姫国あやかし絵封録

蒼村嬉享

文字の大きさ
46 / 153
◆第四章 存在の善悪◆

第八話 秘術の真髄

しおりを挟む
 捜索を始めた学園内は一昨日よりも【あやかし】の数が増加していた。しかし、現時点では人を驚かす程度の存在が殆どで脅威には至っていないのは幸いだった。

「……。スミジさん」
「何だい、アオバちゃん?」
「領域になっているんじゃ他の人にも【あやかし】達が見えてるんだよね? 学園を閉鎖したのは聞いたけど、どうしても来なくちゃいけない人は混乱してるんじゃ……」 
「いや、まだ領域も完全じゃないから、見える人より見えない人の方が多いと思う。説明していなかったけど、学園内で封鎖できない様な施設には護符を貼ってあるんだ。どうしても学園に来なくちゃいけない人は入り口で護符を渡すようになってるよ」
「あ……。そういえば入り口のオジさんが何か言ってたような……」

 重要施設には四方と入り口に札を貼り付けてある。小さな施設であれば二、三日程は怪異を抑えられる筈なので、スミジはその間に原因を祓ってしまうつもりだった。
 来校する必要がある者には入り口の守衛が赤い龍の厚紙札を渡す手筈になっている。勿論、守衛にも護符を渡してある。

 龍の護符は赤龍召喚の筆『幽幻筆ゆうげんひつ』で描いたもの……。本物の龍の加護を得た護符は持ち主に怪異を認識させず、また近付かせない効力もある。 

「スミジさんも龍を使えるんですね……」

 クレハの言葉にスミジは苦笑いで答える。

「ウチのは邪流だけどね。君達の家柄こそが……あ、干渉になっちゃうかな?」
「大丈夫よ。スミジさんなら知ってるでしょ? ウチの神社の祓い巫女は他の祓い師が真似できるものじゃないから」

 祓い師は他の祓い師と共に行動することを嫌う。それは祓い師としての術を暴かれるのを嫌う為……。

 祓い師の術や技法は謂わば秘術。独自に最適な技に昇華し祓い師としての格を高めるのは、役割が実は命懸けである故──それはスミジが滋賀で行ったバラゴとの戦いからも窺い知れた筈だ。

 そこで殆どの祓い師達は、他者から技法や秘術を盗まれることを避ける対策を打っている。流派の核となる技法は徹底して隠すことは勿論、特殊な道具を使用したりと様々だ。

 そして、祓い師達が辿り着く最良の答えは『他者には真似できないもの』であること──。

 スミジを例にすれば、護符自体は割と多くの祓い師が使用し、同様に言霊ことだまもそれを主力にする祓い師が居る。

 道祖土さいどが他と大きく違うのは墨──特殊な調合をされた朱の墨は更に術者の【血】を混ぜることでその力を発現する。当然ながら道祖土の血は道祖土の一族しか使用できず、墨の調合自体も術式の一つであるので他者には真似できない。

 故にスミジは、他者から術を隠す必要はない。見られた程度で祓い師の力が落ちないのは長い歴史がある一族だからこその対応でもあった。
 因みに、龍の力を宿す『幽幻筆』も道祖土の血を者しか扱えない秘宝である。


 同様に、道祖土とはまた別の手法で他者には真似できぬ力が存在する。それが九頭竜神社のような【宗教】を起源とする祓い師──。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―

MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」 「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」 失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。 46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた

今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。 レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。 不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。 レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。 それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し…… ※短め

処理中です...