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一瞬の強い浮遊感の後あんなにも眩しかった光が消えた。
恐る恐る固く閉じていた目を開けると先程居た私の部屋ではなく映画で見た事あるような中世ヨーロッパ風の部屋が広がっていた。
私の家のリビングの四倍はあるのでは無いかと思うぐらいの広さに、見るからにお高そうなソファーや机。
本当にどこなの、ここは。
さっきまで家に居たはずなのに。
「おぉ、無事成功したみたいですね、さあ! 国王陛下の元へ行きましょう!」
戸惑う私を他所にこの男は私の腕を引いた。
そして、なすがままに部屋を出るとこれまた異空間が広がっていた。
幅も長さもすごい廊下にふっかふかのカーペット、連なるたくさんの大きな窓から見える夜空に浮かぶのは三日月と満月の二つの月。
この夜空だけは綺麗だと思ってしまった。
もう何も考えずにずっと夜空を見ていたいと思ったけれども、レオンスさんが足を止めた。
直国王陛下?がいる部屋まで着いてしまったみたい。
「恐らく陛下に挨拶をした後直ぐに王弟殿下の治療が始まると思いますのでご準備の程よろしくお願いしますね」
「え? じゅ、準備? 何を?」
私の方を振り返って言われたが、何を準備すれば良いのかさっぱり分からない。
が私の声は届かなかったらしくレオンスさんがノックをし扉を開けてしまった。
開いたその先には先程いた部屋よりも広いけれども、蝋燭の灯りだけが光る何とも薄暗い部屋。
家具はソファーや机の他にレースカーテンに覆われたベッドや本棚、洋タンス等が置いてあり広さをあまり感じさせない。
ソファーには机の上に置いてある蝋燭を囲って赤黒いを伸ばしたガタイの良い男性と、茶色の髪に眼鏡をかけた男性が向かい合って座っていた。
レオンスは二人の前まで行き自分もその後に着いて行った。
「陛下、ただいま異世界より聖女様をお連れ致しました。こちらがその聖女様に御座います」
赤黒い髪の男性の方を向いて言った。恐らくそちらの方が国王陛下なのだろう。
国王陛下はレオンスの言葉を聞き目を見開いて口をパクパクさせた後レオンスに飛びかかった。
「ほ、ほ、ほ、本当なのか!? そちらのお方が聖女様なのか!?」
「はい。勿論でございます。彼の偉大なる聖女様がお造りになられた魔法です。失敗する筈がございません」
「そうだよな、そうだよな! 嗚呼良かった本当に良かった! レオ、良くぞ戻ってきてくれた!!」
国王陛下はレオンスに抱きつき男泣きを始めた。
座っている時は気付かなかったけれども国王陛下はかなりの大柄。そんな人がわんわんと声を上げて泣き叫ぶ姿はかなり迫力がある。
「陛下、何時まで泣いてるんですか? ほら、さっさと泣き止んで下さい。聖女様も困惑しているでしょう」
「あ、ああ。すまない……グスッ、聖女殿、どうか、どうか我が愛する弟を助けてやって欲しい。どうか、どうか……」
これはいつまで続くんだ、と思っていた矢先眼鏡の男性が国王陛下を落ち着かせてくれた。
そして落ち着くや否や私に深々と頭を下げてきた。しかも、国王陛下のお辞儀に続き他二人も下げてきた。
どうすれば良いんだこれ、助けるも何も治し方なんて分からないし、そもそもまだこの状況理解出来てないし!
でも、大の大人三人に頭下げられてるこの状況は何ともいたたまれない。
えぇい!もうどうにでもなってしまえ!
「分かりましたから、頭を上げてください!」
「本当か! ありがとう! ありがとう!」
またもや涙を流して喜んでいるが、先程とは打って変わって直ぐに泣きやんでしまった。
国王陛下は泣き止んでから直ぐに王弟殿下の元へ連れて行ってくれた。
と言っても、すぐ近くのベッドまで歩いただけだけれども。
レースカーテンで覆われたこの中に王弟殿下がいるらしい。
カーテンを開け王弟殿下のお顔を拝見しようと思った矢先、眼鏡の人から声をかけられた。
「聖女様、わたくしどもはこれで失礼致します。聖女様がお使いになる癒しの魔法は対象の人間と二人でいる事が条件の様なので。あ、それと一応こちらを。偉大なる聖女様がお書きになられた魔導書でございます」
眼鏡から渡されたのは分厚い本だった。
三人はその本を渡されてから直ぐに部屋を出て行ってしまった。
この本で一体どうすれば良いんだよ。
それにさっきから偉大なる聖女って何なのさ?
まぁ、いいや。早く終わらそ。
カーテンをソッと開けるとベッドには寝顔が大変美しい赤い髪の華奢な美青年が横になっていた。
てっきりあのガタイの良い人の弟さんだからもっとデカいのを想像していたけれどまさかこんな美青年だったとは。
でも、なんと言うか華奢と言うよりやせ細っている感じ。
本当に病気だったのか。
えーと、これはどうやって治せば良いのか。
蝋燭の下まで行って渡された本を開いてみた。
目次には色んな魔法の事が書いてあったがその中の“癒しの魔法”についてのページを探し当て開いた。
【癒しの魔法】
難易度 ✩
成功率 ✩✩✩✩✩
[説明]
病気を治す魔法。傷は治らないよ。病気だけ。
[やり方]
超簡単。直したい人の身体に触ってるだけ。
触ってる時間はその人の病気の度合いによる。
軽ければ短くて済むし、重ければすごい時間がかかる。
でも触ってるだけですーぐ治るから簡単
可愛い可愛い丸文字でかかれてた。
これ魔導書って言うよりただのメモ帳じゃん!
なんか凄いショック、魔導書っていうからもっと魔法陣とか難しい文字が並んでるのかと思ってたよ。
ほんと、なにこれ。
でもまぁいいや。治し方は分かったんだし、これなら私にも出来そうだし。
とっとと治して日本に帰りましょ!
恐る恐る固く閉じていた目を開けると先程居た私の部屋ではなく映画で見た事あるような中世ヨーロッパ風の部屋が広がっていた。
私の家のリビングの四倍はあるのでは無いかと思うぐらいの広さに、見るからにお高そうなソファーや机。
本当にどこなの、ここは。
さっきまで家に居たはずなのに。
「おぉ、無事成功したみたいですね、さあ! 国王陛下の元へ行きましょう!」
戸惑う私を他所にこの男は私の腕を引いた。
そして、なすがままに部屋を出るとこれまた異空間が広がっていた。
幅も長さもすごい廊下にふっかふかのカーペット、連なるたくさんの大きな窓から見える夜空に浮かぶのは三日月と満月の二つの月。
この夜空だけは綺麗だと思ってしまった。
もう何も考えずにずっと夜空を見ていたいと思ったけれども、レオンスさんが足を止めた。
直国王陛下?がいる部屋まで着いてしまったみたい。
「恐らく陛下に挨拶をした後直ぐに王弟殿下の治療が始まると思いますのでご準備の程よろしくお願いしますね」
「え? じゅ、準備? 何を?」
私の方を振り返って言われたが、何を準備すれば良いのかさっぱり分からない。
が私の声は届かなかったらしくレオンスさんがノックをし扉を開けてしまった。
開いたその先には先程いた部屋よりも広いけれども、蝋燭の灯りだけが光る何とも薄暗い部屋。
家具はソファーや机の他にレースカーテンに覆われたベッドや本棚、洋タンス等が置いてあり広さをあまり感じさせない。
ソファーには机の上に置いてある蝋燭を囲って赤黒いを伸ばしたガタイの良い男性と、茶色の髪に眼鏡をかけた男性が向かい合って座っていた。
レオンスは二人の前まで行き自分もその後に着いて行った。
「陛下、ただいま異世界より聖女様をお連れ致しました。こちらがその聖女様に御座います」
赤黒い髪の男性の方を向いて言った。恐らくそちらの方が国王陛下なのだろう。
国王陛下はレオンスの言葉を聞き目を見開いて口をパクパクさせた後レオンスに飛びかかった。
「ほ、ほ、ほ、本当なのか!? そちらのお方が聖女様なのか!?」
「はい。勿論でございます。彼の偉大なる聖女様がお造りになられた魔法です。失敗する筈がございません」
「そうだよな、そうだよな! 嗚呼良かった本当に良かった! レオ、良くぞ戻ってきてくれた!!」
国王陛下はレオンスに抱きつき男泣きを始めた。
座っている時は気付かなかったけれども国王陛下はかなりの大柄。そんな人がわんわんと声を上げて泣き叫ぶ姿はかなり迫力がある。
「陛下、何時まで泣いてるんですか? ほら、さっさと泣き止んで下さい。聖女様も困惑しているでしょう」
「あ、ああ。すまない……グスッ、聖女殿、どうか、どうか我が愛する弟を助けてやって欲しい。どうか、どうか……」
これはいつまで続くんだ、と思っていた矢先眼鏡の男性が国王陛下を落ち着かせてくれた。
そして落ち着くや否や私に深々と頭を下げてきた。しかも、国王陛下のお辞儀に続き他二人も下げてきた。
どうすれば良いんだこれ、助けるも何も治し方なんて分からないし、そもそもまだこの状況理解出来てないし!
でも、大の大人三人に頭下げられてるこの状況は何ともいたたまれない。
えぇい!もうどうにでもなってしまえ!
「分かりましたから、頭を上げてください!」
「本当か! ありがとう! ありがとう!」
またもや涙を流して喜んでいるが、先程とは打って変わって直ぐに泣きやんでしまった。
国王陛下は泣き止んでから直ぐに王弟殿下の元へ連れて行ってくれた。
と言っても、すぐ近くのベッドまで歩いただけだけれども。
レースカーテンで覆われたこの中に王弟殿下がいるらしい。
カーテンを開け王弟殿下のお顔を拝見しようと思った矢先、眼鏡の人から声をかけられた。
「聖女様、わたくしどもはこれで失礼致します。聖女様がお使いになる癒しの魔法は対象の人間と二人でいる事が条件の様なので。あ、それと一応こちらを。偉大なる聖女様がお書きになられた魔導書でございます」
眼鏡から渡されたのは分厚い本だった。
三人はその本を渡されてから直ぐに部屋を出て行ってしまった。
この本で一体どうすれば良いんだよ。
それにさっきから偉大なる聖女って何なのさ?
まぁ、いいや。早く終わらそ。
カーテンをソッと開けるとベッドには寝顔が大変美しい赤い髪の華奢な美青年が横になっていた。
てっきりあのガタイの良い人の弟さんだからもっとデカいのを想像していたけれどまさかこんな美青年だったとは。
でも、なんと言うか華奢と言うよりやせ細っている感じ。
本当に病気だったのか。
えーと、これはどうやって治せば良いのか。
蝋燭の下まで行って渡された本を開いてみた。
目次には色んな魔法の事が書いてあったがその中の“癒しの魔法”についてのページを探し当て開いた。
【癒しの魔法】
難易度 ✩
成功率 ✩✩✩✩✩
[説明]
病気を治す魔法。傷は治らないよ。病気だけ。
[やり方]
超簡単。直したい人の身体に触ってるだけ。
触ってる時間はその人の病気の度合いによる。
軽ければ短くて済むし、重ければすごい時間がかかる。
でも触ってるだけですーぐ治るから簡単
可愛い可愛い丸文字でかかれてた。
これ魔導書って言うよりただのメモ帳じゃん!
なんか凄いショック、魔導書っていうからもっと魔法陣とか難しい文字が並んでるのかと思ってたよ。
ほんと、なにこれ。
でもまぁいいや。治し方は分かったんだし、これなら私にも出来そうだし。
とっとと治して日本に帰りましょ!
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