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第4章 旅にアクシデントはお約束?
4-51 旅にアクシデントはお約束?②
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リリが本来の姿で走り去った後、最初に呆然とした空気を払拭したのは司だった。司は何を考えたのか、無言で上着と靴を脱ぎ出したのだ。まるで泳いで追いかけると言わんばかりに。
「ま、待ってください! 司さん、まさか泳いで追いかける気じゃないですよね!?」
それを慌てて止めたのは舞だ。今にも飛び込もうとしている司を、舞は身体全体を使って遮る。
「舞、止めないでくれ。早く、リリを追いかけないと」
「司さんが泳いで行ったとして、追いつくまでにどれくらいかかると思っているのですか!? リリはあのスピードで走っていったんですよ!?」
リリの移動速度を、文字通り身をもって知っている舞は、それこそ、この船の全速力で追いかけても追いつけないことがわかっている。まして、司が泳いで行ったら、リリに追いつく前に確実に2次遭難だ。
「それでも、行かないと……!!?」
それでも、話を聞こうとせず、舞を押しのけて行こうとした司の頬に鋭い痛みが走る。舞が司の頬を張ったのだ。しかも、その目には涙が溢れている。
「落ち着きなさい、事情を話せば、みんなはわかってくれます。こういう時に、リリの事を一番よく知っている司さんが冷静にならなければ、一体誰が、それをできるというんですか?」
舞のおかげで少し冷静に戻った司は、枝垂れかかってきている舞を受け止めた体勢で深く深呼吸をした。
「すまない…………舞、ありがとう」
「あの~、そろそろ、話しかけてもよろしいですかね~? あ、お邪魔そうでしたら、あと5分くらいは待ちますけど~」
2人のラブコメ的な展開を見守っていた一同だが、澪が代表して声をかける。意図せずに抱き着く格好になっていた司と舞。しかも、司は上半身裸である。折角、いい感じの2人の邪魔をしちゃ悪いかな~っと思いつつも、このままでは埒があかないので痺れを切らして話しかけたようだ。
「だ、だ、だだだ、大丈夫です!」
そして、今の自分の状態を認識した舞は、縮地のような物凄い速さで距離を取った。その様子を周りで見ていた詠美と優は、ニヤニヤとしていて、とても悪い顔をしていた。この2人に自重という文字はない。
「みんな、リリの事は……」
「坊主、そんなことよりも、今は追いかけるほうが先なんじゃろ? 婆さん、あの方向はちとやっかいじゃが、なんとかなるじゃろ?」
「もちろんだよ。いや~、この歳にもなってあんなにびっくりすることになるとは思わなかったね、あははは。さぁ、あの子がどこまでいったかわからないけど、急いで追いかけるよ。視界が悪いけど出来る限りスピード出すから、みんなも気をつけな」
「婆さん、わしら年寄だから、余り急に驚くと、心臓も止まってぽっくり逝っちまうぞ!」
「爺、うるさいよ! 早く準備しな! あと、わたしゃ、まだまだ現役だよ!」
玄次郎と妙子は詳しいことは聞かず、シーンとなっていた雰囲気も笑いで吹き飛ばしてくれた。流石、この辺りは年の功である。何か不思議なことが起こっても、即座に通常運転に戻ることができる、経験の差で胆の座り方が若者とは違うのである。
「……ありがとう」
一行はリリの向かったほうへ船を進める。移動の最中、澪が司に話しかけてきた。
「司さん、リリちゃんのことですけど~、無理に話さなくても結構ですよ~。勿論、知りたいという想いはありますけど、事情があるんでしょうし~。私たちにとって、リリちゃんはリリちゃんですから~」
「そうそう、秘密の1つや2つくらいあるもんよ。あれくらいことで驚いてたら舞の友達なんてやっていけないって。それにリリちゃんが何者でも可愛いことには変わらないじゃん? まぁ、舞は事情を知っていたみたいだけどね~」
「……その言い方は、なんか納得いきませんけど。でも、みんなありがとう」
「一度、自分の行いを見つめてみるといい。私たち一般人から見たら、宗司と舞は非常識の塊。この際、1つ2つ増えても何も変わらない」
「いや、ここまで世話になっているんだ、話せることは話すよ。でも、リリを見つけるまで少し待ってくれ」
「司さん、落ち着いてください。リリなら大丈夫です。きっと何か理由があるのですよ」
いつも落ち着いている司が、今回は余裕が見られない。リリがいなくなることで、ここまで不安になるとは思わなかったのだろう。
……ウォーン、ウォウォウォーン……ウォウォウォーン……。
「!? あっちだ! 近いです! 妙子さん、お願いします!」
「おっしゃ! 任せな! みんな、危ないから手すりにつかまってなよ!」
司には、今リリが吼える声が確かに聞こえた。短く3回の遠吠え。緊急時に司が教えたやり取り、救援信号だ。リリは無事で、どうやら何かを見つけたようだ。
「ま、待ってください! 司さん、まさか泳いで追いかける気じゃないですよね!?」
それを慌てて止めたのは舞だ。今にも飛び込もうとしている司を、舞は身体全体を使って遮る。
「舞、止めないでくれ。早く、リリを追いかけないと」
「司さんが泳いで行ったとして、追いつくまでにどれくらいかかると思っているのですか!? リリはあのスピードで走っていったんですよ!?」
リリの移動速度を、文字通り身をもって知っている舞は、それこそ、この船の全速力で追いかけても追いつけないことがわかっている。まして、司が泳いで行ったら、リリに追いつく前に確実に2次遭難だ。
「それでも、行かないと……!!?」
それでも、話を聞こうとせず、舞を押しのけて行こうとした司の頬に鋭い痛みが走る。舞が司の頬を張ったのだ。しかも、その目には涙が溢れている。
「落ち着きなさい、事情を話せば、みんなはわかってくれます。こういう時に、リリの事を一番よく知っている司さんが冷静にならなければ、一体誰が、それをできるというんですか?」
舞のおかげで少し冷静に戻った司は、枝垂れかかってきている舞を受け止めた体勢で深く深呼吸をした。
「すまない…………舞、ありがとう」
「あの~、そろそろ、話しかけてもよろしいですかね~? あ、お邪魔そうでしたら、あと5分くらいは待ちますけど~」
2人のラブコメ的な展開を見守っていた一同だが、澪が代表して声をかける。意図せずに抱き着く格好になっていた司と舞。しかも、司は上半身裸である。折角、いい感じの2人の邪魔をしちゃ悪いかな~っと思いつつも、このままでは埒があかないので痺れを切らして話しかけたようだ。
「だ、だ、だだだ、大丈夫です!」
そして、今の自分の状態を認識した舞は、縮地のような物凄い速さで距離を取った。その様子を周りで見ていた詠美と優は、ニヤニヤとしていて、とても悪い顔をしていた。この2人に自重という文字はない。
「みんな、リリの事は……」
「坊主、そんなことよりも、今は追いかけるほうが先なんじゃろ? 婆さん、あの方向はちとやっかいじゃが、なんとかなるじゃろ?」
「もちろんだよ。いや~、この歳にもなってあんなにびっくりすることになるとは思わなかったね、あははは。さぁ、あの子がどこまでいったかわからないけど、急いで追いかけるよ。視界が悪いけど出来る限りスピード出すから、みんなも気をつけな」
「婆さん、わしら年寄だから、余り急に驚くと、心臓も止まってぽっくり逝っちまうぞ!」
「爺、うるさいよ! 早く準備しな! あと、わたしゃ、まだまだ現役だよ!」
玄次郎と妙子は詳しいことは聞かず、シーンとなっていた雰囲気も笑いで吹き飛ばしてくれた。流石、この辺りは年の功である。何か不思議なことが起こっても、即座に通常運転に戻ることができる、経験の差で胆の座り方が若者とは違うのである。
「……ありがとう」
一行はリリの向かったほうへ船を進める。移動の最中、澪が司に話しかけてきた。
「司さん、リリちゃんのことですけど~、無理に話さなくても結構ですよ~。勿論、知りたいという想いはありますけど、事情があるんでしょうし~。私たちにとって、リリちゃんはリリちゃんですから~」
「そうそう、秘密の1つや2つくらいあるもんよ。あれくらいことで驚いてたら舞の友達なんてやっていけないって。それにリリちゃんが何者でも可愛いことには変わらないじゃん? まぁ、舞は事情を知っていたみたいだけどね~」
「……その言い方は、なんか納得いきませんけど。でも、みんなありがとう」
「一度、自分の行いを見つめてみるといい。私たち一般人から見たら、宗司と舞は非常識の塊。この際、1つ2つ増えても何も変わらない」
「いや、ここまで世話になっているんだ、話せることは話すよ。でも、リリを見つけるまで少し待ってくれ」
「司さん、落ち着いてください。リリなら大丈夫です。きっと何か理由があるのですよ」
いつも落ち着いている司が、今回は余裕が見られない。リリがいなくなることで、ここまで不安になるとは思わなかったのだろう。
……ウォーン、ウォウォウォーン……ウォウォウォーン……。
「!? あっちだ! 近いです! 妙子さん、お願いします!」
「おっしゃ! 任せな! みんな、危ないから手すりにつかまってなよ!」
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