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第七十三話
彩光界建国記念日・序章
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「有り難う。ピッタリだ、全く違和感ないな」
そう言って両足首を改めて見つめる。そこには、魔除けのシルバーの鎖にガーネットを細石のビーズに加工し、繋ぎ合わせたアンクレットがはめられていた。先日、宝土界に行った際に選んで貰った二つの天然石。レオとノアに加工して貰ったものを、先程加工した当人である二人に着けて貰ったのだ。ガーネット……別名『ザクロ石』とも言うそうだが、本当にザクロの実みたいだ。
「よくお似合いです。温泉に入って頂いても変色したりしないよう、特殊な魔術で加工してあります」
レオが頬を赤らめながら言った。
「そうか、それは便利だな」
だけど、こんな細いと……少し乱雑に扱っただけで切れちまいそうで心許ないかも……
「因みにちょっとやそっとでは切れないよう強靭に魔術加工も施してありますので、特にお手入れも必要ありません」
ノアは頬を紅潮させ、少し得意気に付け加えた。うーん、まるで見透かされたみたいだな。
「おう! 尚更安心だ、有難うな」
「い、いいえ」
「とんでもないです」
恥ずかしそうに俯く二人。まだ俺の事崇拝してくれているのは、本当に嬉しい。
「つ、続いてソーダライトのサークレットです」
照れを誤魔化すようにして、レオは右手の平を上に。ノアは左手の平を上にして互いに手をくっつけて受け皿のような形を作った。スッと浮かび上がるようにしてそこに出現したのは、シルバーのワイヤーで唐草模様のようにサークレット状に加工し、中央部分に幅1cm、長さ2cmほどの雫型に加工されたソーダライトがはめ込まれていた。一見シンプルに見えるが、よく見ると物凄く繊細で凝った作りだ。完全に輪にはなっていないから、ヘア―バンド型のサークレット、という感じか。シルバーは魔除けらしいし、ソーダライトは艶々した紺色で見るからに高級そうだ。
「へぇ? カッコイイじゃん。早速、つけてみていいか?」
「「勿論です」」
声を合わせて答える二人。言われるままにサークレットを受け取る。意外にも軽くて驚いた! 羽みたいに軽いんだ。頭に乗せるものだから、軽いのは非常に助かるぞ、と。ソーダライトが額の中心に来るようにして頭に乗せてみた。
「整えさせて頂きますね」
とノアが俺の後ろに回る。
「サークレットは、その時の髪型で自由に大きさが変えられるようになっています」
とレオが「失礼します」と俺の前で屈み込み、ソーダライトの位置を少しずらした。後ろではノアが、改めて髪を整えながらサークレットをはめ直している。
「出来ました」
ノアがそう言ってレオも隣に戻ると同時に、俺の前に胸から上が映る大きさの楕円形の鏡が出現した。これも魔法か。もう驚かなくなって来ている。慣れてきたんだな。
「如何でしょう?」
少し不安そうな二人。鏡に映る俺は、相変わらず青白い肌で。細くてホントに病弱そうだ。髪は真っ黒でやた艶々しているもんだから余計にひ弱そうに見えがちというか。年齢よりも幼く見えるから、儚げな美少年と噂されるのも頷ける。何だか複雑な心境だ。ソーダライトサークレットは全く違和感なく。あたかも最初からはめていたかのように自然だった。何だかちょっと神秘的な感じで良いんじゃないか?
「うん、自然な感じで良いな。気に入ったよ、有難う」
と返事をしつつ。……藤色の着物姿だし、あっちの世界でこれやったらコスプレマニア、て感じだろうな。なんて思ったりもして。それでも嬉しそうに微笑み合う二人が可愛らしい。鏡は空気に溶け込むようにして消えた。
「サークレットもアンクレットも、お休みになる時は『外れろ』と念じれば外れるようになっております。サークレットも、温泉にお入り頂いても、激しく動き回っても変色したり外れ落ちたりもしないように出来ております」
レオは説明を付け加える。
「それは便利だなぁ。有難う」
ノアがふと真顔になる。
「惟光様、殿下より七日後の彩光界建国記念日の衣装は、羽織袴で。色は任せる、との事でございましたが。何か御好みのお色はございますでしょうか?」
「そうか。でも、色も任せるよ。特に嫌いな色とかは無いし。相応しい色とかはお前たちの方が詳しいだろうしな」
と微笑んだ。本当にそう思う。お任せが一番だ。
「畏まりました。デザインをいくつか描いて参りますね」
「あぁ、宜しく頼む」
そう、その彩光界建国記念日とやらで、国民たちの前で去り気なく俺の新しい仕事の事を公表するらしい。当然、国王陛下、王太子殿下もいらっしゃる訳で。俺にしてみたらチビりそうなほど一大事の案件なのだ。更に、その日に俺は狙われ易いのだそうで。余計にビビるイベントごとな訳だ。
そう言って両足首を改めて見つめる。そこには、魔除けのシルバーの鎖にガーネットを細石のビーズに加工し、繋ぎ合わせたアンクレットがはめられていた。先日、宝土界に行った際に選んで貰った二つの天然石。レオとノアに加工して貰ったものを、先程加工した当人である二人に着けて貰ったのだ。ガーネット……別名『ザクロ石』とも言うそうだが、本当にザクロの実みたいだ。
「よくお似合いです。温泉に入って頂いても変色したりしないよう、特殊な魔術で加工してあります」
レオが頬を赤らめながら言った。
「そうか、それは便利だな」
だけど、こんな細いと……少し乱雑に扱っただけで切れちまいそうで心許ないかも……
「因みにちょっとやそっとでは切れないよう強靭に魔術加工も施してありますので、特にお手入れも必要ありません」
ノアは頬を紅潮させ、少し得意気に付け加えた。うーん、まるで見透かされたみたいだな。
「おう! 尚更安心だ、有難うな」
「い、いいえ」
「とんでもないです」
恥ずかしそうに俯く二人。まだ俺の事崇拝してくれているのは、本当に嬉しい。
「つ、続いてソーダライトのサークレットです」
照れを誤魔化すようにして、レオは右手の平を上に。ノアは左手の平を上にして互いに手をくっつけて受け皿のような形を作った。スッと浮かび上がるようにしてそこに出現したのは、シルバーのワイヤーで唐草模様のようにサークレット状に加工し、中央部分に幅1cm、長さ2cmほどの雫型に加工されたソーダライトがはめ込まれていた。一見シンプルに見えるが、よく見ると物凄く繊細で凝った作りだ。完全に輪にはなっていないから、ヘア―バンド型のサークレット、という感じか。シルバーは魔除けらしいし、ソーダライトは艶々した紺色で見るからに高級そうだ。
「へぇ? カッコイイじゃん。早速、つけてみていいか?」
「「勿論です」」
声を合わせて答える二人。言われるままにサークレットを受け取る。意外にも軽くて驚いた! 羽みたいに軽いんだ。頭に乗せるものだから、軽いのは非常に助かるぞ、と。ソーダライトが額の中心に来るようにして頭に乗せてみた。
「整えさせて頂きますね」
とノアが俺の後ろに回る。
「サークレットは、その時の髪型で自由に大きさが変えられるようになっています」
とレオが「失礼します」と俺の前で屈み込み、ソーダライトの位置を少しずらした。後ろではノアが、改めて髪を整えながらサークレットをはめ直している。
「出来ました」
ノアがそう言ってレオも隣に戻ると同時に、俺の前に胸から上が映る大きさの楕円形の鏡が出現した。これも魔法か。もう驚かなくなって来ている。慣れてきたんだな。
「如何でしょう?」
少し不安そうな二人。鏡に映る俺は、相変わらず青白い肌で。細くてホントに病弱そうだ。髪は真っ黒でやた艶々しているもんだから余計にひ弱そうに見えがちというか。年齢よりも幼く見えるから、儚げな美少年と噂されるのも頷ける。何だか複雑な心境だ。ソーダライトサークレットは全く違和感なく。あたかも最初からはめていたかのように自然だった。何だかちょっと神秘的な感じで良いんじゃないか?
「うん、自然な感じで良いな。気に入ったよ、有難う」
と返事をしつつ。……藤色の着物姿だし、あっちの世界でこれやったらコスプレマニア、て感じだろうな。なんて思ったりもして。それでも嬉しそうに微笑み合う二人が可愛らしい。鏡は空気に溶け込むようにして消えた。
「サークレットもアンクレットも、お休みになる時は『外れろ』と念じれば外れるようになっております。サークレットも、温泉にお入り頂いても、激しく動き回っても変色したり外れ落ちたりもしないように出来ております」
レオは説明を付け加える。
「それは便利だなぁ。有難う」
ノアがふと真顔になる。
「惟光様、殿下より七日後の彩光界建国記念日の衣装は、羽織袴で。色は任せる、との事でございましたが。何か御好みのお色はございますでしょうか?」
「そうか。でも、色も任せるよ。特に嫌いな色とかは無いし。相応しい色とかはお前たちの方が詳しいだろうしな」
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「畏まりました。デザインをいくつか描いて参りますね」
「あぁ、宜しく頼む」
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