47 / 79
第三十話
いい加減な奴、狡賢い奴ほど人生上手くいくような気がするのだけど・その四
しおりを挟む
アミーは通常の姿に戻ってパソコンに向かっている。骨や筋肉、血管が透けて見える指が思いの外長く、優雅な形をしていた。赤々と燃え盛る炎の髪はおよそ30cmほど天に突き上げている。ギョロリとした虚ろな瞳に映し出されているのは……。
『宿命は変えられない! ですが運命は自分の意志で変えられます。変えて見せましょう、彼の心をあなただけのものに!』
霊感霊視透視をうたった電話占いの宣伝だ。
『守護霊を交代させて思い通りの人生を歩みましょう。不可能を可能に!』
いくつかの電話占いの会社をピックアップして見ているようだ。次に、「スピリチュアル」と検索する。
『「引き寄せ」極意をお教します!』
『神様を味方につけて人生思い通りに!』
『あなただけの守護天使を創りませんか?』
『龍神をなたの眷属にして人生を謳歌しましょう!』
アミーは骸骨のように剥き出しになった歯をより一層剥き出し、赤く浮き出た血管が脈打つ唇が弧を描いた。
「順調に行っているようですね」
少し高めの男の声とともに、向かい側の席に突如男が現れた。全身がシアン色の肌だ。痩せてヒョロリとしている。小豆色のローブに身を包み、冷たく整った顔立ちを派手な蛍光ピンク髪が額縁のように縁取っている。そしてその髪は肩の下あたりまで伸ばされて、さざ波のように波打っていた。藍色の唇は冷酷そうに引き結んでいる。その癖、切れ長の瞳は落ち着いた土色で、この者の思慮深さと誠実さを物語っていた。
「あぁ、いささか簡単過ぎるくらいにな」
アミーは答えた。
「あまりにも簡単過ぎて、目も回るような忙しさだと『新人悪魔教育係』のアンドロマリウスが嘆いていましたよ」
と男はこたえた。この男はハーゲンティ。魔界きっての錬金術師で、医術、薬学、そして黒魔術を扱う。その延長で魔界の建築系も担当していた。見習い悪魔の自宅を建てたのは彼である事は。前述した通りだ。魔術関連の植物系も育てるので、ガーデニングも担当の域である。
基本的に、彼らは単独で仕事をこなす。専門的な分野の為、単独の方が捗りやすいという理由からの特例だ。アミーは占い師の他に、人生に行く詰まりを感じたり、理不尽さを感じている人間に囁いてスピリチュアル系に興味を抱くように囁き、一時的に神や巫女系の力を与えてスピリチュアリストとしてリーダーに導く事も担当していた。そのリーダーとなった者が人間の信者を引き入れ、その信者がリーダーになって……と連鎖していく。一時的に力を与えられた人間はより地位と名声や富を欲しがり、簡単に悪魔と契約、そして自滅していった。
ハーゲンティは、アミーが作る「魔術関連グッズ」……人間には「開運アイテム」として売るのだが、その材料の調達やアイテムの開発などを担当しており、時折こうして会って情報交換や相談をする時間を設けていた。
「承認欲求を満たせば、簡単に契約しちまうからなぁ、人間は」
クックック、とアミーは笑う。
「そう言えば、人間上がりの小娘とやらが弟子入りしたとか聞きましたが?」
ハーゲンティは思い出したように問う。
「あぁ、なかなか面白い娘だ。ベリアルが選ぶだけの事はあるな」
「へぇ? あなたにそ言わせるなんて大したものだ。是非一度お会いしてみたいですね」
「ま、その内会えるだろ」
不意に、何かの気配を察知して同時に虚空を見上げ、身構える二体。彼らの視線の先に現れたのは、サッと黒い翼がバサリと音を立て、
「突然邪魔してすまんな。お前たちがちょうど会っている時だと聞いてな。すまん、緊急に相談したい事がある!」
挨拶もそこそこに、急き込んで話し出すベリアルであった。
『宿命は変えられない! ですが運命は自分の意志で変えられます。変えて見せましょう、彼の心をあなただけのものに!』
霊感霊視透視をうたった電話占いの宣伝だ。
『守護霊を交代させて思い通りの人生を歩みましょう。不可能を可能に!』
いくつかの電話占いの会社をピックアップして見ているようだ。次に、「スピリチュアル」と検索する。
『「引き寄せ」極意をお教します!』
『神様を味方につけて人生思い通りに!』
『あなただけの守護天使を創りませんか?』
『龍神をなたの眷属にして人生を謳歌しましょう!』
アミーは骸骨のように剥き出しになった歯をより一層剥き出し、赤く浮き出た血管が脈打つ唇が弧を描いた。
「順調に行っているようですね」
少し高めの男の声とともに、向かい側の席に突如男が現れた。全身がシアン色の肌だ。痩せてヒョロリとしている。小豆色のローブに身を包み、冷たく整った顔立ちを派手な蛍光ピンク髪が額縁のように縁取っている。そしてその髪は肩の下あたりまで伸ばされて、さざ波のように波打っていた。藍色の唇は冷酷そうに引き結んでいる。その癖、切れ長の瞳は落ち着いた土色で、この者の思慮深さと誠実さを物語っていた。
「あぁ、いささか簡単過ぎるくらいにな」
アミーは答えた。
「あまりにも簡単過ぎて、目も回るような忙しさだと『新人悪魔教育係』のアンドロマリウスが嘆いていましたよ」
と男はこたえた。この男はハーゲンティ。魔界きっての錬金術師で、医術、薬学、そして黒魔術を扱う。その延長で魔界の建築系も担当していた。見習い悪魔の自宅を建てたのは彼である事は。前述した通りだ。魔術関連の植物系も育てるので、ガーデニングも担当の域である。
基本的に、彼らは単独で仕事をこなす。専門的な分野の為、単独の方が捗りやすいという理由からの特例だ。アミーは占い師の他に、人生に行く詰まりを感じたり、理不尽さを感じている人間に囁いてスピリチュアル系に興味を抱くように囁き、一時的に神や巫女系の力を与えてスピリチュアリストとしてリーダーに導く事も担当していた。そのリーダーとなった者が人間の信者を引き入れ、その信者がリーダーになって……と連鎖していく。一時的に力を与えられた人間はより地位と名声や富を欲しがり、簡単に悪魔と契約、そして自滅していった。
ハーゲンティは、アミーが作る「魔術関連グッズ」……人間には「開運アイテム」として売るのだが、その材料の調達やアイテムの開発などを担当しており、時折こうして会って情報交換や相談をする時間を設けていた。
「承認欲求を満たせば、簡単に契約しちまうからなぁ、人間は」
クックック、とアミーは笑う。
「そう言えば、人間上がりの小娘とやらが弟子入りしたとか聞きましたが?」
ハーゲンティは思い出したように問う。
「あぁ、なかなか面白い娘だ。ベリアルが選ぶだけの事はあるな」
「へぇ? あなたにそ言わせるなんて大したものだ。是非一度お会いしてみたいですね」
「ま、その内会えるだろ」
不意に、何かの気配を察知して同時に虚空を見上げ、身構える二体。彼らの視線の先に現れたのは、サッと黒い翼がバサリと音を立て、
「突然邪魔してすまんな。お前たちがちょうど会っている時だと聞いてな。すまん、緊急に相談したい事がある!」
挨拶もそこそこに、急き込んで話し出すベリアルであった。
0
あなたにおすすめの小説
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
氷の公爵家に嫁いだ私、実は超絶有能な元男爵令嬢でした~女々しい公爵様と粘着義母のざまぁルートを内助の功で逆転します!~
紅葉山参
恋愛
名門公爵家であるヴィンテージ家に嫁いだロキシー。誰もが羨む結婚だと思われていますが、実情は違いました。
夫であるバンテス公爵様は、その美貌と地位に反して、なんとも女々しく頼りない方。さらに、彼の母親である義母セリーヌ様は、ロキシーが低い男爵家の出であることを理由に、連日ねちっこい嫌がらせをしてくる粘着質の意地悪な人。
結婚生活は、まるで地獄。公爵様は義母の言いなりで、私を庇うこともしません。
「どうして私がこんな仕打ちを受けなければならないの?」
そう嘆きながらも、ロキシーには秘密がありました。それは、男爵令嬢として育つ中で身につけた、貴族として規格外の「超絶有能な実務能力」と、いかなる困難も冷静に対処する「鋼の意志」。
このまま公爵家が傾けば、愛する故郷の男爵家にも影響が及びます。
「もういいわ。この際、公爵様をたてつつ、私が公爵家を立て直して差し上げます」
ロキシーは決意します。女々しい夫を立派な公爵へ。傾きかけた公爵領を豊かな土地へ。そして、ねちっこい義母には最高のざまぁを。
すべては、彼の幸せのため。彼の公爵としての誇りのため。そして、私自身の幸せのため。
これは、虐げられた男爵令嬢が、内助の功という名の愛と有能さで、公爵家と女々しい夫の人生を根底から逆転させる、痛快でロマンチックな逆転ざまぁストーリーです!
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
転生先がヒロインに恋する悪役令息のモブ婚約者だったので、推しの為に身を引こうと思います
結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【だって、私はただのモブですから】
10歳になったある日のこと。「婚約者」として現れた少年を見て思い出した。彼はヒロインに恋するも報われない悪役令息で、私の推しだった。そして私は名も無いモブ婚約者。ゲームのストーリー通りに進めば、彼と共に私も破滅まっしぐら。それを防ぐにはヒロインと彼が結ばれるしか無い。そこで私はゲームの知識を利用して、彼とヒロインとの仲を取り持つことにした――
※他サイトでも投稿中
【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~【長編】
暖夢 由
恋愛
「サリー・ナシェルカ伯爵令嬢、あなたの婚約は破棄いたします!」
高らかに宣言された婚約破棄の言葉。
ドルマン侯爵主催のガーデンパーティーの庭にその声は響き渡った。
でもその婚約破棄、どうしてあなたが言うのですか?
*********
以前投稿した小説を長編版にリメイクして投稿しております。
内容も少し変わっておりますので、お楽し頂ければ嬉しいです。
外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜
KeyBow
ファンタジー
この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。
人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。
運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。
ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。
俺に王太子の側近なんて無理です!
クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。
そう、ここは剣と魔法の世界!
友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。
ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる