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6-1 戦闘スタイル
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ウッドは翌日から正式に護衛部隊配属となった。
「お前さんがリンクスの拾ってきた犬っころか!俺の名はトール・マレスだ。よろしく頼む!」
護衛部隊の隊長は厳つい熊みたいな男だった。短く刈り上げられた頭と無造作に伸ばされた無精髭がその強面をより一層引き立てていた。
分厚い身体から響き渡る唸るような低音ボイスはそれだけで相手を怯ませる効果がありそうだ。
「まずはお前さんの適性を見る。扱える得物はあるか?」
今日も今日とて広場では宴が開かれている。昼間のうちはリンクスは村の男たちの戦闘訓練に駆り出されていた。
ウッドは、護衛部隊隊長のマレスと共に教会裏の庭に来ている。
教会の裏側は広い庭と畑で構成されていた。陽当たりのいいその庭は生け垣や花が植えられ、所々にベンチが置かれている。
「こういうクネッとしたナイフと弓なら少し……。」
ナイフの形を手で示しながら答える。
「おぉ!ククリ刀か!そうか、山岳の民ならではだな。それと弓か。あぁ。悪くない。少し待っとれ。」
そう言ってマレスは両手を構え目を瞑る。すると、両手にククリ刀が2振り現れた。
「どれ、手合わせ願おうか。」
そう言ってククリ刀が1振投げ渡される。
ビリビリと殺気が肌を刺し、それだけでこの身が切り裂かれそうだ。
ジリジリと間合いをはかるが、全く隙がない。今斬りかったところで返り討ちに合うだろう……。
まるで野生の熊を相手にしているかのような迫力だ。……野生の熊……?そうか!熊を相手に狩りをする時は正面から行ってはダメだ。
ウッドは勢いを付けてマレスに斬りかかるとわざと弾かれ、その勢いを借りて植木に飛び込んだ。
元々は狩りで使っていた得物だ。平面での戦闘はウッドには経験がない。この庭を使ってゲリラ戦でも仕掛けなければ3秒と持たないだろう。
ウッドはククリ刀で庭の植木の枝を落として植木の隙間に道を作った。
きっとマレス隊長は、オレが落ちたところへアタリをつけてやってくるだろう。その時が反撃のチャンスだ。少しズレた位置からの奇襲で一太刀くらいは当ててやる!
逸る心を押さえつつ、反撃の瞬間を待った。
しかし、待てど暮らせどマレスはその場を動かない。ならば。と、なるべく音をたてないように植木を伝い、高い木に登る。
そのままククリ刀を構えるとマレスの死角から、彼目掛けて落ちていった。重力を利用して一太刀の威力を上げるのだ。
「っ!!!!」
獲った!!!そう思ったとき、マレスが振り向き半歩後ろに下がった。そしてそのまま腕を伸ばすとあっさりとウッドを捕まえた。
「作戦は悪くないがな。植木は人様の物だ。訓練では伐ってくれるな。」
そう言って小さな子どもにするように、両わきに手を入れ、腕を伸ばして高く掲げると、すとんと下ろした。
実力が違いすぎて打ち合いすらできなかった。それが、ウッドの現状だ。
「弓はどれほど使える?あの鳥を落とせるか?」
マレスは空高く飛ぶ鳥を指差した。正直遠すぎて黒い点にしか見えなかった。あれ程までの距離を飛ばすことはできない。そう、正直に伝えると、わかった。では、適当でいいからあの鳥を狙って射ってみろと、いわれた。
渡された弓に矢をつがえキリキリと引き絞る。届かないことはわかっていたが当てるつもりで矢を放った。
勢いよく飛び出した矢は、案の定届かず、やがて勢いを失い落ちていった。
矢の軌道を見届けると、マレスは筋は悪くないぞと、ウッドの頭を撫でてから、白い紙を渡した。
「これで最後だ。魔力を込めてみろ」
そう言って渡された紙を手にうーん!と力を込めてみる。強く握り過ぎて皺が入った以外は何も起きなかった。
がっはっはっはっは、と、マレスは豪快に笑った。
「魔力なしだな。なぁに、心配するこたぁない。俺が立派な戦士に鍛え上げてやるさ。」
ニッと笑ったマレスは、何枚かの羊皮紙を取り出しウッドに渡した。
「とりあえずは、これを毎日やるといい。話しはそれからだ。」
それから、こいつもやる。と口を縛った布を渡される。開けると中にはクッキーが入っていた。
「俺の部隊に入ったからにゃあ、雑用と不寝番は必ず付いて回る。そんなんじゃぁ、あっちゅう間にぶっ倒れちまうぞ。しっかり食ってもっと肉をつけるこったな。」
じゃあな。と、ウッドの頭をガシガシと撫でてからマレスはのしのしと去っていった。
広場に戻りクッキーを齧っているとリンクスに声をかけられた。
石畳の広場では今日も人の背丈ほどもある焚き火が組まれ、気持ちよく燃えていた。
焚き火の周りでは、陽気な音楽が流れ、酒や料理が振る舞われている。
そこから少し離れた広場の一角では、商隊の護衛部隊と村の男達が剣を交えていた。
「どうだったよ、マレス部隊長の実力試験は?」
「うん……。何にもできなかった。」
「そうか?それ、貰ったんだろ?本当に見込みがなけりゃ、あんた今頃、積載長様のところに突っ返されてるぜ。」
リンクスは羊皮紙を指差していった。羊皮紙には簡単な基礎トレーニングと、何人かの名前が書かれていた。
「なっつかし~なぁ。これさ、ここに書いてあるやつに勝負を挑んでくんだよ。一人倒せたら次、一人倒せたら次って感じでさ。そんで、最後にマレス部隊長様に勝てたら、晴れて対魔物戦闘に参加できるってわけ!」
簡単だろ?と、リンクスは笑う。
簡単かなぁ……。本当にあの熊みたいな部隊長を倒せるようになるんだろうか……。
「まぁ、まずは基礎トレだな。体力と筋肉つけないとな!頑張れよ!」
そう言ってリンクスは村の男達の戦闘訓練に戻っていった。
オレも基礎トレ頑張らないとな!
残りのクッキーを平らげてしまおうと手元を見ると跡形もなく消えていた。
どこぞの泥棒猫が去り際にかっさらって行ったのだろう。
あいつ……許さない……。
「お前さんがリンクスの拾ってきた犬っころか!俺の名はトール・マレスだ。よろしく頼む!」
護衛部隊の隊長は厳つい熊みたいな男だった。短く刈り上げられた頭と無造作に伸ばされた無精髭がその強面をより一層引き立てていた。
分厚い身体から響き渡る唸るような低音ボイスはそれだけで相手を怯ませる効果がありそうだ。
「まずはお前さんの適性を見る。扱える得物はあるか?」
今日も今日とて広場では宴が開かれている。昼間のうちはリンクスは村の男たちの戦闘訓練に駆り出されていた。
ウッドは、護衛部隊隊長のマレスと共に教会裏の庭に来ている。
教会の裏側は広い庭と畑で構成されていた。陽当たりのいいその庭は生け垣や花が植えられ、所々にベンチが置かれている。
「こういうクネッとしたナイフと弓なら少し……。」
ナイフの形を手で示しながら答える。
「おぉ!ククリ刀か!そうか、山岳の民ならではだな。それと弓か。あぁ。悪くない。少し待っとれ。」
そう言ってマレスは両手を構え目を瞑る。すると、両手にククリ刀が2振り現れた。
「どれ、手合わせ願おうか。」
そう言ってククリ刀が1振投げ渡される。
ビリビリと殺気が肌を刺し、それだけでこの身が切り裂かれそうだ。
ジリジリと間合いをはかるが、全く隙がない。今斬りかったところで返り討ちに合うだろう……。
まるで野生の熊を相手にしているかのような迫力だ。……野生の熊……?そうか!熊を相手に狩りをする時は正面から行ってはダメだ。
ウッドは勢いを付けてマレスに斬りかかるとわざと弾かれ、その勢いを借りて植木に飛び込んだ。
元々は狩りで使っていた得物だ。平面での戦闘はウッドには経験がない。この庭を使ってゲリラ戦でも仕掛けなければ3秒と持たないだろう。
ウッドはククリ刀で庭の植木の枝を落として植木の隙間に道を作った。
きっとマレス隊長は、オレが落ちたところへアタリをつけてやってくるだろう。その時が反撃のチャンスだ。少しズレた位置からの奇襲で一太刀くらいは当ててやる!
逸る心を押さえつつ、反撃の瞬間を待った。
しかし、待てど暮らせどマレスはその場を動かない。ならば。と、なるべく音をたてないように植木を伝い、高い木に登る。
そのままククリ刀を構えるとマレスの死角から、彼目掛けて落ちていった。重力を利用して一太刀の威力を上げるのだ。
「っ!!!!」
獲った!!!そう思ったとき、マレスが振り向き半歩後ろに下がった。そしてそのまま腕を伸ばすとあっさりとウッドを捕まえた。
「作戦は悪くないがな。植木は人様の物だ。訓練では伐ってくれるな。」
そう言って小さな子どもにするように、両わきに手を入れ、腕を伸ばして高く掲げると、すとんと下ろした。
実力が違いすぎて打ち合いすらできなかった。それが、ウッドの現状だ。
「弓はどれほど使える?あの鳥を落とせるか?」
マレスは空高く飛ぶ鳥を指差した。正直遠すぎて黒い点にしか見えなかった。あれ程までの距離を飛ばすことはできない。そう、正直に伝えると、わかった。では、適当でいいからあの鳥を狙って射ってみろと、いわれた。
渡された弓に矢をつがえキリキリと引き絞る。届かないことはわかっていたが当てるつもりで矢を放った。
勢いよく飛び出した矢は、案の定届かず、やがて勢いを失い落ちていった。
矢の軌道を見届けると、マレスは筋は悪くないぞと、ウッドの頭を撫でてから、白い紙を渡した。
「これで最後だ。魔力を込めてみろ」
そう言って渡された紙を手にうーん!と力を込めてみる。強く握り過ぎて皺が入った以外は何も起きなかった。
がっはっはっはっは、と、マレスは豪快に笑った。
「魔力なしだな。なぁに、心配するこたぁない。俺が立派な戦士に鍛え上げてやるさ。」
ニッと笑ったマレスは、何枚かの羊皮紙を取り出しウッドに渡した。
「とりあえずは、これを毎日やるといい。話しはそれからだ。」
それから、こいつもやる。と口を縛った布を渡される。開けると中にはクッキーが入っていた。
「俺の部隊に入ったからにゃあ、雑用と不寝番は必ず付いて回る。そんなんじゃぁ、あっちゅう間にぶっ倒れちまうぞ。しっかり食ってもっと肉をつけるこったな。」
じゃあな。と、ウッドの頭をガシガシと撫でてからマレスはのしのしと去っていった。
広場に戻りクッキーを齧っているとリンクスに声をかけられた。
石畳の広場では今日も人の背丈ほどもある焚き火が組まれ、気持ちよく燃えていた。
焚き火の周りでは、陽気な音楽が流れ、酒や料理が振る舞われている。
そこから少し離れた広場の一角では、商隊の護衛部隊と村の男達が剣を交えていた。
「どうだったよ、マレス部隊長の実力試験は?」
「うん……。何にもできなかった。」
「そうか?それ、貰ったんだろ?本当に見込みがなけりゃ、あんた今頃、積載長様のところに突っ返されてるぜ。」
リンクスは羊皮紙を指差していった。羊皮紙には簡単な基礎トレーニングと、何人かの名前が書かれていた。
「なっつかし~なぁ。これさ、ここに書いてあるやつに勝負を挑んでくんだよ。一人倒せたら次、一人倒せたら次って感じでさ。そんで、最後にマレス部隊長様に勝てたら、晴れて対魔物戦闘に参加できるってわけ!」
簡単だろ?と、リンクスは笑う。
簡単かなぁ……。本当にあの熊みたいな部隊長を倒せるようになるんだろうか……。
「まぁ、まずは基礎トレだな。体力と筋肉つけないとな!頑張れよ!」
そう言ってリンクスは村の男達の戦闘訓練に戻っていった。
オレも基礎トレ頑張らないとな!
残りのクッキーを平らげてしまおうと手元を見ると跡形もなく消えていた。
どこぞの泥棒猫が去り際にかっさらって行ったのだろう。
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