117 / 153
◆第六章 古き大妖◆
第三十九話 時代に合わせた進化
しおりを挟む
(流石は天元明智宗の中でも戦いに長けた者達か……。それでも道祖土殿の技が無ければ危うかったが)
筧は自らも前線に立ちたい気持ちはあるが役割を弁え動かない。指揮をする者は冷静にあるべし──それは筧が長年の経験で嫌という程理解したことだ。
だからこそ筧は慎重だった。持参した装備の中でも最高火力の銃を取り出し一撃必殺を意識しつつ牛鬼に狙いを定める。
あとはタイミング……筧は前衛を信じて神経を集中しその時を待った。
一方の心源、蒼禅……そしてスミジは出し惜しみをしている余裕はない。牛鬼はそれまで相手をした中で最大級の【あやかし】。陽光の差す時間で先程の動きができるのは脅威そのものだった。
いや……時が経過し逢魔が刻が近付けば状況は更に厳しくなる。その前に討ち果たさねば更なる犠牲が生まれることは目に見えていた。
「やるぞ、蒼禅!」
「わかりました!」
二人は懐から取り出した法具・獨鈷を握り念を籠める。青白い光を放ったそれを二人は牛鬼へと放つ。
硬質な牛鬼の背に届いた獨鈷は鈍い金属音を上げると弾かれることなく突き刺さる。が……決して深くはない。辛うじて、と言った具合だ。
しかし、確かに刺さった。心源と蒼禅にはそれで十分だった。
「ノウマク・サマンダ・ボダナン・インダラヤ・ソワカ!」
二人は同じ真言を同時に唱える。発生したのは雷……唱えた真言は帝釈天だ。
帝釈天はインドに於ける雷帝インドラ神。幽世より力を借りて喚んだ雷は牛鬼に刺さった二本の獨鈷に直撃、その体内へと流れる。
『ぐおおぉぉぉぉーっ!』
並の【あやかし】ならば一撃で討滅されるその威力は牛鬼にも通じ得ると思われた。
だが……。
『……クックッ。この程度か、坊主共?』
牛鬼が電撃に怯んだのは一瞬だけ。その後は流れる電流に対して何事も無いかのように動き始める。
更に、牛鬼は身体に力を込めると背に刺さった獨鈷を弾き飛ばした。
「ちっ……。頑丈な奴だな。だが……」
「ええ。次は……!」
再び獨鈷を取り出した心源・蒼禅。但し取り出した数は各七本づつの計十四本……霊力を籠めた獨鈷は宙に浮き牛鬼へと狙いを定めている。
同じ雷を落とせばその効果は七倍……先程も僅かながら効果はあったのだ。次こそは確実に手傷を与えられると考えるのは当然だろう。
しかし、物事はそう上手くは運ばない。二人が放った獨鈷は牛鬼に刺さらず弾かれたのである。
「なっ……!」
『何故刺さらぬか不可解か? それは貴様らの力が弱く我に届かぬからよ』
「何だと……!?」
『ククク……復活してより力を蓄えたことの意味、祓い師ならば理解できる筈だがな。加えて、今の時代は良いぞ? 人の情報媒体に手を加えればあっという間に存在の力は跳ね上がる。わざわざ歩き回らずとも言葉のみで済むのだ』
「まさか……」
『ハハハ! 気付いた様だな。人の身で行動する事は愉快だったぞ? お陰で沢山の知識を手に入れた』
牛鬼が行ったのは積極的怪異の周知。【あやかし】自らが怪異である自己存在を人間に広める……これは明らかな異常事態である。
牛鬼は人の姿にてインターネットを利用した情報発信を行っていた。それは人の文化を利用し、より多くの人間の意識に印象付く様書き込みを繰り返したことを意味する。
多くの古き【あやかし】は新しきものを嫌う。それは自らが世に生まれた理由を新しきものが塗り潰しかねないからだ。加えて言えば、新しいものは人間が必要とする光を伴う為【あやかし】にとっては苦手とするところ。
己の不利になりかねないものを平然と利用するのは、牛鬼という大妖だからこそ可能な行為なのだろう。
筧は自らも前線に立ちたい気持ちはあるが役割を弁え動かない。指揮をする者は冷静にあるべし──それは筧が長年の経験で嫌という程理解したことだ。
だからこそ筧は慎重だった。持参した装備の中でも最高火力の銃を取り出し一撃必殺を意識しつつ牛鬼に狙いを定める。
あとはタイミング……筧は前衛を信じて神経を集中しその時を待った。
一方の心源、蒼禅……そしてスミジは出し惜しみをしている余裕はない。牛鬼はそれまで相手をした中で最大級の【あやかし】。陽光の差す時間で先程の動きができるのは脅威そのものだった。
いや……時が経過し逢魔が刻が近付けば状況は更に厳しくなる。その前に討ち果たさねば更なる犠牲が生まれることは目に見えていた。
「やるぞ、蒼禅!」
「わかりました!」
二人は懐から取り出した法具・獨鈷を握り念を籠める。青白い光を放ったそれを二人は牛鬼へと放つ。
硬質な牛鬼の背に届いた獨鈷は鈍い金属音を上げると弾かれることなく突き刺さる。が……決して深くはない。辛うじて、と言った具合だ。
しかし、確かに刺さった。心源と蒼禅にはそれで十分だった。
「ノウマク・サマンダ・ボダナン・インダラヤ・ソワカ!」
二人は同じ真言を同時に唱える。発生したのは雷……唱えた真言は帝釈天だ。
帝釈天はインドに於ける雷帝インドラ神。幽世より力を借りて喚んだ雷は牛鬼に刺さった二本の獨鈷に直撃、その体内へと流れる。
『ぐおおぉぉぉぉーっ!』
並の【あやかし】ならば一撃で討滅されるその威力は牛鬼にも通じ得ると思われた。
だが……。
『……クックッ。この程度か、坊主共?』
牛鬼が電撃に怯んだのは一瞬だけ。その後は流れる電流に対して何事も無いかのように動き始める。
更に、牛鬼は身体に力を込めると背に刺さった獨鈷を弾き飛ばした。
「ちっ……。頑丈な奴だな。だが……」
「ええ。次は……!」
再び獨鈷を取り出した心源・蒼禅。但し取り出した数は各七本づつの計十四本……霊力を籠めた獨鈷は宙に浮き牛鬼へと狙いを定めている。
同じ雷を落とせばその効果は七倍……先程も僅かながら効果はあったのだ。次こそは確実に手傷を与えられると考えるのは当然だろう。
しかし、物事はそう上手くは運ばない。二人が放った獨鈷は牛鬼に刺さらず弾かれたのである。
「なっ……!」
『何故刺さらぬか不可解か? それは貴様らの力が弱く我に届かぬからよ』
「何だと……!?」
『ククク……復活してより力を蓄えたことの意味、祓い師ならば理解できる筈だがな。加えて、今の時代は良いぞ? 人の情報媒体に手を加えればあっという間に存在の力は跳ね上がる。わざわざ歩き回らずとも言葉のみで済むのだ』
「まさか……」
『ハハハ! 気付いた様だな。人の身で行動する事は愉快だったぞ? お陰で沢山の知識を手に入れた』
牛鬼が行ったのは積極的怪異の周知。【あやかし】自らが怪異である自己存在を人間に広める……これは明らかな異常事態である。
牛鬼は人の姿にてインターネットを利用した情報発信を行っていた。それは人の文化を利用し、より多くの人間の意識に印象付く様書き込みを繰り返したことを意味する。
多くの古き【あやかし】は新しきものを嫌う。それは自らが世に生まれた理由を新しきものが塗り潰しかねないからだ。加えて言えば、新しいものは人間が必要とする光を伴う為【あやかし】にとっては苦手とするところ。
己の不利になりかねないものを平然と利用するのは、牛鬼という大妖だからこそ可能な行為なのだろう。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―
MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」
「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」
失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。
46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
夫の妹に財産を勝手に使われているらしいので、第三王子に全財産を寄付してみた
今川幸乃
恋愛
ローザン公爵家の跡継ぎオリバーの元に嫁いだレイラは若くして父が死んだため、実家の財産をすでにある程度相続していた。
レイラとオリバーは穏やかな新婚生活を送っていたが、なぜかオリバーは妹のエミリーが欲しがるものを何でも買ってあげている。
不審に思ったレイラが調べてみると、何とオリバーはレイラの財産を勝手に売り払ってそのお金でエミリーの欲しいものを買っていた。
レイラは実家を継いだ兄に相談し、自分に敵対する者には容赦しない”冷血王子”と恐れられるクルス第三王子に全財産を寄付することにする。
それでもオリバーはレイラの財産でエミリーに物を買い与え続けたが、自分に寄付された財産を勝手に売り払われたクルスは激怒し……
※短め
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる