リアルにファンタジーのほうがやってきた! ~謎の異世界からやってきたのは健気で可愛いモフモフでした~

ねこのにくきう

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第5章 地球と彼の地を結ぶ門

5-43 皆さま、お帰りはこちらになります

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 富士山のような山に戻ってきた司たち。

「長く住んだが、こことは別れか……。今更ながら愛着があったのだと気づかされるわ」

「クーシュ、もうすぐお家を離れちゃうぞ? 起きなくていいのか?」

「すぴぷーすぴぷー」

 母鳥は最後の見納めのように頂をゆっくりと旋回をしてから山を離れた。そんな心情の母を余所にクーシュは絶賛お昼寝中。司が起こそうとしても起きる気配が全くない。寝る子は育つとは言うものの、もう少し情緒というものを学習してほしいものである。


 司たちの案内で、始まりの岩戸を目指す。

 行きは徒歩とマラソンだったので数日かかったが、帰りは母鳥の移動となるので1日もかからないかもしれない。航空戦力バンザイである。

 母鳥の飛行は森を、草原を、河を通り過ぎて、数時間で荒野まで到達する。司たちからは地上に点在する生き物を目視で確認することができた。煮ても焼いても食えぬことでお馴染みのアーススイーパーである。もちろん、今は空を飛んでいるため、彼らに襲われる心配は一切ない。

 それにしても、ここら辺を中心としてびっしりと生息しているものである。上空から見ると数の多さが顕著に確認できる。地上の様子をちらりと見た母鳥が、地喰らいの多いところよな、こんなに集まっているのも珍しい、という独り言を呟いていたくらいだ。

「あれです。あの岩山の辺りに降りてくれますか?」

 アーススイーパーが多いということは、岩戸も近いという事。司が指をさす方向には荒野にぽつんと佇む小さな岩山があった。地球と接続する門がある始まりの岩戸である。

「やっと、ここまで帰ってこれましたね~。随分と久しぶりな気がします。家でお腹いっぱいご飯を食べて、お風呂に入って、お布団でぐっすりと寝たいですね」

「リンゴ……リンゴ……お腹いっぱい」

 現役女子高生の舞には万感の想いがありそうだ。武神家に帰ったら存分に欲求を満たしてもらいたい。リリは既にリンゴの妖精に憑りつかれていて、リンゴ禁断症状を発症していた。一刻も早い補給が必要となるだろう。

「何だかんだあったが、今回も無事に完遂だな! ハハハ!」

「宗司さんが襲ってきたときは、凄く胆が冷えたんですから……本当に勘弁してくださいよ。あの時の舞の様子ったら……」

「司さん? どうやら個別にお話しする必要があるようですね? 頭部へのダメージ過多における記憶領域の耐性について、とでも題しましょうか?」

「いや、すまん。どうやら、俺の記憶違いだったようだ……」

「司さーん、お家に帰ったらリンゴあるでしょうか!?」

「ぴぴぃ?」

 家に帰るまでが遠足なのに、既にカオス状態である。そして、とうとう我慢ができなくなったリリのリンゴという単語に目ざとく反応したクーシュ。食いしん坊バンザイである。

 司たちはクーシュたちが無事に門を通れるかを調べようとして、ふと思った。

「小竜は良いとして、クーシュのお母さんは……岩戸の通路が、通れない?」

 まさかの緊急事態である。

 考えてもみれば、母鳥の大きさが問題だった。翼を畳んだ状態でも10メートル以上あるのだ。高さ2メートルもない岩戸の通路を通れるはずがない。大きくなった状態のリリですらぎりぎりなのだから。灯台下暗しも良いところである。

「ああああ!!! 少し考えればわかることじゃんかぁぁぁ!」

 初心者でもやらないようなポカミスをかまして、コントのように司が地面に崩れ落ちる。その様子を見たリリとクーシュが何事かと驚いていた。

「何を悩んでいるかわからんが、これでいいのか?」

 光に包まれる母鳥。すると、みるみるうちに身体が縮小していく。最後に残ったのは、でかい皇帝ペンギンだった。いや、正確には違うのだろうが、見た目はまるで皇帝ペンギンだった。

 お腹にカンガルーのような袋があり、姉妹鳥たちが顔を出している。2匹でキュウキュウパンパン、このサイズだと3匹目のクーシュが入るスペースはないものと思われる。尤も、クーシュは司にくっついているので、当面は入る気がなさそうではある。

 リリもだが、この世界の生き物はどういう身体をしているのだろう。便利と言えば便利なのだが……いつかは原理を解明したいものである。まぁ、問題が解決してよかったよかった。

 ショックから復活した司を先頭に地球へ戻っていくのだった。司、ドンマイ。



 司たちが岩戸を潜って地球に戻った頃。

「急に反応が消えた……ですか。ふむ、対象に何か問題でもあったのか、それとも追尾できる条件が変化したのか。感知型の運用は今回が初めてですから、今後のためにもできるだけ情報が欲しいところです」

 紅い目をした男が、フクロウのような生き物を肩に乗せて歩いていた。ただし、その目は真っ赤で禍々しく、爪や嘴も刃物の様に鋭い、さらには漆黒の羽根が不吉さを嫌でも駆り立てる。地球のフクロウのように愛くるしい姿とは口が裂けても言えない。

「念のため、反応が消えた辺りまで行って調べてみますか。何かわかることがあるかもしれませんしね」

 紅い目をした男と黒い鳥は、ただ黙々と目的地を目指して歩いていた。そして、その歩いた道沿いには、彼らに襲い掛かった数々の獣が骸となって横たわっていた。まるで道標の様に。
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