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第5章 地球と彼の地を結ぶ門
5-11 山登りの前にすることは?①
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樹海を抜け、山の麓にたどり着いた3人と1匹は、登り始める前に休息と入念な確認を行っていた。山登りは下手をすると大惨事を巻き起こす。決して遊びではないのだ。
「さて、明日から山を登るわけだが、色々と確認しておかなければならないことがある。体力が有り余っているからと言って、がーっと走って、がーっと登ればいいというわけではない。無論、私1人であれば、1日でさくっと行けるわけだが……」
宗司が司たちに山登りのレクチャーを行う。割と真面目に。
宗司はかなり破天荒ではあるが、現実主義者でもあるのだ。個人の力量をきちんと認識しており、自分ができるから他人もできるだろう、などという暴論を言い出すことはない。
山登りには注意するべきことが山ほどある。装備であったり、天気であったり、高山病であったり、食事の方法であったり、トイレの方法などなど。
装備関係は事前に準備してきた。天候も幸運なことに晴天、途中での急な変化については臨機応変に対処するしかない。高山病についてはゆっくりと慣らしながら登るしかないが、時間をかければかけるほどリスクも増す。食料はもちろん有限だし、一気に飲食して体調不良にならないように少量を複数回にわける必要がある。トイレは……舞がいるのだ、察してほしい。
そして、一番の問題は水分である。山には当然ながら水の補給が出来る場所がない。雪山であれば、その辺の雪を溶かして水を得ることも可能だが、貴重な燃料を消費することからケースバイケースだ。ちなみに司たちが登る山は、山頂付近が白む程度なので途中での補給は期待ができない。
「ということで、本日1日は飲み水を確保しながらのキャンプとなる。水は付近の湧水から拝借しよう。使用するのは……これだ」
地下からの湧水がそのまま飲水できれば何の問題もないが、いつもそんな状況とは限らない。ここで役に立つのが簡易ろ過装置である。フィルター内臓で高性能なものは、普通では飲めない水も99.9%の異物除去が可能で、飲水可能状態にすることができる。装置自体のサイズもコンパクトである。
「では、舞とリリちゃんは本日の食材の確保、私と司は水の確保へ向かう! 集合場所はここだ。緊急時には発煙筒で信号弾を撃て。確認次第、即合流だ。舞にはリリちゃんがついているから大丈夫かとは思うが、迷うなよ? では解散!」
こちらは食料調達班の舞とリリ。
リリに跨っての移動は凄まじく速い。地面を走るだけではなく、木々を足場に跳ねて移動することもできるため、まさに縦横無尽だ。ただ、問題がないわけではない。リリの速度に対応するには乗る側にもかなりの筋力や体幹が要求される。何故なら、力いっぱいしがみ付いていないと、風圧や慣性で振り落とされてしまうからだ。
「リリ、これだけ離れればいいでしょう。良さそうなところで降ろしてください」
「はい! わかりました!」
リリは木々がやや開けたところに着地すると、舞が地面に降りやすいように屈む姿勢をとった。舞はリリの背中から降りると、強張った身体を解しながら話しかける。
「さて、ちょっとだけお話ししましょう。リリ、司さんは何か様子が変じゃなかったですか? 妙に宗司兄と仲が良いというか、私に余所余所しいというか、どう思います?」
「んー?」
舞がそう切り出すと、リリは少しだけ考える仕草を見せた。
「あの2人は、どうやら私たちに何か隠し事をしているような気がします。ええ、根拠なんてありませんけど……所謂、乙女の勘ですね」
こういう女の勘は決して侮ってはいけない。男が隠し事をしても、大抵の場合は簡単に見破られてしまうことを心してほしい。もう一度言おう、女の勘というのは恐ろしい。
「お二人は今回のお仕事についてお話していたみたいですけど、私には難しくてよくわかりませんでした。宗司さんの身体のお話と、本のお話と、世界のお話と、今回のお仕事は危ないかもしれない? っていうお話でした」
司たちの密談は、リリにはバッチリと聞こえていたらしい。しかし、まだ幼いリリには内容がいまいち理解できていなかったようだ。断片的すぎて逆に意味不明である。これでは舞には伝わらないだろう。
「なるほど、正確な内容はわかりませんけど、少なくとも私たちに聞かれたくない内容を話し合っていたことは間違いないようですね。当初からリリは同行を反対されてましたし、私がついて行くとわかった時も驚いていましたから。そして、もし危険があるならば、私はともかくとして司さんがリリに伝えないことは絶対に有り得ません」
「となると、何かを確信した上で敢えて隠している、というのが妥当ですね。最悪、目的の場所にたどり着く前に、2人に出し抜かれてしまう可能性すらあるということですか」
……どこの名探偵か。勘が鋭すぎるというのも困りものである。
「さて、明日から山を登るわけだが、色々と確認しておかなければならないことがある。体力が有り余っているからと言って、がーっと走って、がーっと登ればいいというわけではない。無論、私1人であれば、1日でさくっと行けるわけだが……」
宗司が司たちに山登りのレクチャーを行う。割と真面目に。
宗司はかなり破天荒ではあるが、現実主義者でもあるのだ。個人の力量をきちんと認識しており、自分ができるから他人もできるだろう、などという暴論を言い出すことはない。
山登りには注意するべきことが山ほどある。装備であったり、天気であったり、高山病であったり、食事の方法であったり、トイレの方法などなど。
装備関係は事前に準備してきた。天候も幸運なことに晴天、途中での急な変化については臨機応変に対処するしかない。高山病についてはゆっくりと慣らしながら登るしかないが、時間をかければかけるほどリスクも増す。食料はもちろん有限だし、一気に飲食して体調不良にならないように少量を複数回にわける必要がある。トイレは……舞がいるのだ、察してほしい。
そして、一番の問題は水分である。山には当然ながら水の補給が出来る場所がない。雪山であれば、その辺の雪を溶かして水を得ることも可能だが、貴重な燃料を消費することからケースバイケースだ。ちなみに司たちが登る山は、山頂付近が白む程度なので途中での補給は期待ができない。
「ということで、本日1日は飲み水を確保しながらのキャンプとなる。水は付近の湧水から拝借しよう。使用するのは……これだ」
地下からの湧水がそのまま飲水できれば何の問題もないが、いつもそんな状況とは限らない。ここで役に立つのが簡易ろ過装置である。フィルター内臓で高性能なものは、普通では飲めない水も99.9%の異物除去が可能で、飲水可能状態にすることができる。装置自体のサイズもコンパクトである。
「では、舞とリリちゃんは本日の食材の確保、私と司は水の確保へ向かう! 集合場所はここだ。緊急時には発煙筒で信号弾を撃て。確認次第、即合流だ。舞にはリリちゃんがついているから大丈夫かとは思うが、迷うなよ? では解散!」
こちらは食料調達班の舞とリリ。
リリに跨っての移動は凄まじく速い。地面を走るだけではなく、木々を足場に跳ねて移動することもできるため、まさに縦横無尽だ。ただ、問題がないわけではない。リリの速度に対応するには乗る側にもかなりの筋力や体幹が要求される。何故なら、力いっぱいしがみ付いていないと、風圧や慣性で振り落とされてしまうからだ。
「リリ、これだけ離れればいいでしょう。良さそうなところで降ろしてください」
「はい! わかりました!」
リリは木々がやや開けたところに着地すると、舞が地面に降りやすいように屈む姿勢をとった。舞はリリの背中から降りると、強張った身体を解しながら話しかける。
「さて、ちょっとだけお話ししましょう。リリ、司さんは何か様子が変じゃなかったですか? 妙に宗司兄と仲が良いというか、私に余所余所しいというか、どう思います?」
「んー?」
舞がそう切り出すと、リリは少しだけ考える仕草を見せた。
「あの2人は、どうやら私たちに何か隠し事をしているような気がします。ええ、根拠なんてありませんけど……所謂、乙女の勘ですね」
こういう女の勘は決して侮ってはいけない。男が隠し事をしても、大抵の場合は簡単に見破られてしまうことを心してほしい。もう一度言おう、女の勘というのは恐ろしい。
「お二人は今回のお仕事についてお話していたみたいですけど、私には難しくてよくわかりませんでした。宗司さんの身体のお話と、本のお話と、世界のお話と、今回のお仕事は危ないかもしれない? っていうお話でした」
司たちの密談は、リリにはバッチリと聞こえていたらしい。しかし、まだ幼いリリには内容がいまいち理解できていなかったようだ。断片的すぎて逆に意味不明である。これでは舞には伝わらないだろう。
「なるほど、正確な内容はわかりませんけど、少なくとも私たちに聞かれたくない内容を話し合っていたことは間違いないようですね。当初からリリは同行を反対されてましたし、私がついて行くとわかった時も驚いていましたから。そして、もし危険があるならば、私はともかくとして司さんがリリに伝えないことは絶対に有り得ません」
「となると、何かを確信した上で敢えて隠している、というのが妥当ですね。最悪、目的の場所にたどり着く前に、2人に出し抜かれてしまう可能性すらあるということですか」
……どこの名探偵か。勘が鋭すぎるというのも困りものである。
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