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ジョシュアとハンナが出ていった後、しばらく沈黙が続いた。
それを破ったのは、ラファドである。
気合を入れるように自分の頬を両手でバシンっと叩き、横に座るリーシュの方を向いた。
ラファドの思わぬ行動に驚いたリーシュだが、ふいに自分の手をラファドから握られ、顔に熱が集まっていく。
自分の手元からそーっと顔を上げると、ラファドと目が合った。





「ラズワルドに書類を届けに王宮へ来たことがあるだろう?」

「・・・は、はい・・・」

「俺はその一瞬で、君に恋をしたんだ。それからずっと君に会いたかった。」

「・・・え?」

「少し強引だったと承知しているが、専属魔法士を引き受けてくれた時、本当に嬉しかったんだ。」

「・・・・・・っ、」

「今回は誤解をさせてしまったが、俺の心はずっと君だけのものだ。どうか・・・これからも一緒にいてくれないだろうか。」




あの日。ラズワルドに書類を届けた日。
リーシュは用事を済ませ、本当にすぐ帰ったのだ。
その時にラファドが自分のことを・・・?
リーシュの顔は火がついたように赤くなり、頭からは湯気までのぼりそうだ。




そんなリーシュの様子に気づいたラファドは、徐に立ち上がり、リーシュの前で片膝をついた。
騎士が誓いを立てる時の姿勢である。




「リーシュ・ギデオン、俺は君のことが好きだ。俺と結婚して、一生一緒にいてほしい。」




ラファドはそう言うと、リーシュの左手の甲に優しく口付ける。



ぽたり、ぽたり、とリーシュの瞳から雫が落ちていく。
自分はいつからこんなに泣き虫になったのだろうか、と不思議でならない。
でもこんなに嬉しいことはないのだから、これは仕方がないことだとリーシュは開き直った。




「こ、これは夢でしょうか・・・?ぼ、僕、ラファド様のこと大好きです。ゆ、夢だったら・・・どうしよう・・・」




うわーんと子どものように泣くリーシュを抱き寄せ、また、とん、とん、と背中をさするラファド。
今度はリーシュの額に口付けた。




「夢じゃない。一生大切にする。これで・・・君は俺だけの人だ。」



ぎゅうっとリーシュを抱きしめ、何度も何度もおでこや頬に口付ける。
甘い、甘い空気にリーシュの頭からぷすぷすと煙が出始めた頃、その気配を感じ取ったのか部屋の扉がまたバンッと開いた。




「リーシュは渡しませんからね!?は、は、離れなさい!!!」




乱入してきたラズワルドを見て、不敵に笑うラファドとは対照的にリーシュは真っ赤になった顔を両手で押さえた。


しっかりと繋がれた手は、最後まで離れる事はなかった。
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