漆黒帝と呼ばれた男 ~異世界から来たのでステータスやスキルはありませんけど、こちらには科学文明の力があるので最強です~

ねこのにくきう

文字の大きさ
23 / 41
第一章 謎の組織、異世界へ行く

悪事23 謎の組織、武術大会で優勝して褒美を受け取る

しおりを挟む
 『統領』と勇者エリカの試合は、エリカの降参という結果で幕を閉じた。
 少々腑に落ちない気もするが、人にはそれぞれ理由があるのだろう。

 その日の夜、『統領』はウエストバーンに所用で外出すると告げてから屋敷を出る。
 こんな時間にどこへ何しにいくのか訝しがられたが、説明するわけにもいかないので放置することにした。

「ふむ、ここか? 一応、中を確認するか。人違いでしたじゃ、しゃれにもならん」

 幸運なことに目的の場所の窓が開いたので、そこから試合の時に密かに入手したバイタルデータを照合して本人と確認すると、無人偵察機を使って窓から部屋の中に目的の物を投げ込む。

「よし、あとは素直に従ってくれればいいのだが……まぁ、それはアイツ次第か」

 他国の人間と接触するということは、今のところはウエストバーンには秘密にしておいたほうがいいだろう。ある程度、上手くいったら報告すればいい事である。

 ちなみにメアにだけは行き先と会う相手を告げてきた。
 その理由はご察しのとおり、後からバレたら恐ろしいからである。
 何故か、『統領』を送り出すときの凍えるような笑顔が恐ろしかったのだが。



 夜に宿で休んでいたエリカは、変な物音で目が覚めた。
 窓の外から聞こえてくるようなので、念のため白刃戦装を発動して確認すると、闇夜に紛れ込むように漆黒の飛行物体が浮遊していた。

「何これ、ドローン?」

 エリカがじっくりと確認しようとする前に、その飛行物体は何かを部屋の中に投げ込んでから、どこかへ飛び立っていってしまった。

 こんなことをするヤツは1人しかいないと思い立って、すぐに物を確認すると、

『これはイヤリング型の通信機だ。私と連絡を取る気があるなら、今後は身に着けておけ。尚、これにはお前の生体パターンを登録してあるのでお前以外には使用できないし、通信する音が外部に漏れることもないが、私から交信しない限りは回線が開かない仕組みだ。もし、お前から連絡することがあるなら、石に10秒以上触れれば私に緊急信号が届くことになっているから、それで連絡しろ。以上だ』

 差出人不明の手紙と共に、青い宝石のついたイヤリングが同封されていた。

「あーあ、こっちのことはお見通しかぁ。どんだけ至れり尽くせりなのよ……ありがたくもらっとくわ」

 次の日以降、エリカの左耳には常に青い宝石のイヤリングが輝くことになる。
 その様子を偶然見かけた、とある貴族の娘が不機嫌になったとか、ならなかったとか。



 エリカ戦の後はと言うと、『統領』は順調に勝って準決勝へと駒を進めた。

「君がボス殿か、改めて近くで見ると凄い威圧感だな。俺は第二王子のバルドルという。気軽にバルドルと呼んでくれていい。今日は胸を貸してくれ」

「ああ! あなたが、噂の第二王子様ですか」

「どんな噂か知らないが……何となく良い予感がしないな。ちなみに、どんなのだ? そのままの言葉で伝えてくれればいい。遠慮はいらんぞ?」

「まぁ、良い大人なのに幼女趣味とか、人の恋愛に横入りしてくる無頼漢とか、ですかね? あ、こんなこと言うと不敬罪になりそうですね」

「うぐっ」

 とかいうやり取りがあった後、『統領』に遠慮なくぶっ飛ばされてノックダウン。
 しかし、すぐに回復して、その場で大笑いし始めた。

「これは、俺では勝てんわ! 自分よりも圧倒的に強い相手に会うのは、久しぶりだ。またやろうぜ! はははは!」

(第二王子様は……というか王族とは思えないくらい気さくな性格の人だな。確か、この国の将軍の1人だったか? あれでは周りが苦労しそうだが、私個人としては出来れば友人として付き合いたいくらいだ。趣向はさておき、非常に好感が持てる)


 続く決勝の相手は他国の戦士のようだったが、少し戦っただけで相手が降参して終わってしまった。ただ、相手は全力を出しているとは到底思えなかったのが気がかりではある。

 不完全燃焼だったが、兎に角、優勝は優勝である。
 そして、驚くことに賞金が金貨で1000枚、副賞で目録内から1品、優勝者の特権が1つ与えられることになった。
 ウエストバーンから少し聞いてはいたが、正直な話、こんなにもらえるとは思ってもいなかった『統領』。しかし、受け取っても持て余すのが関の山である。

(正直、金をもらっても使い道がないからなぁ。それに、使わずに死蔵してたら、この国の経済に大なり小なりの問題が生じるはず。必要なものはウエストバーン様に融通してもらっているし、買い物するにしても自分たちの船で作ったもののほうが高性能なんだよなぁ)

「賞金についてですが、辞退するというのは失礼に当たりますね……では、この国には孤児院のような、親のいない子を預かる施設はありますか? 孤児院でなくとも、似たような機関があれば、そこへ全額寄付します」

 何気なく『統領』がそう言うと、会場中がどよめいた。

「副賞は目録から1点選ばせてもらいます。特権は……」

「ボス殿? ちょっと、よろしいか?」

 話を遮ってきたのは、ニブルタールの宰相である。
 周囲の人間に聞こえにくいように、かなりトーンを落として話しかけていることから、大っぴらには言いにくい内容と推測できる。

「はい、何でしょうか?」

「その、武術大会優勝者の権利ですので、優勝者がどのように扱っても問題はないのですが……正直なところ、今までそのような使われ方をされた前例がないのです。ここで実績を作ってしまうと後々の運営に……」

「ああ、なるほど、それは本意ではありませんね」

「では、建前さえあればいいのだから、こうすればいい。ボス殿が私の娘と婚約し、その結納金として使用する。私は直轄の管理組織を作成して、その資金から慈善活動を行う。娘との関係を円滑にするための資金だからな。貴族として民のために使うことは当たり前だ」

「む……仕方ありませんね。その線でお願いします。では、頂いた賞金に関して、私は今ウエストバーン辺境伯にお世話になっている身ですので、辺境伯へ全額預けて、その運用を一任するという形でよろしいでしょうか?」

「わかりました。少々問題になりそうですが、何とか調整しましょう。それで結構です」

 内心は回りくどいことをしなくても、そのまま寄付しちゃえばいいじゃんと思っている『統領』だったが、この世界にはこの世界の都合があるので大人しく従うことにした。

 ほどなくして武術大会は解散になったが、『統領』は副賞と特権の調整で再度王城に呼ばれることになってしまった。正直、面倒くさくて嫌だったのだが、メアが関係しているので安易に拒否するわけにもいかないのが辛いところである。

 で、前もって根回しされている茶番を演じる。

「他国出身で平民の身分ではありますが、ウエストバーン辺境伯のご息女メア様と縁を結ばせて頂ければ嬉しく思います。もし、相応しくないと判断されたとしても遺恨無き事を誓います」

「うむ、そなたの願いは聞き届けた。しかし、優勝者特権とはいえ、婚姻を強要することは出来かねる。よって、本人の意思を聞いた上で采配しよう。メアよ、おぬしはどうだ?」

「私は、心の底からボス様をお慕いしております。父、辺境伯もボス様ほどの猛者であればと申しております。私個人としても異論はありません」

「双方、惹かれ合っていることを確認したぞ。ウエストバーンも異論はないな?」

「はい、もちろんでございます」

(はぁ、やっぱりこうなったか……まぁまだ婚姻したわけじゃないから、メア自身が考え直す時間は残されているか。後々、冷静になって思い直すかもしれんし)

「異議ありよ!」

 まとまりそうな空気感の中、思いもしなかった方向から反逆の声が上がったことで静まり返る謁見の間。
 そして、全員が唖然としてある一点を見ると、そこにはニブルタール王国の第一王女ノルンが立っていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばす 規格外ダンジョンに住んでいるので、無自覚に最強でした

むらくも航
ファンタジー
旧題:ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~ Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。

追放されたS級清掃員、配信切り忘れで伝説になる 「ただのゴミ掃除」と言って神話級ドラゴンを消し飛ばしていたら世界中がパニックになってますが?

あとりえむ
ファンタジー
【5話ごとのサクッと読める構成です!】 世界を救ったのは、聖剣ではなく「洗剤」でした。 「君のやり方は古いんだよ」 不当な理由でS級クランを追放された、ベテラン清掃員・灰坂ソウジ(38歳)。 職を失った彼だったが、実は彼にはとんでもない秘密があった。 呪いのゴーグルのせいで、あらゆる怪物が「汚れ」にしか見えないのだ。 ・神話級ドラゴン  ⇒ 換気扇の頑固な油汚れ(洗剤で瞬殺) ・深淵の邪神  ⇒ トイレの配管詰まり(スッポンで解決) ・次元の裂け目  ⇒ 天井の雨漏りシミ(洗濯機で丸洗い) 「あー、ここ汚れてるな。チャチャッと落としておくか」 本人はただ業務として掃除をしているだけなのに、その姿は世界中で配信され、人類最強の英雄として崇められていく! 可愛い元ダンジョン・コアや、潔癖症の聖女も入社し、会社は今日も大忙し。 一方、彼を追放した元クランは、汚れ(モンスター)に埋もれて破滅寸前で……? 「地球が汚れてる? じゃあ、一回丸洗いしますか」 最強の清掃員が、モップ片手に世界をピカピカにする、痛快・勘違い無双ファンタジー! 【免責事項】 この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。 ※こちらの作品は、カクヨムと小説家になろうでも公開しています。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...