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第7章 話が進んだら変更します
7-9 カノコの意図
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司の目が覚めてからは、周囲は以前よりも遥かに献身的な対応をしていた。
まるで何もできない赤子のように甲斐甲斐しくお世話を焼く様子が度々目撃されていたのだが、年頃の男子としては着替えまで手伝ってもらうのは辛いものがあった。
それが、意識があるうちは、例え動けない身だとしても、尊厳にかかわる問題なのである。
「司さん、はい、どうぞ」
「あ、あの、舞さん? 俺、1人で食べれるんですけど……」
「司さんは病人なんですから、ダメです。はい、あーん」
「あーん……あむあむ」
今は、この場所に一般人がいたら口から砂糖を吐きそうになりそうなほどに甘ったるい空気感に包まれて、舞が司の食事のお世話をしていた。
その後ろでは橙花が身体を清めるためのタオルやお湯を用意して待機していたのだが、彼女はメイドのプロなので、舞たちの様子を見ても顔色一つ変えることはない。
むしろ、このような行いはバンバンやるべきだと思っている肯定派なのである。
「司さーん、ご飯食べ終わりましたか? あ、今日はオジヤなんですね!」
「司、思ったよりも元気そうでよかった」
食事もそこそこ進んだくらいで、リリたち一家がお見舞いに訪れた。
真っ先に部屋に飛び込んできたのはリリで、そのあとをヴォルフが追従する。
「ふふふ、最近のリリは元気いっぱいね。司さんが寝ていた時はあんなだったのに」
「そうか? 俺には、リリはいつもと変わらない気がするけどな?」
少し遅れてルーヴとララがやってきた。
「爺、心配かけた。もう大丈夫だから、いつものように戻ってくれ。爺が借りてきたネコみたいに元気がないようじゃ、俺の調子が狂うぞ? こっちに来い」
部屋の外から顔を半分だけ出して中の様子を伺う祖父の源に気づいた司がそう促すと、何も言わずにソロソロと入室してくる。
「つかさーー! ちょっと、助けてよー! 兎神たちが酷いんだよー!」
最後の最後に、転がり込む様に駆け込んできたのは渦中の問題児、カノコである。
「お前、兎神が怒るなんて相当なことだぞ? 何か、しょーもないことでもしたんだろ? 調子に乗ると、絶対にろくなことしそうもないもんな」
「え? なんのことかなー? わたし、わっかんないなー?」
凄く解り易く白を切るカノコだったが、司の一件があってからずっと兎神と蒼花に説教され、反省文を延々と書かされているそうだ。自業自得とはこのことである。
「よりにもよって、まだお身体の優れない司様のお部屋に逃げ込むとは……何というバカ者か。これは反省しているとは言い難いと判断せざるを得ません。少し目を離した隙に、どうやって部屋のカギを開けて逃げたのか」
「私たちがずっと監視しているわけにもいきませんしね。兎神、良い案を思いつきました。地下の兵隊ハチたちに協力してもらって逃げだしたら即座に刺してもらいましょう。彼らは機動力もある優秀なハンターですから逃亡は不可です。報酬は果実セットで」
物騒なことを相談しながら、兎神と蒼花がカノコを追いかけて部屋にやってきた。
いつの間にか、屋敷中の住人が集合してきて、部屋の人口密度は急上昇なのだが、
「ははは! これだよ、これ! 何で、俺はこんな大切な物を忘れようとしたんだろうな……今になって思い返してみても、あの時はどうかしてたんだろうなぁ」
騒がしくなった部屋の様子を見て、司はとても上機嫌だった。
そして、周りは改めて認識した。
やはり、あの長期の昏睡は司の精神が肉体に影響を及ぼしたものだったということを。
「……司さん、今日の体調はどうですか? その目は、本当に大丈夫なんですか?」
「ん? ああ、体調は徐々に良くなってるよ。目は、ちょっと見え方はおかしいけど、完全に見えないわけじゃないから問題ないだろう」
舞は少し強引に話題を変えようとしたのだが、司は違和感を覚えなかったようだった。
司の身体に起こった変化。
元々は黒だった瞳の色が、両方とも紅くなったということ。
医師の診断では視力は落ちているものの、失明に至るような兆候は見られないと。
しかし、それは司が倒れていた場に居合わせた者なら、何かに気づいてしまうだろう。
赤というのは、嫌でもあの男を思い出してしまう色だったから。
「アレの影響は出来る限り小さくしたはずだったけど、それでも少しは出てしまったね。やはり、事前にリリちゃんに相談しておいてよかったよ」
「それは、どういうことですか? アレはお前のせいでは? 最後に手を出したのはお前だったはずです。それで何かしらの影響が出たと」
「失礼な、私だって司に危害を加えるつもりはなかったよ。兎に角、早く元気になってもらわないと困っていたからね。最後のアレは……演技だよ」
煮え切らないカノコのセリフを聞いて、少しイラッとした様子を見せる兎神。
「だから、あんなのは止めましょうって言ったのに……カノコさん頑固だから」
「だって、あのままじゃ、リリちゃんに全部いいところを持って行かれて、私はオマケみたいな扱いになっちゃうじゃないか! 私だって頑張ったのに!」
そのセリフを聞いて、無言でカノコをぶん殴る兎神を止める者はだれ一人いなかった。
まるで何もできない赤子のように甲斐甲斐しくお世話を焼く様子が度々目撃されていたのだが、年頃の男子としては着替えまで手伝ってもらうのは辛いものがあった。
それが、意識があるうちは、例え動けない身だとしても、尊厳にかかわる問題なのである。
「司さん、はい、どうぞ」
「あ、あの、舞さん? 俺、1人で食べれるんですけど……」
「司さんは病人なんですから、ダメです。はい、あーん」
「あーん……あむあむ」
今は、この場所に一般人がいたら口から砂糖を吐きそうになりそうなほどに甘ったるい空気感に包まれて、舞が司の食事のお世話をしていた。
その後ろでは橙花が身体を清めるためのタオルやお湯を用意して待機していたのだが、彼女はメイドのプロなので、舞たちの様子を見ても顔色一つ変えることはない。
むしろ、このような行いはバンバンやるべきだと思っている肯定派なのである。
「司さーん、ご飯食べ終わりましたか? あ、今日はオジヤなんですね!」
「司、思ったよりも元気そうでよかった」
食事もそこそこ進んだくらいで、リリたち一家がお見舞いに訪れた。
真っ先に部屋に飛び込んできたのはリリで、そのあとをヴォルフが追従する。
「ふふふ、最近のリリは元気いっぱいね。司さんが寝ていた時はあんなだったのに」
「そうか? 俺には、リリはいつもと変わらない気がするけどな?」
少し遅れてルーヴとララがやってきた。
「爺、心配かけた。もう大丈夫だから、いつものように戻ってくれ。爺が借りてきたネコみたいに元気がないようじゃ、俺の調子が狂うぞ? こっちに来い」
部屋の外から顔を半分だけ出して中の様子を伺う祖父の源に気づいた司がそう促すと、何も言わずにソロソロと入室してくる。
「つかさーー! ちょっと、助けてよー! 兎神たちが酷いんだよー!」
最後の最後に、転がり込む様に駆け込んできたのは渦中の問題児、カノコである。
「お前、兎神が怒るなんて相当なことだぞ? 何か、しょーもないことでもしたんだろ? 調子に乗ると、絶対にろくなことしそうもないもんな」
「え? なんのことかなー? わたし、わっかんないなー?」
凄く解り易く白を切るカノコだったが、司の一件があってからずっと兎神と蒼花に説教され、反省文を延々と書かされているそうだ。自業自得とはこのことである。
「よりにもよって、まだお身体の優れない司様のお部屋に逃げ込むとは……何というバカ者か。これは反省しているとは言い難いと判断せざるを得ません。少し目を離した隙に、どうやって部屋のカギを開けて逃げたのか」
「私たちがずっと監視しているわけにもいきませんしね。兎神、良い案を思いつきました。地下の兵隊ハチたちに協力してもらって逃げだしたら即座に刺してもらいましょう。彼らは機動力もある優秀なハンターですから逃亡は不可です。報酬は果実セットで」
物騒なことを相談しながら、兎神と蒼花がカノコを追いかけて部屋にやってきた。
いつの間にか、屋敷中の住人が集合してきて、部屋の人口密度は急上昇なのだが、
「ははは! これだよ、これ! 何で、俺はこんな大切な物を忘れようとしたんだろうな……今になって思い返してみても、あの時はどうかしてたんだろうなぁ」
騒がしくなった部屋の様子を見て、司はとても上機嫌だった。
そして、周りは改めて認識した。
やはり、あの長期の昏睡は司の精神が肉体に影響を及ぼしたものだったということを。
「……司さん、今日の体調はどうですか? その目は、本当に大丈夫なんですか?」
「ん? ああ、体調は徐々に良くなってるよ。目は、ちょっと見え方はおかしいけど、完全に見えないわけじゃないから問題ないだろう」
舞は少し強引に話題を変えようとしたのだが、司は違和感を覚えなかったようだった。
司の身体に起こった変化。
元々は黒だった瞳の色が、両方とも紅くなったということ。
医師の診断では視力は落ちているものの、失明に至るような兆候は見られないと。
しかし、それは司が倒れていた場に居合わせた者なら、何かに気づいてしまうだろう。
赤というのは、嫌でもあの男を思い出してしまう色だったから。
「アレの影響は出来る限り小さくしたはずだったけど、それでも少しは出てしまったね。やはり、事前にリリちゃんに相談しておいてよかったよ」
「それは、どういうことですか? アレはお前のせいでは? 最後に手を出したのはお前だったはずです。それで何かしらの影響が出たと」
「失礼な、私だって司に危害を加えるつもりはなかったよ。兎に角、早く元気になってもらわないと困っていたからね。最後のアレは……演技だよ」
煮え切らないカノコのセリフを聞いて、少しイラッとした様子を見せる兎神。
「だから、あんなのは止めましょうって言ったのに……カノコさん頑固だから」
「だって、あのままじゃ、リリちゃんに全部いいところを持って行かれて、私はオマケみたいな扱いになっちゃうじゃないか! 私だって頑張ったのに!」
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