姫国あやかし絵封録

蒼村嬉享

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◆幕間① 祓い師達の事情◆

幕間・その8 榑木の過去

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「さて……デハ、いよいよ榑木サンデスネ」
「………。あまり面白い話じゃないぞ?」
「そりゃあ皆そうっしょ。良いんスよ、テキトーで」
「適当ではいかんだろ。が、話せる範囲で構わんのは皆同じだ……どうだ?」

 賢雲の言葉とスミジが頷くのを見て観念したのか、榑木は溜め息を吐きながら話始めた。

「実家は神社だ。榑木神社は祓い師の系譜ではあるが一流じゃない凡用流派だ。だが、祖父じいちゃんだけはそれなりに有名だったと思う」
「もしや、榑木くれき厳之助げんのすけ殿……で間違いないか?」
「ああ。賢雲和尚とも面識があったのか?」
「いや……だが、宗派の伝手で名だけは知っている。確か『鉄の厳之助』という通り名だったな」
「鉄……っスか?」
「ウチの祖父ちゃんは物凄い頑強なんだよ。災害級の【あやかし】の攻撃を受けてもかすり傷で済む程の」
「凄いですね……お幾つなんですか?」
「七十七……今年で喜寿になる」

 榑木の祖父は祓い師界隈でも名の通った人物らしい。

「だから榑木サンも祓い師になったんデスカ?」
「いや……俺は元々只人でね。だが、誤ってウチに封印されていた【あやかしの呪いを封じた刀】を引き抜いた。そのせいでこの世界に踏み込んだ。全身に呪印が刻まれて死にかけたのが始まりだ」
「……先程の刀がその【封じた刀】か?」
「いや……別の物だ」
「呪印は……どうなりマシタ?」
「呪印自体はもう無い。が……とはいって【あやかし】も皆殺しにした訳でもない。一部は代わりに契約印になって残っている」

 呪いを祓う為にはその根元である【あやかし】と対峙せねばならなかった。榑木は強制的に祓い師の世界に加わらざるを得なかった。

「呪印は百……それを祓うのに数年掛かった。犠牲も……それなりにあった」
「うぅむ……」

 その際、日本の妖怪王とも言える存在と対峙し大きな戦いになった。だが、真実は一握りの者しか知らないとスミジが付け加える。

「儂も初めて耳にしたな……」
「天元明智宗では大僧正と何人かは知っている。が……殆どの記憶は消えている筈だ。………。俺の話はこの辺で良いだろう。次はスミジの話だな」
「俺の話は単純ですよ。代々継いで祓う……その一族の跡取り。普段は美術商で一応、画家でもある」
「……。描いた絵は売れているのか?」
「うっ……! き、聞かないで下さい」

 一同、苦笑い。

 この時、スミジは重要な事実は隠したままだった。果たしていない祓い仕事、そして一族の因縁と悲願……。

 この場の者は事情を知れば力を貸してくれるだろう。それでもスミジは他者を巻き込みたくなかったのである。 


 そうして懇親会は和やかな雰囲気で進む。後にこの縁は誰にとっても確かな意味を為すことになるのだが……それはまだ先の話。


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