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◆第六章 古き大妖◆
第四十六話 思わぬ幸運
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蒼禅は一息で三分近く法螺貝を吹き続けた。霊力を込めた音色はそれまで周囲に散っていた牛鬼の邪気をみるみる浄化する。
すると……ここで蒼禅と筧にとって思いもよらないことが起こり始める。その誤算は不運ではなく幸運だった。
浄化された周囲の『陽の氣』が筧の簡易結界に引き寄せられ、煙幕が輝き始めたのである。
祓い師同士の術は稀に干渉を起こし想定外の結果を生む。それは複雑な術式同士が掛け合うことで全く別の術へと変化する為である。
過去の事例の多くは不運な結果になることが多く、それ故に払い師が他派の術師と共闘しない原因となっていた。
しかし、今回はその逆──互いの術が作用し合い術式の効果を高める結果を生んだ。
「……。これは……相生?」
蒼禅も筧も互いの術式を深い部分までは知らない。この討伐に挑む際の確認でも飽くまで傾向のみを伝え悪影響を避けたに過ぎないのだ。
だが、実際は牛鬼相手に余裕を削がれ完全にそのことさえ失念していた。だからこその結果とも言える効果は誰も予想し得ないものだった。
いや……それを知っていた者は確かに居た。
(……嬉しい誤算……と言いたいところだが、石槌山法起坊様はこれを見越していたか。成る程、人数を絞る訳だな)
より多数の術師が加わった場合、浄化の向上作用は生まれなかっただろう。天狗の神通力は祓い師達の素養を見抜きこの結果へと導いた、とも取れる。
ともかく、この状況は牛鬼討滅に光明が差したと言える。
「蒼禅殿。ここで牛鬼の邪気を削れるだけ削りたい。宝具はどの位の間鳴らせる?」
そこで息継ぎをする為法螺貝から口を離した蒼禅は筧の問いに答えた。
「想定よりも霊力を消費してしまっている。鳴らすだけならしばらくは可能だが……効果を高めた状態では十五分といったところだろう」
「そうか……。恐らく私の術と連動しているのでその間はあの結界は解けない筈。私がその身を必ず守る……霊力が尽きるまで頼まれてくれるか?」
「承知した!」
蒼禅は大きく息を吸い込み再び法螺貝の音を鳴らす。これを終えたら蒼禅はもう霊力を使い果たし後退せざるを得ないだろう。
しかし、ここは意地を張る場面ではない。ただ邪妖を討滅する……その為の戦いである。
(以前は宗派外との連携など理解できなかったが、こうして肩を並べれば確かに必要な事例もあると分かる。フフ……私もまだまだ視野が狭いな)
だが、この戦いで蒼禅は学んだ。ならばそれを今後の糧とすれば良い。その為にも生き残る必要がある。蒼禅は息継ぎを繰り返し法螺貝を鳴らし続けた……。
光の渦は確実に牛鬼の力を削ぎ続けている。それは結界の主でもある筧が理解していた。時折揺らぐ渦は牛鬼の足掻き……しかし、破るには至っていない。
とはいうものの時間に限界がある以上、まだもう一手欲しいところ……そんなタイミングでスミジは現れた。
「蒼禅さん、筧さん、大丈夫ですか?」
「今のところはな」
「それで……あれは……?」
「どうやら私と蒼禅殿の術が偶然相生効果を生んだらしい。今は蒼禅殿の宝具で効果を持続させ牛鬼の力を削いでいる状況だ」
「凄いですね……」
「それよりも、心源殿の様態は……?」
「命に別状はありません。毒気は何とか取り払いましたし怪我は塞いだんですが……傷が開かないよう待機して貰っています」
「そうか……」
スミジが宝具を吹き続ける蒼禅へと目を向ければ、小さく頷き応えている。
「現状、どんな感じです?」
「このまま蒼禅殿に削り続けて貰う算段だ。が……やはり決め手が欲しい」
「わかりました。……。筧さんは奥の手とか残ってます?」
「私のはコレがそうだよ」
腰に差した日本刀に手を当てる筧。残るは近接戦闘が主となるようだ。
「このまま牛鬼が弱体化すれば決着も容易いが……そうは行かないだろうな」
「俺も霊力は残り少ないので次で出し切ります」
「では、結界が解けた際が最後の勝負だな」
「ええ……」
すると……ここで蒼禅と筧にとって思いもよらないことが起こり始める。その誤算は不運ではなく幸運だった。
浄化された周囲の『陽の氣』が筧の簡易結界に引き寄せられ、煙幕が輝き始めたのである。
祓い師同士の術は稀に干渉を起こし想定外の結果を生む。それは複雑な術式同士が掛け合うことで全く別の術へと変化する為である。
過去の事例の多くは不運な結果になることが多く、それ故に払い師が他派の術師と共闘しない原因となっていた。
しかし、今回はその逆──互いの術が作用し合い術式の効果を高める結果を生んだ。
「……。これは……相生?」
蒼禅も筧も互いの術式を深い部分までは知らない。この討伐に挑む際の確認でも飽くまで傾向のみを伝え悪影響を避けたに過ぎないのだ。
だが、実際は牛鬼相手に余裕を削がれ完全にそのことさえ失念していた。だからこその結果とも言える効果は誰も予想し得ないものだった。
いや……それを知っていた者は確かに居た。
(……嬉しい誤算……と言いたいところだが、石槌山法起坊様はこれを見越していたか。成る程、人数を絞る訳だな)
より多数の術師が加わった場合、浄化の向上作用は生まれなかっただろう。天狗の神通力は祓い師達の素養を見抜きこの結果へと導いた、とも取れる。
ともかく、この状況は牛鬼討滅に光明が差したと言える。
「蒼禅殿。ここで牛鬼の邪気を削れるだけ削りたい。宝具はどの位の間鳴らせる?」
そこで息継ぎをする為法螺貝から口を離した蒼禅は筧の問いに答えた。
「想定よりも霊力を消費してしまっている。鳴らすだけならしばらくは可能だが……効果を高めた状態では十五分といったところだろう」
「そうか……。恐らく私の術と連動しているのでその間はあの結界は解けない筈。私がその身を必ず守る……霊力が尽きるまで頼まれてくれるか?」
「承知した!」
蒼禅は大きく息を吸い込み再び法螺貝の音を鳴らす。これを終えたら蒼禅はもう霊力を使い果たし後退せざるを得ないだろう。
しかし、ここは意地を張る場面ではない。ただ邪妖を討滅する……その為の戦いである。
(以前は宗派外との連携など理解できなかったが、こうして肩を並べれば確かに必要な事例もあると分かる。フフ……私もまだまだ視野が狭いな)
だが、この戦いで蒼禅は学んだ。ならばそれを今後の糧とすれば良い。その為にも生き残る必要がある。蒼禅は息継ぎを繰り返し法螺貝を鳴らし続けた……。
光の渦は確実に牛鬼の力を削ぎ続けている。それは結界の主でもある筧が理解していた。時折揺らぐ渦は牛鬼の足掻き……しかし、破るには至っていない。
とはいうものの時間に限界がある以上、まだもう一手欲しいところ……そんなタイミングでスミジは現れた。
「蒼禅さん、筧さん、大丈夫ですか?」
「今のところはな」
「それで……あれは……?」
「どうやら私と蒼禅殿の術が偶然相生効果を生んだらしい。今は蒼禅殿の宝具で効果を持続させ牛鬼の力を削いでいる状況だ」
「凄いですね……」
「それよりも、心源殿の様態は……?」
「命に別状はありません。毒気は何とか取り払いましたし怪我は塞いだんですが……傷が開かないよう待機して貰っています」
「そうか……」
スミジが宝具を吹き続ける蒼禅へと目を向ければ、小さく頷き応えている。
「現状、どんな感じです?」
「このまま蒼禅殿に削り続けて貰う算段だ。が……やはり決め手が欲しい」
「わかりました。……。筧さんは奥の手とか残ってます?」
「私のはコレがそうだよ」
腰に差した日本刀に手を当てる筧。残るは近接戦闘が主となるようだ。
「このまま牛鬼が弱体化すれば決着も容易いが……そうは行かないだろうな」
「俺も霊力は残り少ないので次で出し切ります」
「では、結界が解けた際が最後の勝負だな」
「ええ……」
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