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第5章 地球と彼の地を結ぶ門
5-27 天空を翔る母鳥②
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司たちが食事を始めた途端、クーシュはきっちりと起床して食べ物を強請る。相変わらず、食い意地の張った……もとい、育ち盛りの鳥である。
「手持ちも結構少なくなってきたなぁ」
ここ最近は保存食を消費して過ごしているため、司たちのリュックの中身は心もとなくなってきていた。思った以上にリリとクーシュがかなりの量を消費するのも原因ではある。
「節約しても、あと5日分くらいか? 残り3日分を切ったら、自給自足生活に突入だな!」
「食料はどうにでもなりますけど、お風呂のほうが深刻ですよ。私、もう何日入ってないのでしょうか……とても複雑です」
元々、野生に放り込んでも十分に自活できる宗司は割と楽しそうである。舞はお風呂を欲しているようだ。年頃の乙女なのだからわからないでもない。食事はどうとでもなると思っている時点で、普通の乙女とはかけ離れているのだが。
「娘、そのお風呂とやらは何なのだ? なければ困るのか?」
母鳥が急に話に割り込んできた。
「え? えーと、お風呂というのは、温かい水で身体を洗うことですね」
「ふむ、それは水浴びのようなものか?」
「ええ、私たちは定期的に身体を洗う習慣があるのですよ……可能ならば、毎日でもお風呂に入りたいのです」
舞の説明でお風呂の内容を理解したようだ。母鳥が寄り道を提案して、舞が歓喜しながら即座に了承した。こういう時は、男2人に決定権はないのである。
母鳥に案内されたのは、とある山の麓に広がる、25メートルプールよりも大きい湖。
ただし、普通の水ではなく湯気が立ち上っている。所謂、温泉というものである。簡易的にガスチェックと水質チェックを行ったが、入浴しても問題ないレベルであった。
「舞、大丈夫そう……」
司が言うよりも早く、舞はてきぱきと着替え用のテントを設営していた。折角のチャンスを逃してなるものかと、既に入る気満々である。
ちなみに母鳥とクーシュの姉妹2匹は一足先に温泉に浸かっていた。母鳥は身体が大きすぎて足湯みたいになっている。姉妹たちはペンギンのような形状をしているだけあって、スイスイと母鳥の周りを泳いでいて楽しそうだ。そして、早く早くと言いたそうなクーシュとリリの視線が司に突き刺さる。解せぬ。
当然、男女混浴とはいかないため、2手に分かれることになった。
司、宗司、クーシュの男子グループ。舞、リリ、母鳥たちの女子グループとなる。クーシュは司から離れないので男湯にご案内である。リリは念のため舞の護衛として残したようだ。若干、司と入りたそうな素振りはしていたが、これも仕事なのでしょうがない。
すぐに最低限の荷物を持って、舞たちから離れていく司と宗司。司はラッキースケベをしようものなら、宗司にボコボコにされることが目に見えているので、行動は素早い。
「あぁぁぁ! 生き返るぅぅぅぅぅ」
舞は温泉に浸かった途端、やけに親父臭いセリフを吐いた。久方ぶりの入浴なので大目に見てあげてほしい。温泉に感動したからであって、舞がいつもこうではないのである。女子力もそれなりに育ってきてはいるのだ。
「舞さん、気持ちいいですね~」
お湯の温度は38度くらいだろうか。熱くもなく、温くもなく、丁度いいくらいの温度であった。リリもわふわふ言いながら、久しぶりの温泉を楽しんでいた。リリは舞に身体を洗ってもらってからは、バシャバシャと犬かきで広さを存分に堪能している。リリを追いかけるようにクーシュの姉妹たちが後をついて泳いで行くのが微笑ましい。
「わらわたちは水に浸かるという習慣はないのだが……おぬしたちを見ていると、これが相当に良い物に見える。娘たちも楽しんでおるようだ」
「本当に感謝ですよ。こんなに広い温泉は初めてですから、とても気持ちいいです」
温泉に浸かりながらじっと観察していた母鳥だったが、温泉を堪能する舞と追いかけっこをするリリ達を見て少し嬉しそうだった。これからは入浴が彼女たちの習慣化するかもしれない。
舞たちから離れること20メートルほど、男子グループも温泉を楽しんでいた。
「クーシュ、お風呂に入る前は身体を洗わないとダメだぞ?」
「ぴゅい?」
そうなの? とでも言いたげなクーシュを、入浴前にお湯で身体を濡らしてから丁寧に擦ると、あっという間にタオルが土色になった。見た目よりもかなり汚れていたようだ。そう言えば、司がクーシュと出会った時は地面に蹲って泣いていた。もしかしたら山の中で転んで動けなくなっていたのかもしれない。
「ふぅ、良い湯加減だなぁ。クーシュ、気持ちいいか?」
「ぴゅい~~」
どれくらい深いのかがわからないので、クーシュは司に抱えられて入浴するようだ。司の膝に座り、折りたたんだタオルを頭にちょこんと乗せたクーシュは、初めての温泉を堪能している。うっとりと目を細めているので、きっと気持ちがいいのだろう。これが所謂、温泉ペンギンというやつなのか。
異世界に来てまで温泉に入れるとは思ってもいなかった司たちは、母鳥の気遣いに感謝をしながら、各々でしっかりと温泉を堪能するのだった。
「手持ちも結構少なくなってきたなぁ」
ここ最近は保存食を消費して過ごしているため、司たちのリュックの中身は心もとなくなってきていた。思った以上にリリとクーシュがかなりの量を消費するのも原因ではある。
「節約しても、あと5日分くらいか? 残り3日分を切ったら、自給自足生活に突入だな!」
「食料はどうにでもなりますけど、お風呂のほうが深刻ですよ。私、もう何日入ってないのでしょうか……とても複雑です」
元々、野生に放り込んでも十分に自活できる宗司は割と楽しそうである。舞はお風呂を欲しているようだ。年頃の乙女なのだからわからないでもない。食事はどうとでもなると思っている時点で、普通の乙女とはかけ離れているのだが。
「娘、そのお風呂とやらは何なのだ? なければ困るのか?」
母鳥が急に話に割り込んできた。
「え? えーと、お風呂というのは、温かい水で身体を洗うことですね」
「ふむ、それは水浴びのようなものか?」
「ええ、私たちは定期的に身体を洗う習慣があるのですよ……可能ならば、毎日でもお風呂に入りたいのです」
舞の説明でお風呂の内容を理解したようだ。母鳥が寄り道を提案して、舞が歓喜しながら即座に了承した。こういう時は、男2人に決定権はないのである。
母鳥に案内されたのは、とある山の麓に広がる、25メートルプールよりも大きい湖。
ただし、普通の水ではなく湯気が立ち上っている。所謂、温泉というものである。簡易的にガスチェックと水質チェックを行ったが、入浴しても問題ないレベルであった。
「舞、大丈夫そう……」
司が言うよりも早く、舞はてきぱきと着替え用のテントを設営していた。折角のチャンスを逃してなるものかと、既に入る気満々である。
ちなみに母鳥とクーシュの姉妹2匹は一足先に温泉に浸かっていた。母鳥は身体が大きすぎて足湯みたいになっている。姉妹たちはペンギンのような形状をしているだけあって、スイスイと母鳥の周りを泳いでいて楽しそうだ。そして、早く早くと言いたそうなクーシュとリリの視線が司に突き刺さる。解せぬ。
当然、男女混浴とはいかないため、2手に分かれることになった。
司、宗司、クーシュの男子グループ。舞、リリ、母鳥たちの女子グループとなる。クーシュは司から離れないので男湯にご案内である。リリは念のため舞の護衛として残したようだ。若干、司と入りたそうな素振りはしていたが、これも仕事なのでしょうがない。
すぐに最低限の荷物を持って、舞たちから離れていく司と宗司。司はラッキースケベをしようものなら、宗司にボコボコにされることが目に見えているので、行動は素早い。
「あぁぁぁ! 生き返るぅぅぅぅぅ」
舞は温泉に浸かった途端、やけに親父臭いセリフを吐いた。久方ぶりの入浴なので大目に見てあげてほしい。温泉に感動したからであって、舞がいつもこうではないのである。女子力もそれなりに育ってきてはいるのだ。
「舞さん、気持ちいいですね~」
お湯の温度は38度くらいだろうか。熱くもなく、温くもなく、丁度いいくらいの温度であった。リリもわふわふ言いながら、久しぶりの温泉を楽しんでいた。リリは舞に身体を洗ってもらってからは、バシャバシャと犬かきで広さを存分に堪能している。リリを追いかけるようにクーシュの姉妹たちが後をついて泳いで行くのが微笑ましい。
「わらわたちは水に浸かるという習慣はないのだが……おぬしたちを見ていると、これが相当に良い物に見える。娘たちも楽しんでおるようだ」
「本当に感謝ですよ。こんなに広い温泉は初めてですから、とても気持ちいいです」
温泉に浸かりながらじっと観察していた母鳥だったが、温泉を堪能する舞と追いかけっこをするリリ達を見て少し嬉しそうだった。これからは入浴が彼女たちの習慣化するかもしれない。
舞たちから離れること20メートルほど、男子グループも温泉を楽しんでいた。
「クーシュ、お風呂に入る前は身体を洗わないとダメだぞ?」
「ぴゅい?」
そうなの? とでも言いたげなクーシュを、入浴前にお湯で身体を濡らしてから丁寧に擦ると、あっという間にタオルが土色になった。見た目よりもかなり汚れていたようだ。そう言えば、司がクーシュと出会った時は地面に蹲って泣いていた。もしかしたら山の中で転んで動けなくなっていたのかもしれない。
「ふぅ、良い湯加減だなぁ。クーシュ、気持ちいいか?」
「ぴゅい~~」
どれくらい深いのかがわからないので、クーシュは司に抱えられて入浴するようだ。司の膝に座り、折りたたんだタオルを頭にちょこんと乗せたクーシュは、初めての温泉を堪能している。うっとりと目を細めているので、きっと気持ちがいいのだろう。これが所謂、温泉ペンギンというやつなのか。
異世界に来てまで温泉に入れるとは思ってもいなかった司たちは、母鳥の気遣いに感謝をしながら、各々でしっかりと温泉を堪能するのだった。
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