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第九話
恋乱舞・その一
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『さて、どうする? 乗り込むかい?』
太宰はけしかけるように言った。
(……いいえ)
蒼介の唇は穏やかな弧を描いた。
(乗り込んで、情熱的に告白。実際、話しだけを聞くと男らしくてカッコ良さそうですし。だけどそれはまぁ、十代、せいぜい二十代前半までなら若さ故に……で済まされるでしょう。そしてそれは、ファンタジー世界なら更に有り、でしょうね。けれども現実は、単に状況や後先を考えない無責任男、ですよ。何よりみのりさん本人、みのりさんのご家族に迷惑です)
『そんなものかねぇ。まぁ、今の女性たちは驚くほど現実的だって聞くし、そう言う判断が適格とみなされるんだろうけど……時代、かねぇ?』
太宰は呆れているとも、寂しそうとも、何とも表現し難い複雑な表情を浮べた。
(いやいや、今の時代だって、ルックスや才能に恵まれた男性に惚れこんでついていく女の人も居ますよ。ただ、僕は僕自身が凡人過ぎて何の取りえもない上に草食系で、女の人が喜びそうな話題の提供や美辞麗句も苦手なもんで、堅実に至って常識的に振る舞った方が無難なんです……と言っても、冒険も出来ませんけどね)
彼もまた、悲しみとも自嘲とも取れる複雑な笑みを浮かべた。
『そういう誠実で正直、思慮深さが良い、て女性もいるさ。沢山ね』
<現にみのりちゃんは君の事好きなんだし……て教えてやりたいが、こればっかりはなぁ……>
『……で、これからどうする?』
太宰は彼に全てを委ねた。蒼介はしばらく考え込むように宙を見つめた。
(お見合いが終わって、彼女が一人になるのを待ちます)
やがて蒼介は意を決したように言った。
『そっか。知ってると思うけどさ。お見合い後、仲人と互いの親は先に居なくなって、本人同士が二人だけでデート、てパターンだと思うよ』
(はい、そんな流れが多いとは聞いた事が……)
『まぁ、状況見てさ。もし彼女が困ってるようなら、突入しても良いんじゃないかな。様子は見てきて伝えてあげるからさ』
(あ、はい。有難うございます。あの、でも……どうしてこんなに親切にしてくださるんですか?)
ほんの少し体を強張らせた様子の太宰。だが、照れたように笑う。
『まぁ、魂の状態になって色々と内省する時を経て……て言うかね。じゃ、そういう事なんでまた知らせに来るよ!』
そし慌てたように姿を消した。
(何か訳があるんだろうなぁ)
蒼介は感じた。そして少し冷めてきた緑茶をゆっくりと口に含んだ。
『ふぅー。いつかは言わないといけないだろうけど……』
太宰は再び見合いの場所へと姿を現す。天井に近い場所に浮かび上がる感じだ。ふと、背後に気配を感じた。
『おう! 太宰、全然戻って来ないと思ったら、面白い事してんじゃねーか!』
不意に、羽交い締めするような勢いで彼の右肩に自らの右腕を巻き付けた男がいた。
太宰はけしかけるように言った。
(……いいえ)
蒼介の唇は穏やかな弧を描いた。
(乗り込んで、情熱的に告白。実際、話しだけを聞くと男らしくてカッコ良さそうですし。だけどそれはまぁ、十代、せいぜい二十代前半までなら若さ故に……で済まされるでしょう。そしてそれは、ファンタジー世界なら更に有り、でしょうね。けれども現実は、単に状況や後先を考えない無責任男、ですよ。何よりみのりさん本人、みのりさんのご家族に迷惑です)
『そんなものかねぇ。まぁ、今の女性たちは驚くほど現実的だって聞くし、そう言う判断が適格とみなされるんだろうけど……時代、かねぇ?』
太宰は呆れているとも、寂しそうとも、何とも表現し難い複雑な表情を浮べた。
(いやいや、今の時代だって、ルックスや才能に恵まれた男性に惚れこんでついていく女の人も居ますよ。ただ、僕は僕自身が凡人過ぎて何の取りえもない上に草食系で、女の人が喜びそうな話題の提供や美辞麗句も苦手なもんで、堅実に至って常識的に振る舞った方が無難なんです……と言っても、冒険も出来ませんけどね)
彼もまた、悲しみとも自嘲とも取れる複雑な笑みを浮かべた。
『そういう誠実で正直、思慮深さが良い、て女性もいるさ。沢山ね』
<現にみのりちゃんは君の事好きなんだし……て教えてやりたいが、こればっかりはなぁ……>
『……で、これからどうする?』
太宰は彼に全てを委ねた。蒼介はしばらく考え込むように宙を見つめた。
(お見合いが終わって、彼女が一人になるのを待ちます)
やがて蒼介は意を決したように言った。
『そっか。知ってると思うけどさ。お見合い後、仲人と互いの親は先に居なくなって、本人同士が二人だけでデート、てパターンだと思うよ』
(はい、そんな流れが多いとは聞いた事が……)
『まぁ、状況見てさ。もし彼女が困ってるようなら、突入しても良いんじゃないかな。様子は見てきて伝えてあげるからさ』
(あ、はい。有難うございます。あの、でも……どうしてこんなに親切にしてくださるんですか?)
ほんの少し体を強張らせた様子の太宰。だが、照れたように笑う。
『まぁ、魂の状態になって色々と内省する時を経て……て言うかね。じゃ、そういう事なんでまた知らせに来るよ!』
そし慌てたように姿を消した。
(何か訳があるんだろうなぁ)
蒼介は感じた。そして少し冷めてきた緑茶をゆっくりと口に含んだ。
『ふぅー。いつかは言わないといけないだろうけど……』
太宰は再び見合いの場所へと姿を現す。天井に近い場所に浮かび上がる感じだ。ふと、背後に気配を感じた。
『おう! 太宰、全然戻って来ないと思ったら、面白い事してんじゃねーか!』
不意に、羽交い締めするような勢いで彼の右肩に自らの右腕を巻き付けた男がいた。
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