姫国あやかし絵封録

蒼村嬉享

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◆幕間① 祓い師達の事情◆

幕間・その7 隠し巫女と天狗の弟子

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「良し! じゃあ、次はロリッ娘達の番だな」
「ロリッ娘言うな、ホスト!」

 懲りずにバチバチと視線で火花を散らすアオバと御門であったが、それをスミジがなだめ改めて自己紹介の続きとなる。

「私は九頭竜青葉アオバ。で、こっちが双子の妹の……」
「九頭竜紅葉クレハです」
「私達は景星学園の中等部に通ってるわ。実家は九頭竜神社で、私とクレハは隠し巫女なの」
「隠し巫女? 何だ、そりゃ?」

 御門はスミジに視線を向ける。が、スミジはアオバが説明するのを待った。

「隠し巫女は表立って存在を見せない巫女のことよ。ウチの御神体は龍でその声を聞いたり力を借りたりできるのは私達。だけど、神社を取り仕切っているのはお父さん。私達は何かしらで御神体の力が必要な時だけ龍の力を借りるの」

 隠し巫女の存在を一般の者が知ることはない。基本的に龍の力を借りる必要がある場合のみ巫女として動く。それ以外は宮司である父の役割なのだ。
 これは【龍の巫女】という存在を知られることで他者に利用される可能性を避ける為のものである。特に巫女は女性──扱いを危惧するれば隠して然るべきとも言える。

 現在の九頭竜神社の宮司は道祖土家血筋である貴士たかし。祓い師としては優秀なので隠し巫女は普段表立って動かずに済んでいた。

 故にアオバとクレハは、普通の巫女として家の手伝いをしている体裁になっている。

「何だ……御飾りか」
「誰が御飾りよ!」

 アオバと御門は再び火花を散らしているが、そんな二人は放置して三条はクレハと談笑していた。

「二人は何か部活動に入ってるの?」
「いえ。まだ巫女修行中なので部活動をする時間は……。でも、弓道や剣術はお父さんから仕込まれてます」
「それも祓い師としての修行ね……。私も嘉藤に稽古を付けて貰ったわ」
「そういえば嘉藤さんも祓い師なんですよね? 流派とかあるんでしょうか?」

 答えられる範囲で良いと言うのが最初の前提……ではあるが、嘉藤は平然と答える。

「私は我流です」
「我流……とは?」
「そのままの意味でございますよ、賢雲様」

 嘉藤は幼い頃より【あやかし】が見えたという。霊力を持つ者の周囲には【怪異】が集まるのが因果……当然、嘉藤は周囲からは気味悪がられる子供となった。

 祓い師として師事できる相手が居ればそれも起こらなかっただろう。しかし、嘉藤はやむを得ず自ら方法を探すしか無かった。
 そんな嘉藤は偶然ながらある【あやかし】の目に留まる。そのお陰で祓い師の基礎は学ぶことができたのだと口にした。

「私は小御嶽こみたけ正真坊しょうじんぼうの目に留まり一ヶ月ばかり修行を付けて頂きました。飽くまで基礎ですが」
「ほ! 富士守護の荒天狗か!? 珍しいこともあったものよ」
「気紛れだと言って居られましたよ、正真坊様は」

 『小御嶽正真坊』は、富士山の北側を守護するという天狗である。南側を守護する大天狗『富士太郎坊』とは違い気性が荒いとされていた。
 気紛れとはいえ手解きをされたことは嘉藤にとって幸運だったと言える。

「当時は神隠しと騒がれましたが、霊術の基礎を学んだことで【怪異】を抑えることができるようになり普通の生活に戻れました」
「それ、幾つの時っスか?」
「小学六年生の時でございます」

 それから嘉藤は正真坊から授かった幾つかの術を元に研鑽し続けた。やがて独自に改良を加えたのが我流の『神通練気法』。

「嘉藤サン、どうして三条サンの執事に?」
「普通に面接試験で就職致しました」
「意外に普通だった!?」
「冗談にございますよ。その辺りは秘密ということで」

 表情が変わらない嘉藤が初めて口許に笑みを浮かべたことから幾分心を許していることが読み取れた。

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