102 / 110
第十二話
考究
しおりを挟む
「……そもそも人の世の文献によると、や。その十の神の御宝言うのは神が饒速日命が天照大神から授かって天盤船に乗って河内の国に天降り、んでその後に大和の国に移った、とされとる。まぁ、諸説あるねんけどな。全て揃えればあらゆる願いが可能になる、ちゅーもんらしいが、その割には血眼になって探している人間どもがごく一部のみ。まぁ、これに関してはその力を知っている一部のものが独占しようとひた隠しにしてきたと考えれば不自然ではない。だけど、や」
人型に変化した風牙改め『ふわり』は木の切り株に腰をおろし、念の為外に声が漏れぬように防御の述を施し、一先ず森の中の少し開けた場所で会議をしている。ふわりのほぼ向かい側の切り株に琥珀が腰をおろし、その隣の檜の幹に氷輪が寄りかかってふわりの見解を聞いていた。
「……そもそも兄さんの『贄』の件やが、ワイが産土神をしていた時に小耳に挟んだ事がある。信濃国の一族の領域の繁栄との引き替えに代々贄を捧げてきていたが、それを覆そうと動き出した者がいる、とな。これ、兄さんの事やろ? 神からしたら逆らう人間なぞ許すまじ! てところだろうけどなぁ。猶予期間? みたいなのも感じるし、様子見というか、高見の見物みたいな印象も受けるし。そもそもの矛盾は、兄さんが宿世の女と出会うっつー件やな」
「どういう事?」
琥珀は不思議そうに問いかけた。氷輪も不思議そうにふわりを見つめている。
「あーもう、当事者はどうしても一つの事に囚われがちだから意外とそのものの本質を見失い易いのや。そもそもその宿世の女と出会う、てのは誰から聞いたのや?」
焦れたように言うふわり。
「あたしは、人形師の家を訪ねた時に……」
少し気まずそうに氷輪えおチラッと見やりながら話しを続ける。
「人形の百夜の姉さんから。お礼に、て先読みをしてくれて。それで……」
「へぇ? あの百夜の姐さんかぁ」
「ふわりは知ってるの?」
「直接会た事はないけどな、大妖魔の類で妖界ではちょっとした名物姐さんで通ってんねん。何でも、最近では神の誘いを断ったとかなんとか聞いたなぁ」
「へぇ? 有名なお姉さんなんだね。あたしは妖界から離れて結構経ってるし、全然知らなかった」
「ん……姐さんが神の誘いを断った? あっ! ちょい待てな、今考える時間欲しいわ」
ふわりは突然閃いた様子だ。膝を抱え顎を膝に乗せて考え込んだ。
(……神の誘い、ワイを唆そうとした禍津日神さん……ほぼ同時期や。姐さんに何を持ちかけたのかは知らんが……調べてみる価値はありそうやな。だが、慎重に事を運ばんと下手したら消されそうや。さて、どうするか……)
氷輪は、琥珀が人形師の家を後にしたあたりから元気が無かった事を思い出していた。
(百夜は、私への先読みは躊躇していた。代わりに『あなたは下手に周りの事を気遣って決断するより、心のままにいった方が最終的には自分も周りも上手く行く』と助言してくれた。その時、恐らくは宿世の女性の事を伝えようとして辞めたのだろう。琥珀には……伝えたのだろうな。それで琥珀は、あんなに元気を無くして……)
色々な事を思い、葛藤しつつもそれでも行動を共にしてくれた琥珀を改めて愛しいと感じ、大切にしたいと思うのだった。その事を言葉に出来ない事がもどかしい。ただ黙って、右手を伸ばし琥珀の背中を撫でた。
(兄者……)
琥珀は氷輪が黙って背中を撫でてくれた行為で、百夜に宿世の女性の事を聞いたのだろう、という事を察したのだと伝わった。その事で美辞麗句を述べるどころか無言を貫く彼が、琥珀には非常に誠意溢れる事に移り、嬉しかった。ただ、互いに愛しさを込めた視線を交わし合う二人であった。
(……まぁええわ。モフモフに変化して兄さんの肩の上で黙々と考えたらえーねん)
ふわりは一旦思考を中断し、切り変えた。氷輪と琥珀を見やる。
「そこや!」
と声をかけた。驚いてふわりを見つめる二人。
「ます宿世の女と出会う、てのは、兄さんが素直に掟に従わず旅に出る、て事を想定してるから出会うのやろ? まるで最初から何もかも仕組まれたようやないかい!」
ハッとした様子の二人。
「そう言えば……」
「確かに! 言わてみたらその通りだ」
ふわりは頷いてみせた。
「せやろ? 何か裏がある、と考えて事に当たった方がええで。せやかて考えすぎも良くないけどな」
厳かに言った。そして
「御宝、所在がはっきりしているのを一つ一つあげてみようや」
と続けた。
人型に変化した風牙改め『ふわり』は木の切り株に腰をおろし、念の為外に声が漏れぬように防御の述を施し、一先ず森の中の少し開けた場所で会議をしている。ふわりのほぼ向かい側の切り株に琥珀が腰をおろし、その隣の檜の幹に氷輪が寄りかかってふわりの見解を聞いていた。
「……そもそも兄さんの『贄』の件やが、ワイが産土神をしていた時に小耳に挟んだ事がある。信濃国の一族の領域の繁栄との引き替えに代々贄を捧げてきていたが、それを覆そうと動き出した者がいる、とな。これ、兄さんの事やろ? 神からしたら逆らう人間なぞ許すまじ! てところだろうけどなぁ。猶予期間? みたいなのも感じるし、様子見というか、高見の見物みたいな印象も受けるし。そもそもの矛盾は、兄さんが宿世の女と出会うっつー件やな」
「どういう事?」
琥珀は不思議そうに問いかけた。氷輪も不思議そうにふわりを見つめている。
「あーもう、当事者はどうしても一つの事に囚われがちだから意外とそのものの本質を見失い易いのや。そもそもその宿世の女と出会う、てのは誰から聞いたのや?」
焦れたように言うふわり。
「あたしは、人形師の家を訪ねた時に……」
少し気まずそうに氷輪えおチラッと見やりながら話しを続ける。
「人形の百夜の姉さんから。お礼に、て先読みをしてくれて。それで……」
「へぇ? あの百夜の姐さんかぁ」
「ふわりは知ってるの?」
「直接会た事はないけどな、大妖魔の類で妖界ではちょっとした名物姐さんで通ってんねん。何でも、最近では神の誘いを断ったとかなんとか聞いたなぁ」
「へぇ? 有名なお姉さんなんだね。あたしは妖界から離れて結構経ってるし、全然知らなかった」
「ん……姐さんが神の誘いを断った? あっ! ちょい待てな、今考える時間欲しいわ」
ふわりは突然閃いた様子だ。膝を抱え顎を膝に乗せて考え込んだ。
(……神の誘い、ワイを唆そうとした禍津日神さん……ほぼ同時期や。姐さんに何を持ちかけたのかは知らんが……調べてみる価値はありそうやな。だが、慎重に事を運ばんと下手したら消されそうや。さて、どうするか……)
氷輪は、琥珀が人形師の家を後にしたあたりから元気が無かった事を思い出していた。
(百夜は、私への先読みは躊躇していた。代わりに『あなたは下手に周りの事を気遣って決断するより、心のままにいった方が最終的には自分も周りも上手く行く』と助言してくれた。その時、恐らくは宿世の女性の事を伝えようとして辞めたのだろう。琥珀には……伝えたのだろうな。それで琥珀は、あんなに元気を無くして……)
色々な事を思い、葛藤しつつもそれでも行動を共にしてくれた琥珀を改めて愛しいと感じ、大切にしたいと思うのだった。その事を言葉に出来ない事がもどかしい。ただ黙って、右手を伸ばし琥珀の背中を撫でた。
(兄者……)
琥珀は氷輪が黙って背中を撫でてくれた行為で、百夜に宿世の女性の事を聞いたのだろう、という事を察したのだと伝わった。その事で美辞麗句を述べるどころか無言を貫く彼が、琥珀には非常に誠意溢れる事に移り、嬉しかった。ただ、互いに愛しさを込めた視線を交わし合う二人であった。
(……まぁええわ。モフモフに変化して兄さんの肩の上で黙々と考えたらえーねん)
ふわりは一旦思考を中断し、切り変えた。氷輪と琥珀を見やる。
「そこや!」
と声をかけた。驚いてふわりを見つめる二人。
「ます宿世の女と出会う、てのは、兄さんが素直に掟に従わず旅に出る、て事を想定してるから出会うのやろ? まるで最初から何もかも仕組まれたようやないかい!」
ハッとした様子の二人。
「そう言えば……」
「確かに! 言わてみたらその通りだ」
ふわりは頷いてみせた。
「せやろ? 何か裏がある、と考えて事に当たった方がええで。せやかて考えすぎも良くないけどな」
厳かに言った。そして
「御宝、所在がはっきりしているのを一つ一つあげてみようや」
と続けた。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
処刑された王女、時間を巻き戻して復讐を誓う
yukataka
ファンタジー
断頭台で首を刎ねられた王女セリーヌは、女神の加護により処刑の一年前へと時間を巻き戻された。信じていた者たちに裏切られ、民衆に石を投げられた記憶を胸に、彼女は証拠を集め、法を武器に、陰謀の網を逆手に取る。復讐か、赦しか——その選択が、リオネール王国の未来を決める。
これは、王弟の陰謀で処刑された王女が、一年前へと時間を巻き戻され、証拠と同盟と知略で玉座と尊厳を奪還する復讐と再生の物語です。彼女は二度と誰も失わないために、正義を手続きとして示し、赦すか裁くかの決断を自らの手で下します。舞台は剣と魔法の王国リオネール。法と証拠、裁判と契約が逆転の核となり、感情と理性の葛藤を経て、王女は新たな国の夜明けへと歩を進めます。
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる