢いで慌てるリーシュとは対照的に、ラファドは大きなため息をついてリーシュの背中を撫でた。
「兄上とハンナ様もどうしてもと。リーシュが気にする事は一切ない。」
「で、でもっ、」
「執務は済ませてきてる。本当に大丈夫だ。」
「うんうん!ラファドがリーシュくんに変な勘違いさせちゃったのがいけないんだからさ。」
「え、ええ?!」
「ハンナはハンナでヘソ曲げちゃうし。ところでねぇ、ハンナ。憧れのリーシュくん、目の前にいるのになんでしゃべらないのぉ?」
ヘラヘラしながら、ジョシュアは言った。
聞き間違いではなければ"憧れのリーシュ"と。
リーシュは益々訳がわからない。
だがよく見れば、目の前にいるのにハンナは、噂に聞く男勝りな態度・・・・・・では全くない。
それどころか頬を赤くさせ、恥ずかしそうにもじもじしてるようにさえ見える。
「もうっ!余計なこと言わないで!ジョシュア様!」
「あは。照れてる。」
「わ、私だって、緊張くらいするのですっ!あ、あの"黒の君"ですよ?!幼き頃より魔法学の論文を書き上げる神童!なかなかお目に掛かれず、今日こうしてようやく・・・!なのに、もう!あなた方の反応がおかしいのです!」
「・・・・・・?!」
なるほど。リーシュは理解した。
どうやらハンナは自分のことを以前から知っているらしい。
確かにリーシュは魔法学の論文をラズワルドの勧めもあり、学会で発表したことがある。何なら大人相手に、実技を交えた講義だって実施した。
そこまで評価していただいていたとはありがたいなぁ、今後も頑張ろう・・・なんて。リーシュが脳内で勝手に感謝していた時、ハンナが真っ直ぐリーシュを見て、姿勢を正した。
思わずリーシュも背中がピンと伸びる。
「ハンナ・バベルクでございます。噂は予々、論文も全て読ませていただいております。」
「リ、リーシュ・ギデオンです。それは・・・ありがとうございます・・・」
「・・・っ!コホン。こ、この度はリーシュ様に何やら誤解をさせてしまい、このような事態を招いてしまいましたこと、心よりお詫び申し上げます。申し訳ございません。」
「い!!いえ、それは僕が勝手に、」
「ラファド様とはこれっぽっちも、リーシュ様が考えていらっしゃるようなことはしておりませんので、安心してくださいまし。」
ハンナはそう言うと今度は貴族らしい完璧な礼をした。その後、チラッとラファドの方を見ると、何やら意味ありげに口角を少し上げて笑う。
「あの耳飾りはリーシュ様用ですの。何度も試作しておりましたのよ。」
「・・・え?」
突然とんでもない発言だ。
リーシュは驚きに耐えられず、思わず声を漏らしてしまい、慌てて口を両手で押さえた。
「ラファド様は宝石に魔力を込めるのに大変苦戦していらっしゃいましてね・・・どれだけ魔力を込めようとしていたのかしら、ふふ。」
「ハンナ様・・・それは伏せておいて欲しいと、」
「それにデザインもどうやらアカデミー時代の"ご学友"からお許しが出なかったとか。そうでございましたよね、ラファド様。」
「・・・全部言うつもりですね。」
「私はただお手伝いをしておりましたの。この黒髪で。不出来な試作品をリーシュ様の黒髪に合わせるのはお恥ずかしかったのでしょう。ねえ?」
フンっと鼻を鳴らしそうな勢いでハンナが捲し立てた。少し笑っているようにも見える。
それにアカデミー時代のご学友・・・恐らくラズワルドのことだろうとリーシュは察した。
鬱陶しいほどに口を挟んだのであろう。
弟のリーシュからしても容易く想像ができた。
事の顛末をハンナから聞いたリーシュの耳がじわじわと赤くなっていく。
ようやく自分の勘違いに気がついたようだ。
「ハンナもだぁいすきなリーシュくんにやっと会えたのにさ、泣かせた上に逃げられちゃったから慌てたんだよねぇ。」
「ちょっ、ちょっと!ジョシュア様!?余計なことを言わないでってあれ程お願いしましたのに!?」
「さあ、さあ。誤解も解けたし、私たちはガーディナー殿のところに戻ろうか。それじゃあ、リーシュくん。王都に戻ってきたらハンナとも仲良くしてあげてねぇ。ラファドは、リーシュくんに変なことしちゃダメだよ。あはは。」
「兄上・・・・・・」
あはは、と笑いながらハンナの手をひき、部屋から出ていった2人。
残されたリーシュとラファドの間には、何とも言えない空気が漂ったのは言うまでもない。
「い、いえ!遠路遥々お越しいただいて・・・」
「ハンナも行きたいって言うもんだから、馬車で同行させてもらったんだ。ラファドったら着いた途端、闘牛みたいに突っ込んで行っちゃったでしょ。あはは、びっくりしたよ。」
「・・・・・・っ?!」
王子にしてはえらくふわふわした話し方。
しかしこのジョシュア、薬学と魔法具開発と治癒魔法の天才なのだ。実はかなりの切れ者。
そしてジョシュアの言葉に、リーシュの顔はみるみるうちに青ざめていく。
「も、も、申し訳ございません!わ、私が勝手な行動をしたばっかりに!」
「ううん。ぜーんぜん気にしなくていいんだよぉ?」
「ジョシュア様とそれにハンナ様まで・・・っ、とんでもないことを・・・!申し訳ございません!どのようなお詫びをすれば・・・」
リーシュの全身から汗が噴き出る。そんな大事になっているとは、思いもしなかったからだ。
気絶しそうな勢いで慌てるリーシュとは対照的に、ラファドは大きなため息をついてリーシュの背中を撫でた。
「兄上とハンナ様もどうしてもと。リーシュが気にする事は一切ない。」
「で、でもっ、」
「執務は済ませてきてる。本当に大丈夫だ。」
「うんうん!ラファドがリーシュくんに変な勘違いさせちゃったのがいけないんだからさ。」
「え、ええ?!」
「ハンナはハンナでヘソ曲げちゃうし。ところでねぇ、ハンナ。憧れのリーシュくん、目の前にいるのになんでしゃべらないのぉ?」
ヘラヘラしながら、ジョシュアは言った。
聞き間違いではなければ"憧れのリーシュ"と。
リーシュは益々訳がわからない。
だがよく見れば、目の前にいるのにハンナは、噂に聞く男勝りな態度・・・・・・では全くない。
それどころか頬を赤くさせ、恥ずかしそうにもじもじしてるようにさえ見える。
「もうっ!余計なこと言わないで!ジョシュア様!」
「あは。照れてる。」
「わ、私だって、緊張くらいするのですっ!あ、あの"黒の君"ですよ?!幼き頃より魔法学の論文を書き上げる神童!なかなかお目に掛かれず、今日こうしてようやく・・・!なのに、もう!あなた方の反応がおかしいのです!」
「・・・・・・?!」
なるほど。リーシュは理解した。
どうやらハンナは自分のことを以前から知っているらしい。
確かにリーシュは魔法学の論文をラズワルドの勧めもあり、学会で発表したことがある。何なら大人相手に、実技を交えた講義だって実施した。
そこまで評価していただいていたとはありがたいなぁ、今後も頑張ろう・・・なんて。リーシュが脳内で勝手に感謝していた時、ハンナが真っ直ぐリーシュを見て、姿勢を正した。
思わずリーシュも背中がピンと伸びる。
「ハンナ・バベルクでございます。噂は予々、論文も全て読ませていただいております。」
「リ、リーシュ・ギデオンです。それは・・・ありがとうございます・・・」
「・・・っ!コホン。こ、この度はリーシュ様に何やら誤解をさせてしまい、このような事態を招いてしまいましたこと、心よりお詫び申し上げます。申し訳ございません。」
「い!!いえ、それは僕が勝手に、」
「ラファド様とはこれっぽっちも、リーシュ様が考えていらっしゃるようなことはしておりませんので、安心してくださいまし。」
ハンナはそう言うと今度は貴族らしい完璧な礼をした。その後、チラッとラファドの方を見ると、何やら意味ありげに口角を少し上げて笑う。
「あの耳飾りはリーシュ様用ですの。何度も試作しておりましたのよ。」
「・・・え?」
突然とんでもない発言だ。
リーシュは驚きに耐えられず、思わず声を漏らしてしまい、慌てて口を両手で押さえた。
「ラファド様は宝石に魔力を込めるのに大変苦戦していらっしゃいましてね・・・どれだけ魔力を込めようとしていたのかしら、ふふ。」
「ハンナ様・・・それは伏せておいて欲しいと、」
「それにデザインもどうやらアカデミー時代の"ご学友"からお許しが出なかったとか。そうでございましたよね、ラファド様。」
「・・・全部言うつもりですね。」
「私はただお手伝いをしておりましたの。この黒髪で。不出来な試作品をリーシュ様の黒髪に合わせるのはお恥ずかしかったのでしょう。ねえ?」
フンっと鼻を鳴らしそうな勢いでハンナが捲し立てた。少し笑っているようにも見える。
それにアカデミー時代のご学友・・・恐らくラズワルドのことだろうとリーシュは察した。
鬱陶しいほどに口を挟んだのであろう。
弟のリーシュからしても容易く想像ができた。
事の顛末をハンナから聞いたリーシュの耳がじわじわと赤くなっていく。
ようやく自分の勘違いに気がついたようだ。
「ハンナもだぁいすきなリーシュくんにやっと会えたのにさ、泣かせた上に逃げられちゃったから慌てたんだよねぇ。」
「ちょっ、ちょっと!ジョシュア様!?余計なことを言わないでってあれ程お願いしましたのに!?」
「さあ、さあ。誤解も解けたし、私たちはガーディナー殿のところに戻ろうか。それじゃあ、リーシュくん。王都に戻ってきたらハンナとも仲良くしてあげてねぇ。ラファドは、リーシュくんに変なことしちゃダメだよ。あはは。」
「兄上・・・・・・」
あはは、と笑いながらハンナの手をひき、部屋から出ていった2人。
残されたリーシュとラファドの間には、何とも言えない空気が漂ったのは言うまでもない。
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