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第5章 地球と彼の地を結ぶ門
5-41 思い付きは世界を変える
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宗司ゴーレムとドッタンバッタンを繰り返していた司たちだったが……。
「いやぁ、まいったまいった。まさか、私が取り込まれるとは思ってもみなかった! がはははは! まぁ、無事だったがな!」
満面の笑顔で地面に正座している宗司がいた。
「宗司兄……あなたという人は、何も反省していないようですね」
「ぴぃっ!?」
あっけらかんと話す宗司に、大氷原に吹き荒ぶ冷気のような声が、宗司の斜め上から浴びせられた。その声のあまりの怖さにリリとクーシュが司にくっつく。彼女たちは本能で察したのであろう、今の舞に近づいてはいけないと。
「舞よ。私は、心配するな、信じろといったはずだぞ? 第一、この通りに身体も元に戻ったし、怪我もしていない。ベストな戦果じゃないか!」
「そういう問題じゃありません!」
あの後、司たちはしばらくボコスカと殴り合いをしていた。これはどれだけ続くのかと辟易し始めたところで、宗司ゴーレムが急に機能を停止したのだった。そして、宗司自身が孵化の様に身体を覆っていた結晶を壊して脱出したことで問題を解決してしまったのだ。
「宗司さんは、初めからこうなることに気づいていたんですね? だから、宗司さんは石を担当することを俺たちに譲らなかったんですね。結果、どうなるかもわかってて、俺たちに無駄な心配かけないために黙ってた。でも、一番の理由は……」
「……まぁ、な」
非常にバツが悪そうに答える宗司。
「逆です! 教えてくれないほうが、どれだけ心配するか! この馬鹿兄は!」
司が言ったことも理由の一つ。だが、最も気にしていたのは妹の舞が危険に晒される可能性を出来る限り低くしたかったのだ。宗司にとっては、舞がアレに飲まれるほうが恐ろしかった。例え、後から舞に怒られたり恨まれたりされようとも。
「で、アレの説明、してくれるのでしょうね?」
「う、うむ……」
そう言って、粉々に砕け散った赤い結晶を指さして説明を求める舞。流石の宗司も話す気になったようだ。尤も、今の舞の剣幕には逆らえるような雰囲気ではないのだが。
「おぬしたち、あの石はなんだ? あれをどこで手に入れた?」
クーシュの母鳥もご立腹であった。
「私が知っていることと、どうなったかをすべて話そう」
宗司の説明はというと……。
赤い石は魔獣と呼称される生物から入手したこと。司たちは石を調べるために訪れたこと。竜の涙の効果を見て、恐らく石が活性化すると予測していたこと。情報を得るために宗司がわざと石に飲まれたこと。飲まれたことでわかったのは、石自体が意思を持って、寄生虫のように宿主を操作、誘導していること。石の目的は他の生物を殲滅することだが、恐らく、何か別の目的もあることが予想されること。
「……というわけだな。残念ながら本当の目的自体はわからなかった」
最後まで誰一人言葉を発せずに、宗司の話を聞いていた。
「アレは、この世界に在ってはならないような波長を感じた。こんな感覚は初めてよ。魔獣と言ったか? わらわはまだ見たことないが、それには注意せねばならぬだろう」
母鳥も危機感を覚えている様だった。案外、こういう野生の直感的なものは当たる可能性が高い。気脈からのエネルギーで生きているフェルス族の感覚なら一考に値するだろう。
「宗司兄の話、理解はできませんけど、わかりました。そういうことならば、一旦は許しましょう。それで、司さんが言っていたほうはどうなんですか? 竜さんの相談内容のほうですけど」
「ああ、あれな」
宗司の話を聞いて、舞の怒りは一旦収まったようだ。そして、得られた情報は整理する必要はあるが、考えるのは司や依頼主の兎神の役目だと割り切った模様。難しいことは考えるのを放棄したとも言える。
「別に大したことじゃないし、核心も何もない。完全に勘の話なんだけど……大樹様なんじゃないかなーって思ったんだよな」
「「大樹様?」」
リリと舞が不思議そうな声で聞き返す。舞のほうは大樹って何? リリのほうは大樹様が関係するの? という疑問である。
「クーシュたちのフェルス族だっけ? それらが徐々に減っていったのも、司令塔の役目をして竜に指示を送っていたのも、大樹様が関係しているのかな、とふと思ったんだ」
「リリ達が言ってたよな? 大樹様は、この世界に魔素を還元しているんだって。でも、今は枯れてしまったから、その供給はストップしているはずだ」
「で、クーシュたちは気脈からエネルギーを得て生きていると言っていた。そのエネルギーって何だろう? それって、突然供給が止まった魔素のことじゃないか?」
「竜も同じさ。竜に力を供給し、指示を出していたのは誰だろう? 時期は同じかわからないけど、こっちも音信不通になったのは大樹様が枯れたからじゃないのか? それに大樹様は、あれだけ大きな存在だ。他にも何かしていたかもしれないって思ったんだ。何も根拠なんてないぞ? ほとんど勘だからな」
「だから、試しに家に招待して会わせてみようかな、ってな」
何とも楽観的な、だけど、とても素直な考えだった。
「いやぁ、まいったまいった。まさか、私が取り込まれるとは思ってもみなかった! がはははは! まぁ、無事だったがな!」
満面の笑顔で地面に正座している宗司がいた。
「宗司兄……あなたという人は、何も反省していないようですね」
「ぴぃっ!?」
あっけらかんと話す宗司に、大氷原に吹き荒ぶ冷気のような声が、宗司の斜め上から浴びせられた。その声のあまりの怖さにリリとクーシュが司にくっつく。彼女たちは本能で察したのであろう、今の舞に近づいてはいけないと。
「舞よ。私は、心配するな、信じろといったはずだぞ? 第一、この通りに身体も元に戻ったし、怪我もしていない。ベストな戦果じゃないか!」
「そういう問題じゃありません!」
あの後、司たちはしばらくボコスカと殴り合いをしていた。これはどれだけ続くのかと辟易し始めたところで、宗司ゴーレムが急に機能を停止したのだった。そして、宗司自身が孵化の様に身体を覆っていた結晶を壊して脱出したことで問題を解決してしまったのだ。
「宗司さんは、初めからこうなることに気づいていたんですね? だから、宗司さんは石を担当することを俺たちに譲らなかったんですね。結果、どうなるかもわかってて、俺たちに無駄な心配かけないために黙ってた。でも、一番の理由は……」
「……まぁ、な」
非常にバツが悪そうに答える宗司。
「逆です! 教えてくれないほうが、どれだけ心配するか! この馬鹿兄は!」
司が言ったことも理由の一つ。だが、最も気にしていたのは妹の舞が危険に晒される可能性を出来る限り低くしたかったのだ。宗司にとっては、舞がアレに飲まれるほうが恐ろしかった。例え、後から舞に怒られたり恨まれたりされようとも。
「で、アレの説明、してくれるのでしょうね?」
「う、うむ……」
そう言って、粉々に砕け散った赤い結晶を指さして説明を求める舞。流石の宗司も話す気になったようだ。尤も、今の舞の剣幕には逆らえるような雰囲気ではないのだが。
「おぬしたち、あの石はなんだ? あれをどこで手に入れた?」
クーシュの母鳥もご立腹であった。
「私が知っていることと、どうなったかをすべて話そう」
宗司の説明はというと……。
赤い石は魔獣と呼称される生物から入手したこと。司たちは石を調べるために訪れたこと。竜の涙の効果を見て、恐らく石が活性化すると予測していたこと。情報を得るために宗司がわざと石に飲まれたこと。飲まれたことでわかったのは、石自体が意思を持って、寄生虫のように宿主を操作、誘導していること。石の目的は他の生物を殲滅することだが、恐らく、何か別の目的もあることが予想されること。
「……というわけだな。残念ながら本当の目的自体はわからなかった」
最後まで誰一人言葉を発せずに、宗司の話を聞いていた。
「アレは、この世界に在ってはならないような波長を感じた。こんな感覚は初めてよ。魔獣と言ったか? わらわはまだ見たことないが、それには注意せねばならぬだろう」
母鳥も危機感を覚えている様だった。案外、こういう野生の直感的なものは当たる可能性が高い。気脈からのエネルギーで生きているフェルス族の感覚なら一考に値するだろう。
「宗司兄の話、理解はできませんけど、わかりました。そういうことならば、一旦は許しましょう。それで、司さんが言っていたほうはどうなんですか? 竜さんの相談内容のほうですけど」
「ああ、あれな」
宗司の話を聞いて、舞の怒りは一旦収まったようだ。そして、得られた情報は整理する必要はあるが、考えるのは司や依頼主の兎神の役目だと割り切った模様。難しいことは考えるのを放棄したとも言える。
「別に大したことじゃないし、核心も何もない。完全に勘の話なんだけど……大樹様なんじゃないかなーって思ったんだよな」
「「大樹様?」」
リリと舞が不思議そうな声で聞き返す。舞のほうは大樹って何? リリのほうは大樹様が関係するの? という疑問である。
「クーシュたちのフェルス族だっけ? それらが徐々に減っていったのも、司令塔の役目をして竜に指示を送っていたのも、大樹様が関係しているのかな、とふと思ったんだ」
「リリ達が言ってたよな? 大樹様は、この世界に魔素を還元しているんだって。でも、今は枯れてしまったから、その供給はストップしているはずだ」
「で、クーシュたちは気脈からエネルギーを得て生きていると言っていた。そのエネルギーって何だろう? それって、突然供給が止まった魔素のことじゃないか?」
「竜も同じさ。竜に力を供給し、指示を出していたのは誰だろう? 時期は同じかわからないけど、こっちも音信不通になったのは大樹様が枯れたからじゃないのか? それに大樹様は、あれだけ大きな存在だ。他にも何かしていたかもしれないって思ったんだ。何も根拠なんてないぞ? ほとんど勘だからな」
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