姫国あやかし絵封録

蒼村嬉享

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◆第六章 古き大妖◆

第四十話 連携

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「筧さん……。今の牛鬼の話は……」
『う……む。インターネット上の話題の拡散は【対策室】でも確認している。だが、それは人間が生み出した流行だと考えていた。まさか牛鬼そのものが動いていたとはな……』

 ネットの情報は海原である。予想の付かない大きな流れが起きたかと思えば、全く関係のない些細な情報でそれらが掻き消される。社会背景、世情、経済、娯楽……当然、【怪異】にまつわるものもある。
 中には人が意図して情報を操作している場合もあるだろう。事実、【対策室】自体がそうやって【あやかし】の抑制や事件の後処理も行っているのだ。

 今回の牛鬼に関しては一過性の流行と筧は考えていた。情報は主に匿名掲示板から発信されていたからだ。

 元々、牛鬼が出現し活発になったのは近年……その噂が何らかで流れても不思議ではなかった。そんな【対策室】の判断を嘲笑うかのような牛鬼の発言に筧は舌打ちしている。

『とはいえ、インターネットの情報でも【あやかし】などは真実味が無い。そこまでの効果を発するとは思えないが……』
「だがよ……事実、アイツから感じる力は底知れねぇぜ?」
『……。ともかく、今以上に力を増すことは無い筈だ。今は日中……光のある内に力を削るべきだろう』
「……ま、確かにそうだな。仕方ねぇ、やるか」

 牛鬼の言葉を聞いてもやることは変わらない。腹を括った心源と蒼禅は更なる攻撃へと移る。

 獨鈷を放ちつつ薙刀に法力を込め切り掛かる心源。蒼禅は心源と牛鬼を挟む様な位置を取り利剣で攻める。時折スミジが霊気写法にて投写した【あやかし】が加勢に加わるが、牛鬼の攻撃で尽くが墨に戻ってしまった。

(普通の霊気写法の【あやかし】じゃ牛鬼の攻撃に耐えられないか……)

 牛鬼の素早い動きに少しづつ慣れては来たものの、やはり巨体から繰り出される怪力は尋常ではなかった。砂浜はクレーターのような大穴が幾つも空き、岩場は砕かれ足場が更に悪くなる。島を幾度も揺るがすその攻撃は、直撃すれば絶命を免れないだろう。

 牛鬼はその名が示す通り【鬼】である。そして鬼の最大の脅威は尋常ならざる怪力──祓い師達はまさに命懸けだった。

『ハハハ! 貴様らがどう足掻こうと我が身体には然程の傷も付かぬわ。対して貴様らはどうだ? 我が脚の一撃でも当たればその身体は引き裂かれ死に至る』
「うるせぇ! 調子に乗ってんじゃねぇ、この牛野郎!」
『ククク……愉快愉快。貴様らには感謝しているぞ? 退屈だった今の世に最高の愉悦を与えてくれた。褒美に腹を引き裂き肝を食らって我が糧としてやろう』
「ベラベラと良く喋る蜘蛛牛だ……。愉悦だと? ならば、苦痛という愉悦にしてやる! 心源さん!」
「おう!」

 心源と蒼禅は身体に巻いていた縄を解き手に構える。縄は幾つもの護符、それとワイヤーも撚り合わせたもの。更にその所々には楔の様な鋭利な金属も組み合わせてあった。
 
 二人は真言を唱えながら縄を振り回した。法力によりまるで蛇の如き動きを見せた縄は牛鬼の身体に巻き付くと同時に地に縫い付け始めた。

『フン……この程度の縄など直ぐに引き千切って……』
「ソイツはどうかな?」

 牛鬼は悠々と身体を振るい縄を切ろうとしたが、縄は更に牛鬼の身体に巻き付いて行く。やがて締まり始めた縄に牛鬼は怒りの声を上げた。

『小賢しい坊主どもめが……!』

 牛鬼の口から放たれた黒煙……力で引き千切るのが困難と判断した牛鬼は毒の煙により縄の腐食を目論む。
 だが、この縄の狙いは牛鬼の動きを封じ続けるのが目的ではない。元より磯女の件から牛鬼の毒も予測済み……これは動きを止め一撃を狙う為の布石。

「やれ! 椿嵐!」
『了解した! 皆、牛鬼から距離を取れ!』

 高台でこの機を待っていた筧による狙撃……その手にあるのは島に持ち込んだもう一つの銃。

 【AWM・対物ライフル】

 狙撃に特化したイギリス製の大口径ライフル──今回、筧が切り札として用意したものだ。
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