リアルにファンタジーのほうがやってきた! ~謎の異世界からやってきたのは健気で可愛いモフモフでした~

ねこのにくきう

文字の大きさ
85 / 278
第4章 旅にアクシデントはお約束?

4-12 望む望まずに関わらず、トラブル? は独りでにやってくる

しおりを挟む
「……で? 急に来て、いったい何の用なんだ? 俺には心当たりがまったくないんだけどな」

 司は干支神家の屋敷で客人を迎えていた。ただ、本来予定にない来客であり、メンツにも不可解な点がある。むしろ、何か問題ごとの匂いしかしない。

「まぁまぁまぁ、そんなことは言いっこなしだって! 司さんと私たちの仲じゃない」

「こーんな美人さん3人を家に迎えることができるなんて、司さんはラッキーですねー。むしろお礼を要求したいくらいですよー?」

「むむむ、このお菓子おいしい。でも、一体どこのお店? 記憶にない。まさか自家製?」

 初めてなのに少しの遠慮もない3人の名前は、赤穂(あかほ)詠美(えいみ)、青葉(あおば)澪(みお)、黄瀬(きせ)優(ゆう)。武神(たけがみ)舞(まい)の高校の学友……のはず。司にとっては許嫁の友達で、しかもまだ1回しか会ったことがないわけで、つまりはほぼ赤の他人である。

「へー、いつどこでどうやって、そうなったんだろうね……さて、こう見えて俺も結構忙しい身なんだ。食べ終わったら、お帰りはあちらですよ?」

「ええっ!? 待って待って! 私たち舞の友達だよ? そっけなさすぎない!?」

「むむー。流石は恋人持ちですねー。色仕掛けの正攻法では無理ですかー」
 
「理不尽な発言に断固抗議。撤回を要求する。…………これ、おかわりある?」

 今現在は、知り合いの家にお菓子とお茶をたかりに来ただけである。一体、何をしに来たというのか。

「わかったわかった。話を聞いてやるから、さっさと話せ。本当に何しに来たんだよ……」

 3人はきっちりと出されたお菓子とお茶を平らげて、うち一人はおかわりまでしていた。日本人の奥ゆかしさや慎みといった要素はどこへ行ってしまったのか。どこまで行ってもマイペースな3人である。

「司さんって暇だよね? 暇にするよね? 無理でも暇にして!」

「私たちはー、もうすぐ夏休みになるんですよねー」

「もぐもぐ、もぐもぐ」

 約一名お菓子に夢中な頭のおかしな人がいる……。
 それはともかくとして、今は7月上旬だから、もう少ししたら高校生は夏休みになる。司には全く関係ないことだが、どうやら休み中の予定を聞きに来たようだ。

「残念ながら、やることが山盛りだな。正直な話、先月もあほみたいに忙しくて、寝る暇もなかったくらいだ。今月はそれほどでもないが、それでも暇になることはないだろうな」

 現実を顧みて、司がとても真面目に回答する。彼のスケジュールは兎神が管理しているのだが、事実かなりの綿密具合で埋まっている。司はそれを見たくなくて、日々現実逃避しているが。

「ぶーぶー、そんなのつまんなーい。そんな回答は求めていませーん。はい! やり直し!」

「あらあら、ダメな男のセリフですねー。そこは予定があっても暇ですよーっておっしゃるのが甲斐性ってものじゃないんですかー? そんなことじゃ舞ちゃんが可愛そうですよー」

「再回答を要求。休暇を申請せよ。我々は司の身柄を求めている……あ、おかわりある?」

 言いたい放題である。そして、優はまだ食べたいのか……。

「あのなぁ、いきなり来て何言ってんだよ……理由もわからず、予定を空けろとか言われても無理だろうよ。普通に考えて。理由を話せよ、理由を」

 延々と続きそうな前振りに、いい加減、面倒くさくなった司。3人に対する反応がだいぶ雑になってきた。忙しい身としては、前置きはいいからさっさと結論を話してもらいたい、そんな感情が見え隠れしている。これはモテない男の典型的なパターンである。

最も、司がこの3人に対して恋愛感情を抱くか? と言われたら……コメントは差し控えさせて頂こう。蓼食う虫も好き好きである。人と人の関係には相性というものが大切なのである。

「あのさ、最近、舞の元気がないのよね……何かに悩んでいるみたいなのよ。で、心配になって理由を聞いてみても、曖昧に笑ってはぐらかすだけで教えてくれないの。いつもなら私たちに隠し事するような子じゃないのに」

「こんなこと初めてなので、舞ちゃんが心配なのですー。私たちに話せない内容で悩んでいるみたいなのでー、いっそのこと気分転換にでもどこか外出しようかなーと思ったわけでー。それなら司さんも誘っちゃえば面白……舞ちゃんも嬉しいかなーと」

「初めての経験。この胸が高鳴るような感覚。体温、心拍数ともに上昇。まさか……これが恋? 美味しい食べ物さえあれば、私は平常運転。司がいれば自ずと美味しいものが食べれるはず。そう、これは戦略的思考の結果によるもの」

 なんか心の本音がダダ漏れなきもするが、この3人は本当に舞のことを思ってのことだろう。口では何だかんだ言っても、根は良い連中なのだ。しかしながら、全てが善意ではなく、ついでに、あわよくば自分が楽しめればという魂胆があるのが残念なところである。

「……わかった。そういうことなら、なんとかしよう。あとでスケジュールだけは教えてくれ。内容は任せるぞ? あと、うちの兎神たちにも言っとかないとい……」

「司様、予定は問題ありません。ぜひ、同行されてください。移動する予定については少し後送りになりますが、多少睡眠時間を切り詰めればいけるでしょう。大丈夫です」

 兎神がどこからともなく現れて、残酷なことを告げる。

「それって、後で俺が死ぬだけじゃ……」

「大丈夫です」

 この世には理不尽が溢れている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...