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◆第六章 古き大妖◆
第四十二話 牛鬼の変化
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やがて黒い霧が晴れ内から現れたのは、元の大きさの五分の一程まで小さくなった牛鬼──が、その身体は全くの無傷。筧による狙撃の影響が見当たらない。
「馬鹿な……無傷だと?」
『ハッハッハ。流石に驚かされたぞ? まさか銃を使用した術式とはな。これも現代の祓い師故か……。だが! 我には届かなかったな!? ハ━━ッハッハッハ!』
「おのれ、邪妖め……!」
心源を傷付けられた蒼禅は怒りに歯噛みする。これを見た心源は蒼禅に向かい叫んだ。
「馬鹿野郎、蒼禅! 怒りに飲まれてんじゃねぇ!」
「心源さん……」
「良いか? 怒っても構わねえが、必ず冷静さを心の芯に据え置け。そうすれば見えないものも見えてくる」
「見えないもの……」
心源の言葉で冷静さを取り戻した蒼禅は、深呼吸の後牛鬼を観察する。そして気付いた違和感……。
「……。霊気が……変化している?」
「やりゃ出来んじゃねぇか……。そうだ。コイツは大型牛鬼としての力を消費して身体の維持に回したんだ。椿嵐の術はきっちり効いているんだよ。そうだろ、牛鬼さんよ?」
強き【あやかし】は実体化できるが、その体を構築しているのは霊力である。
通常、【あやかし】は霊力の質を調整し祓い師の術の様な力の行使を行う。自然界の物理現象を利用した攻撃や防御、移動や隠遁の為の変化、幽世との行き来、そして実体化もまた霊力を利用する。
牛鬼が最初に人型だったことも霊力を利用した変化だ。
そして大妖ほどその力の扱いが洗練されている。大きな力を呼吸をするかの如く扱うのだ。
だだ……当然ながら現世に存在する以上、『陰陽五行の理』が影響することになる。
初めの人型は【土】……そして大型牛鬼は岩の如き【土】と海の【水】。だが、現在牛鬼から感じるのは【土】と【火】……。
筧の狙撃術式は【陽】の気を混ぜた金属弾。【金】を【火】で相克し耐えたのだろう。
ただ、この形態変化……万全ならば然程ではないが、攻撃を受けてからとなれば消費が大きい。現世に於いて祓い師に散らされた霊力を戻すことが叶わぬからだ。当然、牛鬼は初めよりもかなり霊力を消耗している。
無傷の様で力を削っていた……筧の術式は無駄では無かった。冷静になった蒼禅は改めてそれに気付かされたのである。
「とはいえ、それでもまだ十分大妖の霊力なんだがよ……?」
「いえ……。私が未熟でした、心源さん」
力を削れているのならば勝機はある。まだ陽中ならば尚のこと……石鎚山法起坊の結界はこの機を逃さぬ為のものだと蒼禅は改めて理解した。
「ってな訳だ、牛鬼よ。お前、歴史も調べたんだろ? なら、『牛鬼は討たれる宿命にある』ってのもわかるな?」
『ハッハッハ。確かに牛鬼という存在は討たれている場合が多いな。だが、それは人間が我を恐怖しているからこその願望。その証明でしかない』
「さて……そいつはどうかな?」
『何……?』
心源は無事な片手で器用に腰に巻いていた風呂敷を解くと中身が露わになる。手に携えたのは法螺貝だ。
「アレをやるぞ、蒼禅!」
「はい!」
そして蒼禅は利剣を眼前で立て真言を唱える。それは磯女の際にも見せた天元明智宗の奥義とされる【降魔法術・来仏宿威】──。
「ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク・サラバタタラタ・センダマカロシャダ・ケンギャキギャキ・サラバビギナン・ウンタラタ・カンマン!」
蒼禅の体から立ち上る赤い霊気が不動明王の姿を形造った。
「馬鹿な……無傷だと?」
『ハッハッハ。流石に驚かされたぞ? まさか銃を使用した術式とはな。これも現代の祓い師故か……。だが! 我には届かなかったな!? ハ━━ッハッハッハ!』
「おのれ、邪妖め……!」
心源を傷付けられた蒼禅は怒りに歯噛みする。これを見た心源は蒼禅に向かい叫んだ。
「馬鹿野郎、蒼禅! 怒りに飲まれてんじゃねぇ!」
「心源さん……」
「良いか? 怒っても構わねえが、必ず冷静さを心の芯に据え置け。そうすれば見えないものも見えてくる」
「見えないもの……」
心源の言葉で冷静さを取り戻した蒼禅は、深呼吸の後牛鬼を観察する。そして気付いた違和感……。
「……。霊気が……変化している?」
「やりゃ出来んじゃねぇか……。そうだ。コイツは大型牛鬼としての力を消費して身体の維持に回したんだ。椿嵐の術はきっちり効いているんだよ。そうだろ、牛鬼さんよ?」
強き【あやかし】は実体化できるが、その体を構築しているのは霊力である。
通常、【あやかし】は霊力の質を調整し祓い師の術の様な力の行使を行う。自然界の物理現象を利用した攻撃や防御、移動や隠遁の為の変化、幽世との行き来、そして実体化もまた霊力を利用する。
牛鬼が最初に人型だったことも霊力を利用した変化だ。
そして大妖ほどその力の扱いが洗練されている。大きな力を呼吸をするかの如く扱うのだ。
だだ……当然ながら現世に存在する以上、『陰陽五行の理』が影響することになる。
初めの人型は【土】……そして大型牛鬼は岩の如き【土】と海の【水】。だが、現在牛鬼から感じるのは【土】と【火】……。
筧の狙撃術式は【陽】の気を混ぜた金属弾。【金】を【火】で相克し耐えたのだろう。
ただ、この形態変化……万全ならば然程ではないが、攻撃を受けてからとなれば消費が大きい。現世に於いて祓い師に散らされた霊力を戻すことが叶わぬからだ。当然、牛鬼は初めよりもかなり霊力を消耗している。
無傷の様で力を削っていた……筧の術式は無駄では無かった。冷静になった蒼禅は改めてそれに気付かされたのである。
「とはいえ、それでもまだ十分大妖の霊力なんだがよ……?」
「いえ……。私が未熟でした、心源さん」
力を削れているのならば勝機はある。まだ陽中ならば尚のこと……石鎚山法起坊の結界はこの機を逃さぬ為のものだと蒼禅は改めて理解した。
「ってな訳だ、牛鬼よ。お前、歴史も調べたんだろ? なら、『牛鬼は討たれる宿命にある』ってのもわかるな?」
『ハッハッハ。確かに牛鬼という存在は討たれている場合が多いな。だが、それは人間が我を恐怖しているからこその願望。その証明でしかない』
「さて……そいつはどうかな?」
『何……?』
心源は無事な片手で器用に腰に巻いていた風呂敷を解くと中身が露わになる。手に携えたのは法螺貝だ。
「アレをやるぞ、蒼禅!」
「はい!」
そして蒼禅は利剣を眼前で立て真言を唱える。それは磯女の際にも見せた天元明智宗の奥義とされる【降魔法術・来仏宿威】──。
「ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク・サラバタタラタ・センダマカロシャダ・ケンギャキギャキ・サラバビギナン・ウンタラタ・カンマン!」
蒼禅の体から立ち上る赤い霊気が不動明王の姿を形造った。
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