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第5章 地球と彼の地を結ぶ門
5-13 不思議な山を登る旅①
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昨夜は早めに休んだ司たちは、日の出と共に動き出した。
リリに埋もれてぐっすりと休むことができたので体力も万全だ。身の回りの支度が出来たら、司たちは朝食にスープと固形栄養食、リリはナッツと水を取る。朝食が終わったら、火の始末をして竈を崩す。帰りも使用する可能性があるため、完全には破壊しない。
続いて装備を確認、ザイルやピッケルなどをいつでも使えるように取り出しておく。断崖絶壁のような険しい山ではないので使用しない可能性もあるが念のためである。水と食料、医療品は全員が均等になるように配分する。リリの分の水については、最も力のある宗司が持つことになった。
事前にトイレに行っておくことも重要だ。登り始めたら場所によっては我慢しなければならない時もある。
「さぁ、準備できたな? では、登っていこう。目標は2日で頂上付近まで行く予定となる。体調の変化に気をつけろよ?」
「準備完了です」
宗司の号令に従って、司たちが追従する。ここからは先頭から宗司、司、舞、リリの順番で縦列編成となる。知識のある宗司が前を歩き、もしもの場合に臨機応変に行動ができる身軽なリリが最後尾を歩く。これが現状最も危険性が少なくなるのだ。
一行は土がむき出しで、ゴロゴロと大小様々な石が転がる山道を進んでいく。開拓されていない森を切り開いて進むよりははるかにマシだが、舗装されている道と比べると歩くだけでも驚くほど体力を消耗する。足場も悪いため、転倒や滑落に注意しなければいけないため、余計に疲労は蓄積する。宗司が1時間に1回、軽食と休憩をとるといった意味が分かった気がする。疲労して集中力が切れることで不慮の事故が起こることが最も恐ろしい。
麓を出発して数時間、風景の変わらぬ山道をひたすら登る。こんなに口数が少ないのも珍しい。
宗司は慣れているから除外するとして、司と舞も体力がないわけではない。特に舞は学校で体力オバケと呼ばれているくらいだ。だが慣れない山道で体力を消耗するためか、いつものような和やかな空気がない。歩くのに必死、といった印象を受ける。
いつもと全く変わらないのはリリくらいである。森に住んでいて山に来るのは初めてなのだろう。見るものが新鮮なのか目を輝かせてきょろきょろと観察している。歩く足取りもしっかりしていて、初めての山歩きとは思えないくらいだ。
しかし、司が話し相手になってくれないのが暇なのか、時々岩陰に獲物を見つけては追いかけていた。まぁ、処理ができないため獲らないように言われているので本気で追いかけたりはしていない。鬼ごっこ感覚である。
「宗司兄、あれって大丈夫な生き物なんですか? リリが追いかけ回してるんですけど……危なくないんですか?」
よく見かけるのは体長2メートル程度の岩肌のような鱗を持つごついイグアナモドキが多い。緑も少なく、食べる物がなさそうな山岳部にこれほど生息しているのは不思議だったが、どうやら石を食べて生きているらしい。まさにロックリザード的な何かである。リリに追いかけられると、鈍重な見た目に反して驚くほど素早く逃げていくのが印象的だった。
「ん? あれか、割と美味いぞ? 一番近いのはワニ肉か。なんだ、食べたいのか?」
宗司よ、舞が聞きたいのは、きっとそうではないと思う。
「いえ、私が聞きたいのは、アレが凶暴な生物か? ということで、さらにはリリが危なくないですか? ということです」
「ああ、私は1度も襲われたことはないな。それにリリちゃんなら大丈夫だろう。そもそも、私が本気になっても捕らえられないんだぞ? 判断能力も素晴らしい逸材だ。あれは遊んでいるだけで、何も問題ない。第一、危なそうなら、司が止めるさ」
この言葉には司も苦笑い。
基本的にリリはお利口さんである。危ないと思うことは絶対にしないし、自分は何ができて何ができないのかをよく理解している。今回も危険はないと思っているのだろう。だが、窮鼠猫を噛むということもあるので油断は禁物である。
「司さーん! あのトカゲさんとっても足速いです! 本気になって追いかけないと捕まえられないかもしれません!」
リリが鬼ごっこに満足したのか、司の元に帰ってきた。やや興奮気味に自分の成果を報告している。どうやら狩りのシミュレーションをしていたようだ。
「そうか……もし食料が必要になったら、リリに頼むよ」
「! はい! 任せてください!」
司の言葉を聞いたリリの尻尾がぶるんぶるんと旋回する。リリの目がいつ獲るの? いつ獲るの? と言わんばかりに爛々と輝いている。
これはまずいことを言ったかもしれないと、司が舞たちに助けを求めるように視線を向けると、舞たちはわざとらしくさっと視線を外してしまった。リリの視線は司に向かって一心に注がれている。かなりの期待を含んで。尻尾にも感情が現れている。
あちゃー、これは今日の夜ご飯のために、リリに獲物を調達してもらわないと納まらないかもしれない……と考える宗司だった。
リリに埋もれてぐっすりと休むことができたので体力も万全だ。身の回りの支度が出来たら、司たちは朝食にスープと固形栄養食、リリはナッツと水を取る。朝食が終わったら、火の始末をして竈を崩す。帰りも使用する可能性があるため、完全には破壊しない。
続いて装備を確認、ザイルやピッケルなどをいつでも使えるように取り出しておく。断崖絶壁のような険しい山ではないので使用しない可能性もあるが念のためである。水と食料、医療品は全員が均等になるように配分する。リリの分の水については、最も力のある宗司が持つことになった。
事前にトイレに行っておくことも重要だ。登り始めたら場所によっては我慢しなければならない時もある。
「さぁ、準備できたな? では、登っていこう。目標は2日で頂上付近まで行く予定となる。体調の変化に気をつけろよ?」
「準備完了です」
宗司の号令に従って、司たちが追従する。ここからは先頭から宗司、司、舞、リリの順番で縦列編成となる。知識のある宗司が前を歩き、もしもの場合に臨機応変に行動ができる身軽なリリが最後尾を歩く。これが現状最も危険性が少なくなるのだ。
一行は土がむき出しで、ゴロゴロと大小様々な石が転がる山道を進んでいく。開拓されていない森を切り開いて進むよりははるかにマシだが、舗装されている道と比べると歩くだけでも驚くほど体力を消耗する。足場も悪いため、転倒や滑落に注意しなければいけないため、余計に疲労は蓄積する。宗司が1時間に1回、軽食と休憩をとるといった意味が分かった気がする。疲労して集中力が切れることで不慮の事故が起こることが最も恐ろしい。
麓を出発して数時間、風景の変わらぬ山道をひたすら登る。こんなに口数が少ないのも珍しい。
宗司は慣れているから除外するとして、司と舞も体力がないわけではない。特に舞は学校で体力オバケと呼ばれているくらいだ。だが慣れない山道で体力を消耗するためか、いつものような和やかな空気がない。歩くのに必死、といった印象を受ける。
いつもと全く変わらないのはリリくらいである。森に住んでいて山に来るのは初めてなのだろう。見るものが新鮮なのか目を輝かせてきょろきょろと観察している。歩く足取りもしっかりしていて、初めての山歩きとは思えないくらいだ。
しかし、司が話し相手になってくれないのが暇なのか、時々岩陰に獲物を見つけては追いかけていた。まぁ、処理ができないため獲らないように言われているので本気で追いかけたりはしていない。鬼ごっこ感覚である。
「宗司兄、あれって大丈夫な生き物なんですか? リリが追いかけ回してるんですけど……危なくないんですか?」
よく見かけるのは体長2メートル程度の岩肌のような鱗を持つごついイグアナモドキが多い。緑も少なく、食べる物がなさそうな山岳部にこれほど生息しているのは不思議だったが、どうやら石を食べて生きているらしい。まさにロックリザード的な何かである。リリに追いかけられると、鈍重な見た目に反して驚くほど素早く逃げていくのが印象的だった。
「ん? あれか、割と美味いぞ? 一番近いのはワニ肉か。なんだ、食べたいのか?」
宗司よ、舞が聞きたいのは、きっとそうではないと思う。
「いえ、私が聞きたいのは、アレが凶暴な生物か? ということで、さらにはリリが危なくないですか? ということです」
「ああ、私は1度も襲われたことはないな。それにリリちゃんなら大丈夫だろう。そもそも、私が本気になっても捕らえられないんだぞ? 判断能力も素晴らしい逸材だ。あれは遊んでいるだけで、何も問題ない。第一、危なそうなら、司が止めるさ」
この言葉には司も苦笑い。
基本的にリリはお利口さんである。危ないと思うことは絶対にしないし、自分は何ができて何ができないのかをよく理解している。今回も危険はないと思っているのだろう。だが、窮鼠猫を噛むということもあるので油断は禁物である。
「司さーん! あのトカゲさんとっても足速いです! 本気になって追いかけないと捕まえられないかもしれません!」
リリが鬼ごっこに満足したのか、司の元に帰ってきた。やや興奮気味に自分の成果を報告している。どうやら狩りのシミュレーションをしていたようだ。
「そうか……もし食料が必要になったら、リリに頼むよ」
「! はい! 任せてください!」
司の言葉を聞いたリリの尻尾がぶるんぶるんと旋回する。リリの目がいつ獲るの? いつ獲るの? と言わんばかりに爛々と輝いている。
これはまずいことを言ったかもしれないと、司が舞たちに助けを求めるように視線を向けると、舞たちはわざとらしくさっと視線を外してしまった。リリの視線は司に向かって一心に注がれている。かなりの期待を含んで。尻尾にも感情が現れている。
あちゃー、これは今日の夜ご飯のために、リリに獲物を調達してもらわないと納まらないかもしれない……と考える宗司だった。
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