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第五話
(仮初)夫婦のコミュニケーションだとかエトセトラ……【一】
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「えーと、あの……今、何と?」
あたしはまたもや混乱していた。彼ら……粋蓮と日比谷の二人と出会ってからと言うもの、毎日が『驚愕』と『思考停止』そして『混乱』の連続だ。出会ってからもう何カ月も経っているような気がするのだけれど、実際には粋蓮と初めて対面してからまだ五日目。日比谷に至ってはまだ四日しか経ってないのだが、何だか酷く消耗している。
考えてみたら……学生の時から、友達付き合いは表面上は仲良く振る舞ってはいたが己の本心を曝け出せるほど信頼出来る友達は出来なかった。恋人が出来た事はないし欲しいとも思わない。つまり、よくよく考えてみると友達と呼べるものは殆どいないのだ。別段、それを特別に寂しいとは感じた事はないし、一人で自由気ままに過ごす事の方が好みだ。こんなあたしからしたら、この二人……いや二体、ん? 二柱か。この二柱との距離感はたしにしたら特例中の特例、という存在なのだ。
そもそもこの二柱は、属性は『神様』というか。それ以前にカミサマなんて本当に存在するのか? と思うけれど、この二柱は少なくとも人ではない事は分かった。
実は、何らかの理由で臨死体験をしているだけなのかもしれないけれども。
「ええ、あなたの研修も残すところ後二日。仮初と言えども夫婦の契約を結んだのですから、これからデートとやらに繰り出しましょう」
現実逃避している場合ではなかった、このカミサマ今デートとかのたまったわよね? 無理無理無理無理! 無理ですって! だって……
「それはちょっと難しい問題だと思います」
「おや、何故です?」
いや分かるでしょ、その気になればあたしの心なんて読むのお手の物なんだし。
「だって私、そもそも恋人がいた事ありませんし。だからデートなんて無理だと思うのです」
そうだよ、これ契約上だけとはいえ、こんな浮世離れした超絶美形の隣を二人だけで歩くなんてとんでもない! さすがに、周りを気にしないあたしでも駄目な意味で目立つのは勘弁よ。
当の彼は、気にする必要はない、というように柔らかく微笑む。まるで彼の周りだけに春が来たみたいに、満開の八重桜を背追っているように見えた。
「そのような事、気になさる必要ありませんよ。これは私の人間見習いの一環して考えて頂いて、軽い気持ちでお付き合い頂けましたら」
「ですが、未経験の私がデートコースを考えるなんて……」
「ご心配無く。一緒に考えましょう。勿論、デート費用は全てこちらが持ちますからご安心を」
いやいやいやいや、そんなピュアな眼差しで微笑まれても困るよ!
「あ……いや、そういう問題では……」
「よっしゃ! 俺に任せな!」
それまで、まるで漫才を見るようにニヤニヤしながら成り行きを見守っていた日比谷が、腕組みをして立ち上がった。あたしも粋蓮も驚いて彼に注目する。日比谷は右手であたし達にピースサインを送ると、
「一肌脱いでやる!」
そう言っていきなりポロシャツを脱ぎだすのと、
「きゃーーーーー!!!」
「これ! 昴!!!」
悲鳴を上げて両手で顔を覆うあたしと、たしなめながら右手を伸ばしあたしを胸に引き寄せる粋蓮、それらがほぼ同時に行われた。
あたしはまたもや混乱していた。彼ら……粋蓮と日比谷の二人と出会ってからと言うもの、毎日が『驚愕』と『思考停止』そして『混乱』の連続だ。出会ってからもう何カ月も経っているような気がするのだけれど、実際には粋蓮と初めて対面してからまだ五日目。日比谷に至ってはまだ四日しか経ってないのだが、何だか酷く消耗している。
考えてみたら……学生の時から、友達付き合いは表面上は仲良く振る舞ってはいたが己の本心を曝け出せるほど信頼出来る友達は出来なかった。恋人が出来た事はないし欲しいとも思わない。つまり、よくよく考えてみると友達と呼べるものは殆どいないのだ。別段、それを特別に寂しいとは感じた事はないし、一人で自由気ままに過ごす事の方が好みだ。こんなあたしからしたら、この二人……いや二体、ん? 二柱か。この二柱との距離感はたしにしたら特例中の特例、という存在なのだ。
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実は、何らかの理由で臨死体験をしているだけなのかもしれないけれども。
「ええ、あなたの研修も残すところ後二日。仮初と言えども夫婦の契約を結んだのですから、これからデートとやらに繰り出しましょう」
現実逃避している場合ではなかった、このカミサマ今デートとかのたまったわよね? 無理無理無理無理! 無理ですって! だって……
「それはちょっと難しい問題だと思います」
「おや、何故です?」
いや分かるでしょ、その気になればあたしの心なんて読むのお手の物なんだし。
「だって私、そもそも恋人がいた事ありませんし。だからデートなんて無理だと思うのです」
そうだよ、これ契約上だけとはいえ、こんな浮世離れした超絶美形の隣を二人だけで歩くなんてとんでもない! さすがに、周りを気にしないあたしでも駄目な意味で目立つのは勘弁よ。
当の彼は、気にする必要はない、というように柔らかく微笑む。まるで彼の周りだけに春が来たみたいに、満開の八重桜を背追っているように見えた。
「そのような事、気になさる必要ありませんよ。これは私の人間見習いの一環して考えて頂いて、軽い気持ちでお付き合い頂けましたら」
「ですが、未経験の私がデートコースを考えるなんて……」
「ご心配無く。一緒に考えましょう。勿論、デート費用は全てこちらが持ちますからご安心を」
いやいやいやいや、そんなピュアな眼差しで微笑まれても困るよ!
「あ……いや、そういう問題では……」
「よっしゃ! 俺に任せな!」
それまで、まるで漫才を見るようにニヤニヤしながら成り行きを見守っていた日比谷が、腕組みをして立ち上がった。あたしも粋蓮も驚いて彼に注目する。日比谷は右手であたし達にピースサインを送ると、
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