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◆第六章 古き大妖◆
第四十一話 狙撃刻印術式
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それ一つとて過剰戦力と言えるその銃は筧自身も滅多には使用しない。だが、今回は大妖・牛鬼が相手……周囲に民間人が居ないことも含め惜しげなく使用ができる。
狙いを定めた銃口付近には円環状の術式が赤く輝く。それが三つ……それは筧流の刻印術が発動している証。
油断している牛鬼へ最大の火力……銃による狙撃と言うよりまるで砲撃だった。
銃口から放たれた弾丸に刻まれた術式はライフリングによる回転でその威力を高める効果も組み込まれている。筧の霊力に加え自然界の霊力を纏わせた弾丸はやがて光の矢となった。
牛鬼に放たれた弾丸の光は寸分違わず牛鬼の頭部へ……だが、ここで牛鬼は前脚にて弾丸を受け止めた。牛鬼の前足には霊力が凝縮しているらしく、筧の弾丸と拮抗……激しい霊気の光が火花のように散っている。
「おいおい……。アレに反応すんのかよ……」
心源の驚きはもっともだろう。弾丸の射出から着弾まで人間では到底反応できる速度ではない。牛鬼はそれに備え受け止めているのだ。
しかし、スミジは直ぐに違和感に気付いた。
「アレは反応したんじゃない……筧さんに気付いていたんですよ」
「何だとぉ……?」
「多分、初めから筧さんを何かで感知して警戒していたんです。だから狙撃の前に反応できたんだと思います」
「チッ……本当に遊んでやがったのか、あの野郎!」
「でも、牛鬼は筧さんを甘く見ていた。ほら……」
拮抗する牛鬼の前足はやがて少しづつ押され始める。角度を変え軌道を弾こうとするが弾は一向に軌道を変える様子はない。
必中の術式……牛鬼は遂に雄叫びを上げた。
『生意気な人間どもめぇぇ━━━っ!』
蜘蛛の脚にはビビ割れが起こり力の均衡が崩壊。筧の50mm弾は電柱程もある牛鬼の脚を砕き頭部に命中した。
「やりやがったぜ、椿嵐のヤツ!」
だが、筧はまだ行動を止めない。続け様に残りの弾数四発を牛鬼の急所と思われる位置へ叩き込む。その身体に数ヶ所大穴を開けた牛鬼は体勢を崩し大きな地響きを立てた。
やがて身体に空いた穴からは黒い霧が吹き出し牛鬼の姿は見えなくなった……。
「……。流石にやったか?」
心源の言葉に答える者は居ない。確かにあれで倒せなければ異常とも言える恐ろしい程の火力だった。しかし、祓い師の勘とも言うべきものが警戒を解くことを許さない。
現に牛鬼を狙撃した筧椿姫は狙撃銃を放置し自動小銃AK74を装備している。
「普通の【あやかし】なら、これで討滅になる訳だが……。どう思う、蒼禅?」
「【あやかし】を討った時の手応えは感じました。しかし……」
「ああ。胸騒ぎが消えねぇんだよな……」
それはスミジも同じだった。先程の攻撃を受け存在できるならば大妖などというレベルではない。それはもう神仏の位と変わらない。
だが……それでも警戒は解くなと本能が叫んでいるのだ。
そして、やがて気付く違和感──。通常、討滅された【あやかし】は黒い灰となり世界に融け幽世へ還る。しかし、牛鬼を取り巻く黒煙はいつまでも消えずに留まっているのだ。
「………。チッ。嫌な予感が当たったかよ」
心源の言葉の直後、黒煙の中から爆音が響く。同時に何かの破片が牛鬼の居た位置から射出された。
辛うじて反応したスミジは赤龍を操作し身を守る。蒼禅も利剣を盾に構え事なきを得た。筧はまだ遠距離から移動中だった為に破片の的にはならずに済んだ。
しかし……心源は僅かに反応が遅れてしまった。近くに居たスミジの赤龍が破片を弾き直撃こそ避けたものの、捉えきれぬ小さな破片がその腕を貫いたのである。
「グッ……! 畜生!」
「心源さん!」
「大丈夫だ、蒼禅! それより、牛鬼から目を離すな!」
破片は右腕を貫通したが致命傷ではない。心源は片膝を突きながらも素早く襷で腕を縛り止血を行う。そしてその目は黒い霧を見つめていた。
駆け寄ったスミジは懐から素早くサラシを取り出し傷口を拭う。
「……。上手く主要血管は外れてますけど、骨が折れてます」
「いや……腕が吹っ飛ばなかっただけマシだ。助かったぜ、道祖土」
「俺の術である程度傷は治せますけど、今やると隙ができます。牛鬼がそれを見逃すとは思えません。何とか討滅まで後方で耐えて下さい」
「馬鹿言うな。まだやれるぜ、俺ぁな? この程度、今までも何度もあった……お前もそうだろ?」
「……。ですが……」
心源はニカリと笑い薙刀を支えに立ち上がった。
「それにな……まだ、残してる手がある。ソイツが上手くいったら後ろに下がるつもりだ。……。そん時は悪ぃが任せるぜ?」
「……。わかりました」
狙いを定めた銃口付近には円環状の術式が赤く輝く。それが三つ……それは筧流の刻印術が発動している証。
油断している牛鬼へ最大の火力……銃による狙撃と言うよりまるで砲撃だった。
銃口から放たれた弾丸に刻まれた術式はライフリングによる回転でその威力を高める効果も組み込まれている。筧の霊力に加え自然界の霊力を纏わせた弾丸はやがて光の矢となった。
牛鬼に放たれた弾丸の光は寸分違わず牛鬼の頭部へ……だが、ここで牛鬼は前脚にて弾丸を受け止めた。牛鬼の前足には霊力が凝縮しているらしく、筧の弾丸と拮抗……激しい霊気の光が火花のように散っている。
「おいおい……。アレに反応すんのかよ……」
心源の驚きはもっともだろう。弾丸の射出から着弾まで人間では到底反応できる速度ではない。牛鬼はそれに備え受け止めているのだ。
しかし、スミジは直ぐに違和感に気付いた。
「アレは反応したんじゃない……筧さんに気付いていたんですよ」
「何だとぉ……?」
「多分、初めから筧さんを何かで感知して警戒していたんです。だから狙撃の前に反応できたんだと思います」
「チッ……本当に遊んでやがったのか、あの野郎!」
「でも、牛鬼は筧さんを甘く見ていた。ほら……」
拮抗する牛鬼の前足はやがて少しづつ押され始める。角度を変え軌道を弾こうとするが弾は一向に軌道を変える様子はない。
必中の術式……牛鬼は遂に雄叫びを上げた。
『生意気な人間どもめぇぇ━━━っ!』
蜘蛛の脚にはビビ割れが起こり力の均衡が崩壊。筧の50mm弾は電柱程もある牛鬼の脚を砕き頭部に命中した。
「やりやがったぜ、椿嵐のヤツ!」
だが、筧はまだ行動を止めない。続け様に残りの弾数四発を牛鬼の急所と思われる位置へ叩き込む。その身体に数ヶ所大穴を開けた牛鬼は体勢を崩し大きな地響きを立てた。
やがて身体に空いた穴からは黒い霧が吹き出し牛鬼の姿は見えなくなった……。
「……。流石にやったか?」
心源の言葉に答える者は居ない。確かにあれで倒せなければ異常とも言える恐ろしい程の火力だった。しかし、祓い師の勘とも言うべきものが警戒を解くことを許さない。
現に牛鬼を狙撃した筧椿姫は狙撃銃を放置し自動小銃AK74を装備している。
「普通の【あやかし】なら、これで討滅になる訳だが……。どう思う、蒼禅?」
「【あやかし】を討った時の手応えは感じました。しかし……」
「ああ。胸騒ぎが消えねぇんだよな……」
それはスミジも同じだった。先程の攻撃を受け存在できるならば大妖などというレベルではない。それはもう神仏の位と変わらない。
だが……それでも警戒は解くなと本能が叫んでいるのだ。
そして、やがて気付く違和感──。通常、討滅された【あやかし】は黒い灰となり世界に融け幽世へ還る。しかし、牛鬼を取り巻く黒煙はいつまでも消えずに留まっているのだ。
「………。チッ。嫌な予感が当たったかよ」
心源の言葉の直後、黒煙の中から爆音が響く。同時に何かの破片が牛鬼の居た位置から射出された。
辛うじて反応したスミジは赤龍を操作し身を守る。蒼禅も利剣を盾に構え事なきを得た。筧はまだ遠距離から移動中だった為に破片の的にはならずに済んだ。
しかし……心源は僅かに反応が遅れてしまった。近くに居たスミジの赤龍が破片を弾き直撃こそ避けたものの、捉えきれぬ小さな破片がその腕を貫いたのである。
「グッ……! 畜生!」
「心源さん!」
「大丈夫だ、蒼禅! それより、牛鬼から目を離すな!」
破片は右腕を貫通したが致命傷ではない。心源は片膝を突きながらも素早く襷で腕を縛り止血を行う。そしてその目は黒い霧を見つめていた。
駆け寄ったスミジは懐から素早くサラシを取り出し傷口を拭う。
「……。上手く主要血管は外れてますけど、骨が折れてます」
「いや……腕が吹っ飛ばなかっただけマシだ。助かったぜ、道祖土」
「俺の術である程度傷は治せますけど、今やると隙ができます。牛鬼がそれを見逃すとは思えません。何とか討滅まで後方で耐えて下さい」
「馬鹿言うな。まだやれるぜ、俺ぁな? この程度、今までも何度もあった……お前もそうだろ?」
「……。ですが……」
心源はニカリと笑い薙刀を支えに立ち上がった。
「それにな……まだ、残してる手がある。ソイツが上手くいったら後ろに下がるつもりだ。……。そん時は悪ぃが任せるぜ?」
「……。わかりました」
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