姫国あやかし絵封録

蒼村嬉享

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◆幕間① 祓い師達の事情◆

幕間・その6 協力の約束

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 【あやかし】が原因ならあやかし由来の治療法が通じる。何とか母を完治させたい……というのが三条の意図だった。

「……確か犀の角が解毒になるんだったか」
「ええ……。しかし、通常の犀の角はワシントン条約で禁止されています。それに現世の犀の角には当然、解毒効果などありません」
「……どう思う、スミジ?」

 榑木の言葉に少し思索したスミジは自分なりの推論を述べた。
  
「今の話から察するに恐らく『伝聞によりあやかし化した鴆』でしょう……毒が強すぎる。犀は多分『通天犀つうてんさい』……その辺りは三条さんも調べが付いているのでは?」
「はい……。三条グループの情報網を使い探してましたが、流石に【あやかし】となると発見が……」

 【通天犀】──別名を水犀。

 体は馬、牛の四肢と尻尾、背中に亀の甲羅という姿で、額に巨大な角を持っている。
 角は霊力があり燃やした炎の輝きが天に届く程から『通天』とされる。角は浄化の力を宿し毒も浄化できるという。

 因みに、こちらも実在の犀が【あやかし】として伝聞されたものと言われている。

「通天犀も中国の伝承……文献はあっても現地でさえ認知度は低い……か。生息域も定まらない。確かに発見は困難か……」
「ええ……」
「だが……可能性はある」
「えっ……!?」
「古い知己なら居場所は判るかもしれない。ただ、通天犀は霊獣……その角を奪えば死んでしまうだろう。それを容認してくれるかはまた別だが……」

 霊獣は害を振り撒く存在ではない。寧ろ恩恵を与える側……個人の都合で角を奪うことは躊躇われる。故に知己が協力してくれるかは判らないと榑木は告げた。

 そこで口を開いたのはスミジだった。

「もしかしたら何とかなるかもしれませんよ?」
「どういうことだ、スミジ?」
「ウチの流派の『霊気写法』は元々、幽世の存在を絵で再現し器にすることで本物を喚び出す為に編み出されました。でも、人間の力では注げる容量が足りなかった。だから一時的に【あやかし】の権能だけを借りる形に変えた術なんです」

 現世うつしよに喚ぶ器、満たす霊力が揃って初めて完全な存在の顕現が可能になる……。道祖土一族はその両方を墨と筆で成し遂げることは出来なかった。故に劣化した権能で妥協したのが霊気写法──。

 限定とはいえ、それを超えたのが赤龍召喚の筆『幽幻筆』である。龍の遺骸から造られた召喚媒介の器たる筆には強い霊力も宿っている。

「霊気写法は一時的なら権能を再現できる。但し、欠点があって権能が弱いんですよ。それに、ダメージを受けると消えてしまう。通天犀にとって角は霊力のかなめですからね。でも……」
「何だ?」
「権能の再現を角を使って薬を作るまで維持できれば或いは……」
「効果下がっても直接投与なら効能は高いか……。確かに可能性はあるな」

 そこで三条はスミジの前に跪きその手を取った。

「お願いします、道祖土さん、榑木さん……どんな対価でも払います。どうか母を……」
「立ってください、三条さん。まだ確実とは言えないのが申し訳ないですが、力が及ぶ限りの協力はしますから」
「宜しくお願い致します」

 スミジは三条へ微笑みを向けた。

「そうなると……現時点で必要なことは三つ。一つは通天犀を俺が直接見る必要があります」
「それは俺が手配しよう。見るだけなら協力して貰える筈だ」
「宜しくお願い致します、榑木さん」
「良い。気にするな」

 三条の謝意に照れているのか視線を窓の外に向けている榑木に一同は苦笑いだ。

「残るは二つ。霊気を高める必要があるのでその間の時間を頂けますか?」
「それは大丈夫ですが……残る一つは?」
「媒介になる筆が必要になると思うので本家に帰って相談してきます」
「私共も同行しても?」
「そうですね……。素材次第では三条家の力も必要になりますので……」

 何とか三条茉莉奈の力になれると分かり懇親会は再び穏やかな空気に戻った。

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