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◆第六章 古き大妖◆
第四十五話 続く窮地
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スミジが心源の手当てを終えようとしていた頃にも蒼禅と筧椿姫は戦いを続けていた。牛鬼の素早い動きに辛うじて対応していたものの、人数が減ったことにより不利な状況は続く。
蒼禅は奥義である【降魔法術・来仏宿威】を解除している。霊力消費が大きいだけでなく肉体にもかなりの負荷が掛かる力は長期戦には不向きだったのだ。
「さて……どうする、蒼禅殿?」
「素早い動きには辛うじて対応できるのだが、あの毒素が厄介……。しかし、あれは牛鬼の身体を構築しているものでもある。となれば浄化術が効果的ではないだろうか、筧殿」
「ふむ……浄化術か。私はあまり得意ではないな」
「生憎、私も同様だ」
そもそも祓い師達の霊術には浄化作用がある。通常の術として行使すればそれ自体が浄化の意味を果たしていた。
しかし、牛鬼には並の術では効果が薄い。強力な瘴気を祓うには特化した術が必要となる。
そうなると問題は牛鬼の素早さ……辛うじて追える程度では浄化術に巻き込むことができない。
「……。筧殿。あそこにある法螺貝が見えるか?」
「ああ。心源殿の使用していた宝具だな」
「あれは特殊な法術にて浄化の作用を持たせた『白獅子』という法螺貝。一度にとはゆかぬが調の続く時間、届く範囲へ浄化が続く効果がある」
法螺貝は獅子吼……つまりライオンの咆哮の如き音を出す。音の力強さが仏の説法を模しているとされ、悪魔降伏の威力を発揮すると言われていた。
『白獅子』は場を清浄化する為の宝具として作製されただけあってその効果は確かなもの。但し、流石に大妖が相手では一度に大きなダメージには繋がらない。
それでも牛鬼が法螺貝の音を嫌ったことも先程確認している。
「あれを回収し使用すれば牛鬼の霊力を削ることができる筈」
「わかった。では、私が囮となる間に回収を頼む」
「……。頼んだ、筧殿」
互いに頷いた二人は同時に反対方向へと駆け出す。蒼禅が法螺貝を目指す間、筧は自動小銃にて掃射を行い牛鬼の気を引いた。
が……牛鬼は法螺貝の厄介さを理解していた。筧ではなく蒼禅へと狙いを定め移動を始めた。
「ちっ……! やはりか……!」
しかし、それは筧にも想定内。蒼禅へと牛鬼が迫るのを確認し手元の無線スイッチを押した。
途端に地の砂が爆散。指向性を持たせた無数の楔が牛鬼の身体に食い込んだ。
『ぐあぁぁっ! 何だ、コレは!?』
「この島に来て予め仕込んでいた罠の一つだ。気付かなかっただろう? 罠の半分は判りやすく埋めたからな」
『くっ……! だが、この程度の威力など苦にもならぬわ!』
「さて……それはどうかな?」
筧流の術にて楔に刻まれた刻印には意味がある。それは他の罠を誘導する為のマーキング……牛鬼の知覚の可否に拘らず罠は一斉に牙を剥いた。
砂中からは楔が次々に牛鬼めがけて射出される。同時に高台から遠隔操作で放たれた砲弾が上空にて霊符を拡散した。
降り注ぐ霊符は牛鬼の体を穿つ楔に反応し引き寄せられる。霊符が楔に触れるとけたたましい雷鳴と共に胃に響く振動が地を伝う。
雷撃の術……その効果に流石の牛鬼といえど動きを止めざるを得ない。
『ぐおぉっ! 小賢しいぃぃっ!』
「まだだ、牛鬼よ。もう一つくれてやるぞ!」
更に筧はミリタリーベストに備えてあった手榴弾を全て放り投げた。閃光と同時に発生したのは爆裂……ではなく煙幕。しかし、当然只の煙幕ではない。
白い煙の中にはキラキラと光る小さな粒子が含まれている。それは浄化作用の刻印を刻んだ銀箔……。
やがて煙幕は楔と反応しドーム型に渦を巻く。
『これは……』
「浄化結界だ。残念ながら短時間しか効果がないが、お前の足止め程度にはなるだろう?」
『女ぁぁぁっ!』
結界の中を舞う霊符による閃光の明滅と轟音──恐らく内部は乱気流の如き状態だろう。加えて銀の粒子は牛鬼から漏れ出る霊気を浄化し続ける。
それでも恐らく足止めにしかならない……筧は効果の程を理解していた。
筧が一瞬視線を蒼禅へと向けると法螺貝を拾い上げる姿が見えた。法具の回収を確認した筧は小銃の最後の弾倉を装填しつつ蒼禅の居る位置まで後退を始める。
「筧殿。あれは……」
「一応、保険の一つだったのだが……結界としては簡易型なので長くは持たない。多少削れるとは思うが」
「あれでも駄目、か……」
「やはり大妖だけあってしぶとい。浄化もどうやら牛鬼の霊力で押し戻されている気配がある。が、この期に削れるだけ削るのが得策……私が壁となる。蒼禅殿は存分に」
「……。済まない。では任せた、筧殿」
蒼禅は霊力を込め法螺貝を鳴らした。それは宝具の名に相応しい雄々しき獅子の咆哮の如き音色だった。
蒼禅は奥義である【降魔法術・来仏宿威】を解除している。霊力消費が大きいだけでなく肉体にもかなりの負荷が掛かる力は長期戦には不向きだったのだ。
「さて……どうする、蒼禅殿?」
「素早い動きには辛うじて対応できるのだが、あの毒素が厄介……。しかし、あれは牛鬼の身体を構築しているものでもある。となれば浄化術が効果的ではないだろうか、筧殿」
「ふむ……浄化術か。私はあまり得意ではないな」
「生憎、私も同様だ」
そもそも祓い師達の霊術には浄化作用がある。通常の術として行使すればそれ自体が浄化の意味を果たしていた。
しかし、牛鬼には並の術では効果が薄い。強力な瘴気を祓うには特化した術が必要となる。
そうなると問題は牛鬼の素早さ……辛うじて追える程度では浄化術に巻き込むことができない。
「……。筧殿。あそこにある法螺貝が見えるか?」
「ああ。心源殿の使用していた宝具だな」
「あれは特殊な法術にて浄化の作用を持たせた『白獅子』という法螺貝。一度にとはゆかぬが調の続く時間、届く範囲へ浄化が続く効果がある」
法螺貝は獅子吼……つまりライオンの咆哮の如き音を出す。音の力強さが仏の説法を模しているとされ、悪魔降伏の威力を発揮すると言われていた。
『白獅子』は場を清浄化する為の宝具として作製されただけあってその効果は確かなもの。但し、流石に大妖が相手では一度に大きなダメージには繋がらない。
それでも牛鬼が法螺貝の音を嫌ったことも先程確認している。
「あれを回収し使用すれば牛鬼の霊力を削ることができる筈」
「わかった。では、私が囮となる間に回収を頼む」
「……。頼んだ、筧殿」
互いに頷いた二人は同時に反対方向へと駆け出す。蒼禅が法螺貝を目指す間、筧は自動小銃にて掃射を行い牛鬼の気を引いた。
が……牛鬼は法螺貝の厄介さを理解していた。筧ではなく蒼禅へと狙いを定め移動を始めた。
「ちっ……! やはりか……!」
しかし、それは筧にも想定内。蒼禅へと牛鬼が迫るのを確認し手元の無線スイッチを押した。
途端に地の砂が爆散。指向性を持たせた無数の楔が牛鬼の身体に食い込んだ。
『ぐあぁぁっ! 何だ、コレは!?』
「この島に来て予め仕込んでいた罠の一つだ。気付かなかっただろう? 罠の半分は判りやすく埋めたからな」
『くっ……! だが、この程度の威力など苦にもならぬわ!』
「さて……それはどうかな?」
筧流の術にて楔に刻まれた刻印には意味がある。それは他の罠を誘導する為のマーキング……牛鬼の知覚の可否に拘らず罠は一斉に牙を剥いた。
砂中からは楔が次々に牛鬼めがけて射出される。同時に高台から遠隔操作で放たれた砲弾が上空にて霊符を拡散した。
降り注ぐ霊符は牛鬼の体を穿つ楔に反応し引き寄せられる。霊符が楔に触れるとけたたましい雷鳴と共に胃に響く振動が地を伝う。
雷撃の術……その効果に流石の牛鬼といえど動きを止めざるを得ない。
『ぐおぉっ! 小賢しいぃぃっ!』
「まだだ、牛鬼よ。もう一つくれてやるぞ!」
更に筧はミリタリーベストに備えてあった手榴弾を全て放り投げた。閃光と同時に発生したのは爆裂……ではなく煙幕。しかし、当然只の煙幕ではない。
白い煙の中にはキラキラと光る小さな粒子が含まれている。それは浄化作用の刻印を刻んだ銀箔……。
やがて煙幕は楔と反応しドーム型に渦を巻く。
『これは……』
「浄化結界だ。残念ながら短時間しか効果がないが、お前の足止め程度にはなるだろう?」
『女ぁぁぁっ!』
結界の中を舞う霊符による閃光の明滅と轟音──恐らく内部は乱気流の如き状態だろう。加えて銀の粒子は牛鬼から漏れ出る霊気を浄化し続ける。
それでも恐らく足止めにしかならない……筧は効果の程を理解していた。
筧が一瞬視線を蒼禅へと向けると法螺貝を拾い上げる姿が見えた。法具の回収を確認した筧は小銃の最後の弾倉を装填しつつ蒼禅の居る位置まで後退を始める。
「筧殿。あれは……」
「一応、保険の一つだったのだが……結界としては簡易型なので長くは持たない。多少削れるとは思うが」
「あれでも駄目、か……」
「やはり大妖だけあってしぶとい。浄化もどうやら牛鬼の霊力で押し戻されている気配がある。が、この期に削れるだけ削るのが得策……私が壁となる。蒼禅殿は存分に」
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