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目を開けると

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ナディルが目を開けると、そこは見覚えのない天井だった。
あれだけ乱れて、ドロドロになっていた身体は綺麗に拭かれ、服も新しくなっていた。

「えっ・・・夢・・・?」

さっきまでの行為はランドルフが好きなあまり、ナディルが膨らませた妄想なのでは?と、思わず考えてしまうくらい、この広い部屋はシーンと静まり返っている。ランドルフもいない。

自分の頸にそっと手を伸ばすと、そこには包帯のようなものが厳重に巻かれていた。「よかった、妄想じゃなさそうだ」とホッと息を吐いていると、ガチャン、と鍵が開く音と共にランドルフが戻ってきた。
手にはトレーに乗せた2人分の食事が見えた。



「ナディル?!起きたのか?どうした?どこか痛いのか?強く噛みすぎたんだ、すまない。痛かっただろう?今から医者を呼んでくるから寝て待ってい」
「おおお落ち着いて!ランドルフ!頸はい、痛いけど、大丈夫だから!むしろ俺、今めちゃくちゃ幸せ。」

「へあ?」


ナディルを見た瞬間、トレーを大慌てで机に置くと飛ぶようにナディルの元へやってきて自分の膝に乗せたランドルフ。ペタペタと心配のあまりナディルを触りまくり、立派な太眉はへにょん、と下がっている。
そんなランドルフを落ち着かせようとナディルは胸元に顔を埋め、ぎゅーと抱きしめた。大きすぎて手は回らなかったが、思いは伝わっただろう。ピシャッと動かなくなったランドルフの尻尾はそんなナディルに驚いたのか、ピンと伸びている。

「ランドルフ、ありがとう。こんな俺を番にしてくれて。大好き。愛してるよ。」

「・・・ナディル、俺も愛しているよ。とても幸せだ。そして、甘くていい匂いがする。番からはこんなにも幸せな匂いがするのだな。」

ランドルフは胸元に埋まっているナディルに鼻を寄せると、くんくん、愛おしそうに匂いを嗅いでいる。匂いを嗅がれるたびに、ランドルフのふさふさした黄金の髪がナディルの肌に当たるので、思わずナディルはくすくすと笑い出す。



「ランドルフ、これからもよろしくね。俺の愛しい番さま。」

「ああ、こちらこそよろしく。・・・それと煽ったのは、ナディルだからな?」

「・・・へっ、ま、待って!お、俺もう、体力が、へっ、ぎゃっ、」



不敵に笑ったランドルフにナディルはベッドへまた軽々押し倒された。

そうしてランドルフとナディルの、長い長い夜が再開されたのだった。








おしまい
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