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第六話
Light and darkness ~光と闇を見つめて~Ⅱ
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「ルシフェル様! 何のおつもりです!」
とゼウスを目がけて振り下ろされたルシフェルの剣を、しっかり自分の剣で受け止めながら叫ぶガブリエル。
……だが、ルシフェルの悲しげな表情と、端からゼウスを狙うつもりなどない太刀筋。ガブリエルはハッと一瞬にして気付く。
「ルシフェル様、あなたまさか……?」
と問いかけた。そんなガブリエルに哀しげに微笑み、いつもの自分の定位置にある玉座の右下に存在する、天界の緊急事態発生時に鳴らす唯一のブザーを押す。鳴り響く非常ベル。
ミカエルは一瞬何が起こったのか理解できなかった。だがすぐに全てを理解し、腰の剣を抜く。炎のオーラでその身を防御しながら
「ルシフェル! 貴様許さん!!」
と叫びルシフェルに攻撃をしかけた。その剣を受け止めながら、ルシフェルも白いオーラで身を防御する。
「面白い。少しは腕を上げたようだな、ミカエル」
と、かすかに嬉しそうに微笑む。
その瞬間からゼウスから離れたその真上で、二人の激しい戦いが繰り広げられた。それを合図に、ウリエルは
「ガブリエル! ゼウス様を頼む!」
と声をかける。それを受けガブリエルは
「承知した!」
と答え、両手をゼウスに掲げ、クリアマゼンタのオーラでゼウスを包み込んだ。ウリエルはそれを見届けるやいなやすぐに
「ラファエル、最高にして最速・最強のヒーリングが施せるように気を高めておいてくれ」
と声をかけた。
「やはり、そうなのですね……。了解致しました」
と、応えるも、そのエメラルドを思わせる瞳には涙が滲んでいた。ウリエルは目を閉じ、両手で印のようなものを結びそして目を見開く。右手を上に左手は地に翳すと
「我が名ウリエルの名の下、ゼウス、ルシフェル、ミカエル、ガブリエル、ラファエルを汝の内側にて保護せよ!」
と唱える。すると、ゴールドの光があたり一面に広がり、正十二面体のゴールドの結界の内側に5人が居るかたちとなった。
ルシフェルとミカエルの戦いは激しさを増したが、その結界はビクともしない。それどころか、こちらから外側を見る事は出来ても、外側からは中を見られないようになっているようだ。
ウリエルは、ゼウスのガードが安定したのを見て更に両手で先ほどより複雑な印を結ぶ。そして左手は印を結んだまま、右手の人差し指を頭上に掲げこう唱えた。
「更なる汝の力を我らに! 内側より外側を、外側より内側の守護を!」
すると、ウリエルの右人差し指から一瞬白く眩い光が溢れ、既に張られているゴールドの正十二面体のゴールドの結界の外側に、白く輝く正二十面体の結界が張られた。
ルシフェルとミカエルの戦いは熾烈を極めていた。
ミカエルは、最初はルシフェルに対する怒りから戦っていたが、途中から無意識に戦いそのものに無心になっていた。それは、己の正義を貫く戦いというよりは、幼い頃、ルシフェルと剣の稽古をしていた時のような無心・夢中になる感覚だ。
そしてまたルシフェルも、腕を上げたミカエルを頼もしく感じ、彼自身も少しの間無心になっていた。だが、ウリエルの白く眩い光が目に入った瞬間、そろそろ潮時だな、と自嘲気味に微笑む。
「ミカエル!」
と叫ぶと、渾身の一撃をミカエルに向けた。一瞬ひるむもすぐに立て直し、ミカエルも渾身の一撃をルシフェルに向ける。そう、彼は刺し違える覚悟で、ありったけの力でルシフェルに剣を振り上げたのだ。ミカエルが相打ちだな、と感じた瞬間、ルシフェルは慈愛に満ちた瞳でミカエルを見つめる。そして不意に体の力を抜いた。更に自ら斜め横を向き、その銀色に輝く美しい翼を彼に差し出した。
ハッと気付くも勢いがつきすぎ、そのまま剣を振り下ろすしか出来ないミカエル。
「ルシフェーーーーーーーーーーーール!!」
と悲痛な叫びを上げながらルシフェルの翼に剣を当てた……。
バサリ!銀色の美しい羽が一面に舞い狂う。
「み、見事だ、ミカエル……」
と、ルシフェルは満足そうに微笑んだ。
「な、……ルシフェル。貴様、わざと……」
あまりの衝撃にそう言うのが精いっぱいだった。そして彼の目の前にルシフェルの鮮血が飛び……。
ミカエルはそこで意識を失った。
全てを下で見守っていたガブリエルは、ミカエルが意識を失うと同時にクリアマゼンタのオーラでミカエルを保護しようと手を翳す。だが、それより早くゼウスは右手でミカエルに向けてクリアパープルのオーラで保護し、自らの手元にミカエルを引き寄せた。ゼウスの元に来ると、ガブリエルはすぐにミカエルに膝枕をし、彼の様子を見守った。
一方、ルシフェルは意識を失う寸前に、瞬間移動したウリエルにしっかりと抱き留められる。同じくルシフェルの後ろに瞬間移動したラファエルは、ルシフェルの背に向けて両手を翳し、パステルパールグリーンのオーラで素早く傷口を癒やす。ウリエルはルシフェルを支えつつ、あたり一面に舞う銀の羽と切られた二枚の翼を、右手を翳しゴールドのオーラで一つに集め、保護した。そしてラファエルと共にゼウスの元へと降りていく。
とゼウスを目がけて振り下ろされたルシフェルの剣を、しっかり自分の剣で受け止めながら叫ぶガブリエル。
……だが、ルシフェルの悲しげな表情と、端からゼウスを狙うつもりなどない太刀筋。ガブリエルはハッと一瞬にして気付く。
「ルシフェル様、あなたまさか……?」
と問いかけた。そんなガブリエルに哀しげに微笑み、いつもの自分の定位置にある玉座の右下に存在する、天界の緊急事態発生時に鳴らす唯一のブザーを押す。鳴り響く非常ベル。
ミカエルは一瞬何が起こったのか理解できなかった。だがすぐに全てを理解し、腰の剣を抜く。炎のオーラでその身を防御しながら
「ルシフェル! 貴様許さん!!」
と叫びルシフェルに攻撃をしかけた。その剣を受け止めながら、ルシフェルも白いオーラで身を防御する。
「面白い。少しは腕を上げたようだな、ミカエル」
と、かすかに嬉しそうに微笑む。
その瞬間からゼウスから離れたその真上で、二人の激しい戦いが繰り広げられた。それを合図に、ウリエルは
「ガブリエル! ゼウス様を頼む!」
と声をかける。それを受けガブリエルは
「承知した!」
と答え、両手をゼウスに掲げ、クリアマゼンタのオーラでゼウスを包み込んだ。ウリエルはそれを見届けるやいなやすぐに
「ラファエル、最高にして最速・最強のヒーリングが施せるように気を高めておいてくれ」
と声をかけた。
「やはり、そうなのですね……。了解致しました」
と、応えるも、そのエメラルドを思わせる瞳には涙が滲んでいた。ウリエルは目を閉じ、両手で印のようなものを結びそして目を見開く。右手を上に左手は地に翳すと
「我が名ウリエルの名の下、ゼウス、ルシフェル、ミカエル、ガブリエル、ラファエルを汝の内側にて保護せよ!」
と唱える。すると、ゴールドの光があたり一面に広がり、正十二面体のゴールドの結界の内側に5人が居るかたちとなった。
ルシフェルとミカエルの戦いは激しさを増したが、その結界はビクともしない。それどころか、こちらから外側を見る事は出来ても、外側からは中を見られないようになっているようだ。
ウリエルは、ゼウスのガードが安定したのを見て更に両手で先ほどより複雑な印を結ぶ。そして左手は印を結んだまま、右手の人差し指を頭上に掲げこう唱えた。
「更なる汝の力を我らに! 内側より外側を、外側より内側の守護を!」
すると、ウリエルの右人差し指から一瞬白く眩い光が溢れ、既に張られているゴールドの正十二面体のゴールドの結界の外側に、白く輝く正二十面体の結界が張られた。
ルシフェルとミカエルの戦いは熾烈を極めていた。
ミカエルは、最初はルシフェルに対する怒りから戦っていたが、途中から無意識に戦いそのものに無心になっていた。それは、己の正義を貫く戦いというよりは、幼い頃、ルシフェルと剣の稽古をしていた時のような無心・夢中になる感覚だ。
そしてまたルシフェルも、腕を上げたミカエルを頼もしく感じ、彼自身も少しの間無心になっていた。だが、ウリエルの白く眩い光が目に入った瞬間、そろそろ潮時だな、と自嘲気味に微笑む。
「ミカエル!」
と叫ぶと、渾身の一撃をミカエルに向けた。一瞬ひるむもすぐに立て直し、ミカエルも渾身の一撃をルシフェルに向ける。そう、彼は刺し違える覚悟で、ありったけの力でルシフェルに剣を振り上げたのだ。ミカエルが相打ちだな、と感じた瞬間、ルシフェルは慈愛に満ちた瞳でミカエルを見つめる。そして不意に体の力を抜いた。更に自ら斜め横を向き、その銀色に輝く美しい翼を彼に差し出した。
ハッと気付くも勢いがつきすぎ、そのまま剣を振り下ろすしか出来ないミカエル。
「ルシフェーーーーーーーーーーーール!!」
と悲痛な叫びを上げながらルシフェルの翼に剣を当てた……。
バサリ!銀色の美しい羽が一面に舞い狂う。
「み、見事だ、ミカエル……」
と、ルシフェルは満足そうに微笑んだ。
「な、……ルシフェル。貴様、わざと……」
あまりの衝撃にそう言うのが精いっぱいだった。そして彼の目の前にルシフェルの鮮血が飛び……。
ミカエルはそこで意識を失った。
全てを下で見守っていたガブリエルは、ミカエルが意識を失うと同時にクリアマゼンタのオーラでミカエルを保護しようと手を翳す。だが、それより早くゼウスは右手でミカエルに向けてクリアパープルのオーラで保護し、自らの手元にミカエルを引き寄せた。ゼウスの元に来ると、ガブリエルはすぐにミカエルに膝枕をし、彼の様子を見守った。
一方、ルシフェルは意識を失う寸前に、瞬間移動したウリエルにしっかりと抱き留められる。同じくルシフェルの後ろに瞬間移動したラファエルは、ルシフェルの背に向けて両手を翳し、パステルパールグリーンのオーラで素早く傷口を癒やす。ウリエルはルシフェルを支えつつ、あたり一面に舞う銀の羽と切られた二枚の翼を、右手を翳しゴールドのオーラで一つに集め、保護した。そしてラファエルと共にゼウスの元へと降りていく。
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