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第5章 地球と彼の地を結ぶ門
5-34 空飛ぶ島③
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司たちの前に、やせいのりゅう、があらわれた!
「リリ、よくわからないから、詳しく話してくれ……」
リリが言う様に、目の前のコレが竜であるならば、司たちの足の下にある空飛ぶ甲羅は何なのか。司の隣で話を聞いている舞も困惑気味だ。宗司に至っては筋トレをしている……流石に意識と耳は司たちに向いているようだが。
「……というわけなんです」
リリの主観での説明なので、情報に偏りがあるかもしれない。が、とりあえず司たちはコレが竜と認識したようだ。ただ、それを確認しようとしても、この竜、肯定か否定くらいしかしゃべらないので大変に効率が悪い。
司たちの質問にも返事をしてくれるのは救いだが、回答は当然2択である。正直な話、リリの特技で竜の心を読んでくれないと会話らしい会話が全くできない。以前、宗司が機械と話しているようだと言っていた理由がわかった気がする。
「整理すると……ここは竜の背中の上。リリの頭の上にいる小さい竜と、俺たちが立っている大きな竜は同一個体。小さいほうが本体で、大きいほうは乗り物のようなイメージ」
「肯定」
「竜の主な役割は、惑星外脅威の排除。つまりは、飛来する隕石群などへの迎撃行動(カウンターアタック)。そして、脅威の索敵及び報告」
「肯定」
「ただ、最近になって問題が生じた。原因は定かではないが、今まで指示をしていた司令塔からの連絡が途絶えた。竜側から何度も問いかけても応答がない。現在、迎撃行動は続けているが、司令塔からの補助がないので完璧とは言えず、また、新しい脅威が発生した場合、相談できないので対応に不備が生じる可能性がある」
「……肯定」
竜のキャラ自体はアナログなのに、行っていることは超高度な内容だった……という驚愕の事実が判明した。そして、リリの司を見るキラキラとした瞳が眩し過ぎて直視できない。期待をされても、このスケールの問題を司たちに解決しろというのは酷な話なのである。
しかも、舞は話についていけなくてクーシュをどうにか撫でようと試み中だし、宗司は筋トレ中だ。筋肉担当の2人は早々に考えることを放棄したようだ。今の司に援軍はいない。まさに孤立無援ではあるが……
「少し、考えさせてくれ……」
とりあえず時間を稼ぐことにした。
司だって本心では現実逃避をしたくてたまらないが、リリの手前、速攻で匙を投げるわけにはいかない。頼ってくる娘の期待に応えようとしない父親はいないのだから。己の威信にかけて、格好悪いところは見せたくないのだ。……出来るだけ。
色々とわからないことも増えたのだが、それでも竜のもたらした情報は貴重だった。探していた泉……竜の涙が、島の湖から流れ落ちたものだったとか。宗司が話していたのは、本人ならぬ本竜だったとか。島の湖の水は魔素の凝集体で不思議な効果があるとか。大きな竜は、その水をエネルギー源として稼働しているとか。
「司さん……竜さん、何とかしてあげられないですか?」
更にリリのダメ押しお願いアタックが発動した。既に、司のHP残量はゼロである。
「なぁ、リリ……素朴な質問なんだけどさ」
「はい? 何ですか?」
司には前々から1つ疑問に思っていることがあった。そして、少しずつ得られる情報を集約していくうちに、それが逆にどんどんわからなくなっていくのだ。
「大樹様ってさ、ウルの森で魔素を生み出していたんだろう? リリたちはその大樹様を守るためにあそこにいた。でも、本来は、どんな役割をしていたんだろうな?」
「あ……」
そう、大樹自体の役割が、わからないのである。リリたちウルの一族へ指示を出し、昔からあの場所で、何かをしていたはずなのだ。ウルの森から世界へ魔素を供給していたり、己の死期を悟ってリリを司の元に送り出したり、何か目的があってやっているとしか思えない。
『おや、これはお久しぶりですね。こちらであなたたちに出会うとは思ってもいませんでしたよ。始原より母なる大樹を守りし眷属の一族よ。あなたたちすらこちらに来ているということは、あちらはもうそういう状態なのですね』
前に、兎神が呟いたこのセリフ。あの兎神が、母なる大樹と言っているのだ。兎神は、リリに会う以前から明らかにウルの一族の存在を知っていた。そうでなければ、あの発言は出てこない。そうなれば当然、大樹と兎神たちだって無関係ではないはずだ。
「リリたちに己の身を守ってもらいながら、大樹様自身がしたいことが見えてこないんだ」
そして、司は、リリから大樹の話を聞けば聞くほど、大樹のことを樹木の形をした人工頭脳、つまりはAIのように思えて仕方がなかった。意思疎通はできるものの、感情に乏しく、思考が合理的で、生物らしいと思えない。
司から見れば、リリのほうが、余程人間臭いと思っている。もちろん、いい意味でだ。家族と過ごす時間を楽しみ、クーシュの行動に一喜一憂して、司に撫でてもらえればそれだけでご機嫌だ。最近は、前よりも自分の主張をするようになった。たまに司の言う事を聞かなくて困る時があるけれど、それは人間だって同じこと。
リリたちと大樹。動物と植物の違い、と言ってしまえばそれまでだが……それでも、この2者の存在は違いすぎるほど違うのだ。
「リリ、よくわからないから、詳しく話してくれ……」
リリが言う様に、目の前のコレが竜であるならば、司たちの足の下にある空飛ぶ甲羅は何なのか。司の隣で話を聞いている舞も困惑気味だ。宗司に至っては筋トレをしている……流石に意識と耳は司たちに向いているようだが。
「……というわけなんです」
リリの主観での説明なので、情報に偏りがあるかもしれない。が、とりあえず司たちはコレが竜と認識したようだ。ただ、それを確認しようとしても、この竜、肯定か否定くらいしかしゃべらないので大変に効率が悪い。
司たちの質問にも返事をしてくれるのは救いだが、回答は当然2択である。正直な話、リリの特技で竜の心を読んでくれないと会話らしい会話が全くできない。以前、宗司が機械と話しているようだと言っていた理由がわかった気がする。
「整理すると……ここは竜の背中の上。リリの頭の上にいる小さい竜と、俺たちが立っている大きな竜は同一個体。小さいほうが本体で、大きいほうは乗り物のようなイメージ」
「肯定」
「竜の主な役割は、惑星外脅威の排除。つまりは、飛来する隕石群などへの迎撃行動(カウンターアタック)。そして、脅威の索敵及び報告」
「肯定」
「ただ、最近になって問題が生じた。原因は定かではないが、今まで指示をしていた司令塔からの連絡が途絶えた。竜側から何度も問いかけても応答がない。現在、迎撃行動は続けているが、司令塔からの補助がないので完璧とは言えず、また、新しい脅威が発生した場合、相談できないので対応に不備が生じる可能性がある」
「……肯定」
竜のキャラ自体はアナログなのに、行っていることは超高度な内容だった……という驚愕の事実が判明した。そして、リリの司を見るキラキラとした瞳が眩し過ぎて直視できない。期待をされても、このスケールの問題を司たちに解決しろというのは酷な話なのである。
しかも、舞は話についていけなくてクーシュをどうにか撫でようと試み中だし、宗司は筋トレ中だ。筋肉担当の2人は早々に考えることを放棄したようだ。今の司に援軍はいない。まさに孤立無援ではあるが……
「少し、考えさせてくれ……」
とりあえず時間を稼ぐことにした。
司だって本心では現実逃避をしたくてたまらないが、リリの手前、速攻で匙を投げるわけにはいかない。頼ってくる娘の期待に応えようとしない父親はいないのだから。己の威信にかけて、格好悪いところは見せたくないのだ。……出来るだけ。
色々とわからないことも増えたのだが、それでも竜のもたらした情報は貴重だった。探していた泉……竜の涙が、島の湖から流れ落ちたものだったとか。宗司が話していたのは、本人ならぬ本竜だったとか。島の湖の水は魔素の凝集体で不思議な効果があるとか。大きな竜は、その水をエネルギー源として稼働しているとか。
「司さん……竜さん、何とかしてあげられないですか?」
更にリリのダメ押しお願いアタックが発動した。既に、司のHP残量はゼロである。
「なぁ、リリ……素朴な質問なんだけどさ」
「はい? 何ですか?」
司には前々から1つ疑問に思っていることがあった。そして、少しずつ得られる情報を集約していくうちに、それが逆にどんどんわからなくなっていくのだ。
「大樹様ってさ、ウルの森で魔素を生み出していたんだろう? リリたちはその大樹様を守るためにあそこにいた。でも、本来は、どんな役割をしていたんだろうな?」
「あ……」
そう、大樹自体の役割が、わからないのである。リリたちウルの一族へ指示を出し、昔からあの場所で、何かをしていたはずなのだ。ウルの森から世界へ魔素を供給していたり、己の死期を悟ってリリを司の元に送り出したり、何か目的があってやっているとしか思えない。
『おや、これはお久しぶりですね。こちらであなたたちに出会うとは思ってもいませんでしたよ。始原より母なる大樹を守りし眷属の一族よ。あなたたちすらこちらに来ているということは、あちらはもうそういう状態なのですね』
前に、兎神が呟いたこのセリフ。あの兎神が、母なる大樹と言っているのだ。兎神は、リリに会う以前から明らかにウルの一族の存在を知っていた。そうでなければ、あの発言は出てこない。そうなれば当然、大樹と兎神たちだって無関係ではないはずだ。
「リリたちに己の身を守ってもらいながら、大樹様自身がしたいことが見えてこないんだ」
そして、司は、リリから大樹の話を聞けば聞くほど、大樹のことを樹木の形をした人工頭脳、つまりはAIのように思えて仕方がなかった。意思疎通はできるものの、感情に乏しく、思考が合理的で、生物らしいと思えない。
司から見れば、リリのほうが、余程人間臭いと思っている。もちろん、いい意味でだ。家族と過ごす時間を楽しみ、クーシュの行動に一喜一憂して、司に撫でてもらえればそれだけでご機嫌だ。最近は、前よりも自分の主張をするようになった。たまに司の言う事を聞かなくて困る時があるけれど、それは人間だって同じこと。
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